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【駅訪問】信濃川島駅(長野県・中央本線)

辰野町・信濃川島駅。
中央本線で最も地味な駅だと言っても過言ではない。
ホームからは離れたところに駅舎がある。
ホーム上の待合室。駅舎よりもこちらの方が使い勝手が良さそうだ。
駅名標(通常仕様)
そのすぐ隣に、絵柄の入った駅名標。背景は「横川川」だろうか。

信濃川島data
路線:JR東日本・中央本線(辰野支線)
所在地:長野県上伊那郡辰野町上島
駅構造:単線(1面1線)


“日本の中心”の駅

 ここは長野県上伊那郡の辰野町にある、「信濃川島」という駅。辰野町というと「日本のど真ん中町」としてテレビなどで度々取り上げられ有名になっており、町内にある「日本中央の碑」へは直線距離上ならここが最寄りとなる。つまり、ここは「日本のど真ん中駅」とも言える場所にあるのだ。

 しかし、この地味な駅が日本の中心だというにはなんとも微妙なことだ。確かに地理的には「中心」なのだが、世界に誇る日本の鉄道の「軸」となるのが当駅だというには、かなり物足りない。
 まず、当駅は中央本線の中で唯一の単線駅なのだ。そんな馬鹿な、中央本線は路線自体が複線じゃないか、と思われるかもしれないが、この駅の属する「中央本線辰野支線」は、単線となっているのである。辰野支線の中にある当駅以外の2駅はいずれも列車交換設備をもつため、奇しくもここが中央本線で唯一の単線駅となってしまった。
 そんな信濃川島駅だがもともとはやはりちゃんと列車交換設備があったようだ。2面2線の相対式交換駅だったのだが、単線化される際になぜか1番線が撤去され、構内の構造が複雑なものになっている。現在でもかつての1番線ホーム跡の土盛りが残っているし、他にも構内を探し回ってみるといろいろと遺構があって面白い。

 もちろん、単線化されてしまったことには真っ当な理由がある。この区間には特急も走っておらず、停車する列車も9往復/日だけなのだ。わざわざ交換駅を設ける必要がないほどに列車本数が少ないのである。これは、秘境駅として名高い飯田線の小和田駅とほぼ同じくらいであり、列車での到達難易度は低くない部類に属していると言える。
 それほどまでに列車本数が少ないと、果たしてこの駅の利用者は困るのではないかとさえ思える。しかし、駅のホール上から見渡しても、駅入り口の長いスロープの脇に1軒あるだけ。駅裏手には国道も通っており、地域の住民にとってもやはり自家用車の方が利用しやすいのだろう。この国道の車通りは多いため当駅はあまり秘境感はないが、何のために存在するのだろうと疑問の念を抱えずにはいられない。
 駅は横川川という川の上を跨いでおり、駅名の「川島」というのは「横川」地区と「上島」地区の合成地名だ。しかしどちらの地区の住民も、この駅を利用することは殆どないのではなかろうか。

 今回私はこの駅へは、車での訪問となった。しかし国道こそ車の長蛇の列ができているものの、駅には誰1人もいなかった。まるで近年のモータリゼーションの中に取り残されたような小さな駅は、興味深さもあり寂しさもある。私にとってはとても居心地が良いような、そんな駅だった…

左奥の建物が駅舎。
駅舎から階段を降りて地下通路をくぐり、
線路の反対側のホーム入り口から入場する。
かつての1番線は撤去され、線路の部分の橋梁だけがくっきりと残る。
さらに、写真右奥の方に見える1番線ホーム跡の土盛りもお分かりいただけるだろうか。
駅は川を跨いでいる。
ホームの背後には国道が通り、車が頻繁に行き交うので静かではない。
駅までの坂道。
駅周辺の人家は、写真右の家くらいしか見つからない。
国道を通過していく車を見つめるだけのこの駅を、誰が利用するのだろう?
「秘境駅」のひとつだと言っても違和感がないほどの寂寥感である。

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