見出し画像

【飯田線各駅訪問】47 門島駅

夕暮れ時、かつての終着駅はその頃の賑わいの面影など留めることもなく佇んでいた。
駅付近にある泰阜ダム。列車内から見ることはできないが、この駅を訪れたのなら見るべき重要スポットだ。
この付近では貴重な交換駅。島式1面2線だが駅舎をもたない駅は、飯田線内でここだけ。

時には原点へと回帰したい

 この門島駅は、私にとっては思い出深い駅の一つだった。泰阜村の中心部に程近い「アイパークやすおか」という公園からの帰り、この駅へと寄ったのだ。当時はまだ鉄道には詳しくはなくただ単に駅を見たかったというだけなのだが、可愛らしい待合室は当時の私の「お気に入り」だったのは覚えている。これが原点となりその後「飯田線秘境駅号」などに乗車し、他の多くの魅力的な駅を回っていくこととなった。牛山氏の秘境駅訪問の“原点”となったのが小和田駅であると考えると、ここ門島を原点とするのはたいそう地味である(笑)。
 しかし、そうして他の駅々を巡っていく中で、私にとってのこの駅の存在感は、徐々に薄れていってしまった。さらに秘境駅号の非停車駅である伊那小沢や鶯巣といった駅には後に訪問を果たすわけだが、この門島だけは以前に訪問したことがある駅として私が再訪することはなかった。
 しかし、本当にそれでよいのか。長野県内では飯田以南は全駅訪問を果たしてしまった私は、今まで訪問してきた各駅への「再訪」を始めていく。そうした中でこの門島駅へはおよそ9年もの歳月が開いてしまったが、久々に訪問することができた。駅は一段高い位置にあり、下には数軒の人家がひしめいている。あとはダムをはじめとする泰阜発電所の施設と、真っ赤な「櫓橋」なる橋が存在するだけで、車通りも少なく実に長閑な場所であった。
 さらに、この駅の待合室内には駅ノートが存在しているのだが、そのノートの管理人さんが一つ一つ丁寧に返事を書いている。全く人の気配を感じさせない秘境駅も確かに魅力的だが、人の暖かな営みを感じることができる、そんな駅も素晴らしいものがある。当駅は地味な存在としてしばらく訪問して来なかったが、たまには「原点回帰」してみれば新たな発見が見つかるかも知れない。なにもかも初めてである初訪よりはつまらないと思っていた「再訪」をすることへのマイナスイメージがなくなり、それ以来桜町などの駅を何度でも再訪するようになった。ここ門島は、そんな素晴らしいことを教えてくれた駅なのだ。またいつか何かに行き詰まったら、ここに来てみれば新たな道しるべがあるのかも知れない。そんなことを感じさせるこの駅は、やはり私にとって「原点」という言葉がよく似合う存在なのであった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?