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【抗がん剤】絶対に髪は抜けるらしい【家族の記録②】
夫の治療が1クール終わった。
Da-EPOCH療法という治療法で、要するに抗がん剤治療を受けている。
骨髄抑制といわれるいわゆる免疫力の低下などがあるので、基本病棟には家族も入ることができず、荷物を届けに行ってもガラス越しの対面。
幸にも夫は副作用があまり強くでなかったので、ひとまず1クール目は滞りなく済んでくれた。
LINEで電話をしていても顔色もいいし、倦怠感や吐き気などもないようで、これは家族にとってもとても嬉しい。
どうせ何もしてやれないとしても、顔色が悪いよりは穏やかな方が安心。
ただ、同室の方の中には酷い倦怠感と嘔吐を訴える方や、副作用が酷すぎて部屋移動になる方もいたそうで。
彼が元気に1クール終えてくれたのは、本当にラッキーだったらしい。
束の間の帰宅のためお迎えに行くと、元気に病院から出てきてくれた。
治療開始から20日弱で、抜け毛が始まったらしい。
見た目ではあまり薄くなったのかわからなかったけれど、生活をしていると部屋のあちこちに髪の毛が落ちていて、抜け毛の多さがうかがえる。
お風呂の排水口は、2日目にして詰まった。頭を洗うたびにスカスカと抜けていくらしい。
頭がこすれる枕は髪の毛で大変なことになるので、タオルを敷いて寝てもらうことにした。
モップとコロコロでいつでも床掃除ができる準備をした上で、彼にはワッチをかぶってもらった。
ワッチの中は髪の毛だらけだけれど、それでも襟足にはひとつまみほどの毛束が落ちている。本当に簡単に抜けてしまうらしい。
「抜け毛は絶対します」とムンテラされていたし、そういうものだと思っていたので、これについては夫婦共に自然に受け入れていた。
もしも抜け毛するのが娘だったら居た堪れなかっただろうけれど、夫の頭髪が抜けるくらいは許容範囲だ。寛解すればいずれ生えるのだし。
「ちなみに脇毛は抜けるの?髭は?」と面白がっていたら、夫から「そういう妻でよかった」と言われてしまった。
心配されるのも同情されるのもかえって辛いらしい。
ちなみに、頭髪については抜け始めから1週間くらいでほとんどなくなってしまっている。
子どもたちも「ハゲつるぴっかんだ〜!」と喜んでいる。いっそ清々しい。
そろそろ眉毛も抜けそうなので、眉ティントの手ほどきをしてあげようか迷っている。
1クール目が好調だったので、2クール目は少し薬が増えるらしい。
当然副作用も強くなるのだろうし、それに対してはやっぱり心配ではある。
とは言え、治療しなければもっと辛いことになるのは明白なわけで、逆に治療効果が高いと言われているのだから、頑張ってもらう以外の選択肢もない。
家族はとにかく、自分達が健康に平穏に日々を過ごすのみだ。
身内のいない地域に住んでいるので、手伝いを誰かに頼むこともできない。
シッターサービスも登録してあるけれど、この感染爆発の状況下で新たな他人を生活に招く勇気がない。
保育園に助けてもらいなから、わたしは強いお母さんになるしかない。
*
余談だけれど、夫の入院に当たって職場の上司や直接ご迷惑をかけそうな人、仲の良い人数人には家庭の状況を打ち明けた。
その全員がわたしより年上で、かつ上司以外は全員女性なのだけれど、その女性全員が口を揃えて言ってくれたことがある。
「あなたは大丈夫?」
つまりはこういうこと。
夫はもちろん闘病という大変な状況にあるけれど、ある意味入院してしまえば病院に委ねるほかはない。自分の体調に専念できる。
でも、わたしは仕事をしながら子どもたちを一人で世話して、生活をしていかなければいけない。いわゆるワンオペの生活が続くことになるけれど、大丈夫?と心配してくれているのだ。
正直、これは胸が熱かった。
なぜなら、わたし自身夫の入院が決まった時、「一人で半年も育児するの嫌だーーー!」と思ったから。
そう思ったけれど、「なんて不謹慎な、相手は病気なのに」と飲み込んだ気持ちだったのだ。
それがまあ、子育ての先輩たちが口を揃えて「あなたが大変すぎる」と心配してくれているわけだから、どれほど嬉しいか!!
自分が人でなしなのでも、力量の足りないダメ母ちゃんなのでもなくて、それを「しんどい」と感じるのは普通の心なのだとはからずも教えてもらえた。
それだけで、ずいぶん肩の荷が降りた気がしたのだ。
本人は辛い。とても辛い。
それに、家族も辛い。
子ども達だって、パパがいない寂しさを必死に堪えている。辛い。
それが病気。
それを「しんどいんだよね」「これが大変なんだよね」って、無理せずに言える環境のありがたさと、そうさせてくれる周囲の暖かさに感謝でいっぱいです。