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幻想を果物に〜『栞を挟んで、離さんで。』著者:枝折 レビュー
先日BOOTHで素敵な小冊子を購入しました。
Twitterで相互フォロー頂いております枝折(しおり)さんの『栞を挟んで、離さんで。』です✨
内容はというと、10数編のショートストーリーと1編の詩が収められている50ページちょっとの薄い作品集で、私の印象を果物に喩えるなら実の詰まったやや大粒の果実……そう、ザクロ辺りですネ🍀
恋愛がライトモチーフになっている作品が多い印象ですが、私の関心に照らして云うなら「幻想を共有する」ということもまたテーマとしてある気がします📒
いくつか具体的に作品を挙げて、その辺をちょっとお喋りしてみませう😋
まずは、『大学生を生きる。』という冒頭の作品。(このタイトルが既にこの作品集の大きなポイントですね)
オンライン飲み会の途中、コンビニで味違いのスミノフアイスを買う二人だけの秘密の時間。
二人は電話で話しながら同時に同じことをしているのであって、隣にはいないわけです。
私はオンライン飲み会とかオンラインレッスンとか今のところ経験がないのだけれど、実はわりと前からありましたよね。(英会話だと90年代には確実にありました)
このご時世いろんなものが非接触になって、改めてオンライン〜が脚光を浴びた時、私的にはオンライン飲み会はないなっと思っちゃいました😖
(今はそうでもないけれど💦)
場の雰囲気みたいのって感じられない人はその場にいても感じられないわけです。
これもひとつ、幻想ですよね。
あっ、私が幻想って云う時はわるい意味じゃあなくって……
この世界そのものが幻想を共有することで成り立っている、いわば壮大なごっこ遊び、いうなれば素晴らしい魔法ですよネ🍀
『シンデレラガール』という作品のラストパートでは劇中劇の登場人物が突然浮上してきて、
「安易な気持ちで私を生み出して、永遠の楽園に閉じ込めたことを私はゆるしません」
「私もあなたたちのいる世界に連れていってください」
と云うのです。
彼女がいるのはシンデレラストーリーの世界。とても優しい幸福な世界ですが、いうなれば読者から隔てられ疎外されちゃってるのですね。悲しいことに。
だから『曇り眼鏡』という作品の最後で「おかえり」という言葉が発せられた時、そこには温かい気持ちを感じずにはいられなかったですね💙
『とっておきの果実』という胸踊るタイトルの作品の中には「こうやって大した意味のない、抽象的な会話をするのが好きなのだ」というモノローグが出てきます。
抽象的な会話、いわば私の言葉でいうところの、上に書いたような「幻想」ですネ🍀
私はこの一文を読んでこれは作者である枝折さんの偽らざる本心なんじゃないかなという気がしました🍀
かく云う私もいわば同好の士です💙
ぜひぜひ枝折さんと幻想もとい抽象的な会話を堪能したいものです🤗
『道化の退場』という作品に出てくる道化という言葉。これは冒頭の『大学生を生きる。』でいうところの「大学生」に当たるのではと思います。
ラストを飾る『大学生を生きた。』で大人になった主人公は大学生時代からの友人たちと良好な関係が続いていて、そのことにとても救われています。
大学生だった頃は今ある関係は仮初めのもので、大学生じゃなくなったら魔法が解けて消えてしまうのだと思っていたのではないかと思わせる節があります。
前述の『道化の退場』ではシェイクスピア作品の道化役は物語の途中で必ずいなくなるのだ、というモノローグがありましたネ🤡
だけどそうじゃなかったんだ、自分たちは同じ幻想、同じ魔法を共有していたということを、成長した主人公はちゃんと知っているのです。
とても美しいエンディングでした🍀
背景に退いている作品も愛おしい。刹那のきらめきを写し撮った作品集。ひとまとめにまとめられて一冊で一つの作品ともなったことで生まれた意味もある。編まれたことに意味がある一冊。
とても素敵な作品集でした。枝折さんありがとうございました😊
ちなみに……ほぼド真ん中に収録されている『ピロートーク』という作品。私としては単品ではこの一編が一番好きでした。
やや肉厚で中くらいの色合いの、少し大きめの乳首がナゼか映像として浮かびました💦
う〜む、作中の夫婦。こんな幻想を二人で共有できたら、それはもう、それはそれは素晴らしい愛ですぞ💙
見開き1ページにも満たない掌編の中にこんな宇宙を創造する力はやはり魔法です🍀