【飯田線各駅訪問】80 宮田駅
長閑な宮田村唯一のJR駅
ここは長野県上伊那郡宮田村では唯一のJR駅となる、宮田駅だ。「唯一のJR駅」という意味有りげな表現をしたのには理由があり、村内に「駒ヶ岳ロープウェイ」の「しらび平」という駅があるため、駅としては唯一ではないということになる。駅周辺は学校や住宅地が広がり、村の玄関駅というような風情だ。
駅舎はアーチ型の屋根の可愛らしいものだが、私は知っている。いや、むしろ知ってしまった、と言った方が適しているだろう…JR東海の管理する無人駅の多くには、駅施設への落書きを防止するポスターが貼ってある。落書きされた駅の写真と、「落書きは犯罪です」の文字が印象深いポスターなのだが、数枚の“落書き被害駅”の写真の中の一枚が、この宮田駅なのだ。こんな長閑な村の駅に落書きするなんてけしからん…と思うが、宮田高原への観光客が多いため、多少は自己中心的な輩が訪れてしまうのも仕方がない、と割り切るしかない。
さて、そんな私の中でもあまりイメージの良くないこの宮田駅であった訳だが、飯田市から長野市まで電車で行く途中、当駅を通過した際に“観察”することができた。2面2線の構内で、駅舎はまるでかまぼこのような可愛らしい佇まいである。30年ほど前まで現存していた元の木造駅舎と比べると規模は圧倒的に小さいが、それでも新しくて明るい雰囲気だ。
しかしすぐに列車は発車してしまう。側線などはないが比較的広い構内を、今度は降りてじっくり見てみたい。私の意識を釘付けにさせたまま、列車はこの村唯一のJR駅を去っていった…。
※再訪が達成できましたら、追記する予定です。
再訪日記
さて、今回の「上伊那北部駅訪問旅」では、以前は列車内から視察するにとどまった各駅に「訪問」していった。中央道辰野PAから辰野町内の各駅を歩き、さらに電車で一旦駒ヶ根市まで南下する。この宮田駅へは、こうして隣の大田切駅から徒歩で到達しようしたのである。
しかし、宮田村の道は至って複雑だ。どこをどう歩けばどこにつながっているのか、全く予測不能である。特に、線路沿いを歩いて進んでいたところいきなり行き止まりになってしまったときは、なんて道なんだ…と感じざるを得なかった。一般的には線路沿いを真っ直ぐに進む道は、そのまま隣の駅まで続いていることがほとんどだと思う。何も、わざわざ行き止まりにする必要なんてないのに…と、迂回を繰り返して歩いていく。
しかし、先ほどの大田切駅から当駅、そして反対隣の赤木駅までの間を、1時間以内で歩かなければならない。列車に乗り遅れると、のちのプランに影響を与えてしまう。歩いていてここかと思って適当に見当をつけた道をしばらく進むと、その先に駅が見えた。
アーチ状の屋根をもっている駅舎は、「村の玄関」という言葉がよく似合う雰囲気。上でも書いた駅舎への「落書き跡」は、当たり前のことだがすっかり何も見えなくなっていて安心した。構内は2面2線だが側線や旧貨物用ホームは見当たらず、すっきりと洗練された感じだ。また、2番ホームへも外部からの直接な出入りができ、コンパクトで利便性が意識された駅だった。
しかし先ほどにも述べたように、この駅にはあまり長い時間滞在していられない。駅に来る時も駅を去る時も電車を使わないというのは少々「非道」だと言えなくもないが、できるだけ多くの駅を訪問するための策なので仕方がない。こうしてこの宮田村の中心駅から離れ、再び北方の伊那市内へ向けて歩き出した。