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家庭という密室で起きたこと

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外からは綺麗にみえる家庭像の内側で起きていたグロテスクな現実について書いています。
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#記憶

目次:家庭という密室で起きたこと

◇はじめに ◇ パズルのピース #1 蘇った記憶  ・性虐待の記憶  ・記憶の細部 ◇ パズルのピース #2 知らない誰かが勝手に生き始める  ・底が抜ける  ・虎視眈々と ◇ パズルのピース #3 宙に浮いている時間  ・これは現実ではないという祈り  ・現実と交錯する ◇ パズルのピース #4 母から虐待されていたと認識できるまで  ・階段から落ちた真相  ・幼稚園で初めて知ったこと  ・幼稚園にほとんど行っていない ◇ パズルのピース #5 家庭という

あとがき:家庭という密室で起きたこと

まず、私の文章を読んでくださって ありがとうございます。 「家庭という密室で起きたこと」を 誰でも読める場へ投稿できたことは、私にとって大きな一歩になりました。 私がこの文章を投稿することによってやりたかったことは「過去を手放すこと」でした。 対面で誰かに話すには、あまりにも重すぎる話で、文章なら読む人がいつでも逃げられると思うと、私が本当に感じていたことをありのまま書くことができました。   投稿するためには必然的に何度も文章を読み直すことになり、それがはじめは苦しかった

物語の終焉 #8

物語の全体像 記憶の断片を集めながら、パズルのピースを仮説でつなぐ。 新しい記憶の断片が出てくると、それまでの仮説がくつがえり、新たな可能性が見えてくる。 その過程を繰り返しながら、私の中の空白はだいたい物語がつながるようになった。 こうして振り返りながら、私の身に起きたことの全体像が見えてきて改めて思うのは、幼少期からずっと、子どもの理解できる範囲をはるかに超えた大人の複雑な事情や、大人でも受け止められない複雑な感情を容赦なく浴びせられ続けてきたということだ。 大人が

パズルのピース #2 知らない誰かが勝手に生き始める

◇前回の記事はこちら 底が抜ける 勝手に生き始めた誰かは、何もなかったかのように明るく振舞ながら、高校生活に戻った。 それまで無口でほとんどしゃべらなかったキャラクターから一変して、誰とでも明るく話すキャラクターになった。 とにかく高校を卒業して、大学進学のタイミングで実家を脱出することだけを密かに考えて生きる人格は、それ以外のことを一切考えず、猛然と高校生活をこなし始めた。 寝込んだまま動けず相変わらず宙を見ているだけの私から分離するように現れた知らない誰かは、何も

パズルのピース #1 蘇った記憶

性虐待の記憶 初めて記憶と感情の統合を体験した時に蘇ったのは、高校二年生のとき、起き上がれなくなって不登校になった頃の出来事だった。 治療中に浮かんできた場面は、決定的な事実を表していた。 それは、父親からレイプされている場面だった。 当時はレイプという表現を使うことに後ろめたさを感じていた。 なぜなら、父親はその行為を「私を治してあげるための治療」だと言っていたから。 本当にそう信じていたのか、自分を正当化するためだったのか、その両方が混在するような独特な妄想の世界の

はじめに:家庭という密室で起きたこと

はじめに トラウマ治療を経て、蘇った記憶の断片をパズルのピースのように集めながら、私の記憶の空白期間で何が起きていたかを書きました。 私は今まで、これらの体験によって自分が醜く汚れてしまったように感じていました。 それを人に知られてはいけない恥だと、自分の中に封じ込めてきました。 でも、これらの感覚は、私に帰属されるものではなく、やった側のものだと気づきました。 もともと彼らのものだから、私が大切に抱えている必要はない、と。   そんな思いを持ちながら、今まで封印してい