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【飯田線各駅訪問】38 大嵐駅

浜松市天竜区・大嵐駅。静岡・愛知の県境、深い山奥には“東京駅”が佇んでいる…。
駅のすぐ横で、トンネルが口を開けている。2本の線路が合流するのは闇の中だ。
この駅名は、もはや知らないと絶対読めないレベルである。両隣の駅も間違った駅名で呼ばれることが多い。

魅力の尽きない“秘境駅⁉︎”

 ここは、静岡県浜松市天竜区水窪町奥領家という長い地名の場所に位置する、大嵐という駅。しかしせっかく長い地名を覚えても、駅の利用者は天竜川の対岸・愛知県の人々である。静岡県に所在しながらも、静岡県の人はほぼ利用できない立地にあるという非常に興味深い駅だ。
 また、駅名は「大嵐」と書いて「おおぞれ」と読むという、初見の人にはまず読ませる気がないほどの難読駅である。山深い場所では外部との交流も少なく独特の文化が形成されてきたことが、その難読駅名の要因となっているのだろう。
 余談だが、秘境駅で知られる隣の「小和田」も「おわだ」と誤読されることがしばしばあり、当駅の逆隣の駅も「水窪」と書いて「みさくぼ」と読む。他にも「なかい『ざ』むらい」だとか「むか『い』いちば」と誤読される駅もあり、この辺りは難読・誤読駅名の連続であると言える。

 さて、私がこの駅を訪問したのは今から10年ほど前、飯田線秘境駅号にて到達したときのことである。当駅は秘境駅号の「レギュラー停車駅」ではないものの、私が乗った当時はこの駅に秘境駅号が停車していた。(後に伊那小沢駅が牛山氏作成の秘境駅ランキングに追加されるとそちらに停車するようになり、当駅は上り秘境駅号の停車駅からは外れた。)
 その秘境駅号を終点の豊橋まで乗り通すと日が暮れて帰れない。そこで秘境駅号は名残惜しいながらも当駅で下車し、その秘境駅号とすれ違ってやってくる普通列車で飯田方面へと帰る、というプランを、私の親が組み立てた。
 そのため当駅では30分ほど探索する時間ができた。天竜川の橋を渡っていると、「ウギィィィィッッ!」不意に怪しい声が聞こえた。しかし地元のおじさんが、まるで当たり前のことかのように「あれは猿だね」と言っていたのが今でも思い出深い。
 ただ残念なことに、10年前の私があれだけ頑張って撮った写真も、今見ると…画角崩壊、手ブレ酷い、目の付け所イマイチ、…そんな残念なことになっていた。
 そんな懐かしの大嵐駅だが、最近になってこの駅の素晴らしさに気づき始めた。居心地の良い駅舎に加えて側線や旧ホーム跡など多くの鉄道遺構もあり、魅力十分。美しい大自然に囲まれ、駅の両側には岩肌が迫る。そう、この駅には、“あのときの訪問”で終わらせてはならない素晴らしさがまだまだ隠されているのであった…。

※再訪が達成できましたら、追記する予定です。

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