イハナミイサ

サバイバーのその先の生き方を模索中. 過去を手放すための文章. 心理療法の世界の「統合」の体験について. 私の回復につながったこと: FAP療法, 無意識の旅, ナラティブ, オルタナティブストーリー, メタファー.

イハナミイサ

サバイバーのその先の生き方を模索中. 過去を手放すための文章. 心理療法の世界の「統合」の体験について. 私の回復につながったこと: FAP療法, 無意識の旅, ナラティブ, オルタナティブストーリー, メタファー.

マガジン

  • 家庭という密室で起きたこと

    外からは綺麗にみえる家庭像の内側で起きていたグロテスクな現実について書いています。

最近の記事

イメージが形になる喜び

何気なく読んだ記事で、モヤモヤが解決した話です。 note で本のような形が作れないかな?と思いながら、マガジンを作りました。 その中で私がやりたかったことは、 ・目次を見て、興味がある項目だけ読めるようにしたい ・なるべく一話で完結しながらも、大きな流れはつながっている ・話の前後が気になったら、すぐに前後の記事を参照できる でした。 マガジンに登録しただけでは、話の流れの順番を示すことができず、タイトルに数字を入れてみたり、投稿した時系列でその順番を示したり

    • 思いがけない旅がはじまった日

      2022年8月14日(日) 台風の翌日でした。 写真家の幡野広志さんの著書『ラブレター』出版記念の写真展に行きました。 そこで運よく幡野さんとお話することができました。 私は、風景の色について幡野さんに色々聞いてみたいことがあって、色々なことを教えていただきました。 私が聞きたかったことは、マジックアワーの空の色の中に、感動以上の特別な感覚になる色があること、その特別な感覚がどこからくるのかわからないことでした。 めったに出会えない その色に対する感覚が何なのか、たくさん

      • あとがき:家庭という密室で起きたこと

        まず、私の文章を読んでくださって ありがとうございます。 「家庭という密室で起きたこと」を 誰でも読める場へ投稿できたことは、私にとって大きな一歩になりました。 私がこの文章を投稿することによってやりたかったことは「過去を手放すこと」でした。 対面で誰かに話すには、あまりにも重すぎる話で、文章なら読む人がいつでも逃げられると思うと、私が本当に感じていたことをありのまま書くことができました。   投稿するためには必然的に何度も文章を読み直すことになり、それがはじめは苦しかった

        • 物語の終焉 #8

          物語の全体像 記憶の断片を集めながら、パズルのピースを仮説でつなぐ。 新しい記憶の断片が出てくると、それまでの仮説がくつがえり、新たな可能性が見えてくる。 その過程を繰り返しながら、私の中の空白はだいたい物語がつながるようになった。 こうして振り返りながら、私の身に起きたことの全体像が見えてきて改めて思うのは、幼少期からずっと、子どもの理解できる範囲をはるかに超えた大人の複雑な事情や、大人でも受け止められない複雑な感情を容赦なく浴びせられ続けてきたということだ。 大人が

        マガジン

        • 家庭という密室で起きたこと
          11本

        記事

          パズルのピース #7 最後のパズルのピース

          なぜ殺意と憎しみをぶつけられていたのか? 3歳で既に殺意を向けられていた、ということは、その原因が私にあるとはどうしても思えなかった。 育児ノイローゼだったから? 精神を病んでいたから? 代理ミュンヒハウゼン症候群だったから? 何かの病だったなら、母の精神構造を分析して、その原因を見つけ出すことができれば、私は存在を認められて愛されるのだろうか? 私は自分で自覚がないところで、そんな期待を持っていたのかもしれない。 だから記憶の断片を集めながら、自分にされたことの残酷

          パズルのピース #7 最後のパズルのピース

          パズルのピース #6 母が何を考えているのかわからない

          嘘で塗り固めた現実を突き破る 最初に性虐待の記憶が蘇ってきた後、私は父を尊敬しているという設定の現実を生きることができなくなってしまった。 そこで、家族面談という形で先生に立ち会ってもらって、両親の前で自分の気持ちを吐露する場を設けてもらった。 父親を尊敬しているという親子関係の設定とは かけ離れた現実を 嘘で塗り固めて生きている両親に突き付けることになる。 それは、嘘を突き破ることだった。 そのためには物凄いエネルギーが必要だった。 私はほとんど悲鳴に近い声で「私に何を

          パズルのピース #6 母が何を考えているのかわからない

          パズルのピース #5 家庭という密室の中で

          性虐待の原体験 それは初めて父とお風呂に入ったときのことだった。 3歳くらいだったと思う。 お父さんという人は仕事であまり家にいなくて、あまり話をしたことがない無口な人だった。 いつもはお母さんに頭を洗ってもらうけれど、その日はお父さんが洗ってくれることになった。 お父さんの膝の上で仰向けになった。 シャンプーが目に入るのが怖くて目を堅く閉じていた。 頭を洗ってもらっていたはずが、なぜか脚と脚の間を覗きこまれているようだった。 お父さんは「まだできないか」と意味不明な

          パズルのピース #5 家庭という密室の中で

          パズルのピース #4 母から虐待されていたと認識できるまで

          なぜ私は父からずっと逃げられなかったのだろう? それは父が、母から逃げてきた避難先だったからだった。 階段から落ちた真相 3歳の頃、私は階段から落ちて額に大きなタンコブを作ったことがあった。 病院でレントゲンを撮っても異常がなく無事だった。 子どもの頃によくある怪我の一つと思っていた。 でも実際はそうではなかった。 そういうことにされて処理された、というだけだった。   蘇ってきた記憶の中で、私は背中に衝撃を受けて次の瞬間には、頭蓋骨がコンクリートに打ち付けられる衝撃を感

          パズルのピース #4 母から虐待されていたと認識できるまで

          パズルのピース #3 宙に浮いている時間

          これは現実ではないという祈り 私の生きる時間軸には宙に浮いているような空間があった。 それは別次元のどこかで起きていること。 だから現実ではない。 そう自分に言い聞かせるように強く念じるように祈っている時間が宙に浮いていた。 それは、おぞましい、体中に虫唾が走るような、嫌悪感でいっぱいの中で、その時間が終わるのをひたすら身を固くして耐えている時間だった。 吐き気を催しながら、どんなに激しく拒絶しても、止めてと強く主張しても、お願いだからやめてくださいと懇願しても、止まらな

          パズルのピース #3 宙に浮いている時間

          パズルのピース #2 知らない誰かが勝手に生き始める

          ◇前回の記事はこちら 底が抜ける 勝手に生き始めた誰かは、何もなかったかのように明るく振舞ながら、高校生活に戻った。 それまで無口でほとんどしゃべらなかったキャラクターから一変して、誰とでも明るく話すキャラクターになった。 とにかく高校を卒業して、大学進学のタイミングで実家を脱出することだけを密かに考えて生きる人格は、それ以外のことを一切考えず、猛然と高校生活をこなし始めた。 寝込んだまま動けず相変わらず宙を見ているだけの私から分離するように現れた知らない誰かは、何も

          パズルのピース #2 知らない誰かが勝手に生き始める

          パズルのピース #1 蘇った記憶

          性虐待の記憶 初めて記憶と感情の統合を体験した時に蘇ったのは、高校二年生のとき、起き上がれなくなって不登校になった頃の出来事だった。 治療中に浮かんできた場面は、決定的な事実を表していた。 それは、父親からレイプされている場面だった。 当時はレイプという表現を使うことに後ろめたさを感じていた。 なぜなら、父親はその行為を「私を治してあげるための治療」だと言っていたから。 本当にそう信じていたのか、自分を正当化するためだったのか、その両方が混在するような独特な妄想の世界の

          パズルのピース #1 蘇った記憶

          はじめに:家庭という密室で起きたこと

          はじめに トラウマ治療を経て、蘇った記憶の断片をパズルのピースのように集めながら、私の記憶の空白期間で何が起きていたかを書きました。 私は今まで、これらの体験によって自分が醜く汚れてしまったように感じていました。 それを人に知られてはいけない恥だと、自分の中に封じ込めてきました。 でも、これらの感覚は、私に帰属されるものではなく、やった側のものだと気づきました。 もともと彼らのものだから、私が大切に抱えている必要はない、と。   そんな思いを持ちながら、今まで封印してい

          はじめに:家庭という密室で起きたこと

          目次:家庭という密室で起きたこと

          ◇はじめに ◇ パズルのピース #1 蘇った記憶  ・性虐待の記憶  ・記憶の細部 ◇ パズルのピース #2 知らない誰かが勝手に生き始める  ・底が抜ける  ・虎視眈々と ◇ パズルのピース #3 宙に浮いている時間  ・これは現実ではないという祈り  ・現実と交錯する ◇ パズルのピース #4 母から虐待されていたと認識できるまで  ・階段から落ちた真相  ・幼稚園で初めて知ったこと  ・幼稚園にほとんど行っていない ◇ パズルのピース #5 家庭という

          目次:家庭という密室で起きたこと

          感情の層を潜っていく:ロードマップ

          感情は層になっている。 果てがないような怒りの層の下には、静かで複雑な感情が層になっていた。 怒りの層では、親のやっていたことは間違っていると認めさせたい、それを第三者に認めてほしい、そんな酷いことをされて当然な存在なんて居ない、など、善悪で親を裁きながら怒り続けた。 そうやって怒れば怒るほど、どこかから親が擁護されるような反論が浮かんできて、その反論に対してまた反論するという風に、いつまでも頭の中で闘っているような状態だった。   世間一般で言われている「子どもを愛さな

          感情の層を潜っていく:ロードマップ

          私が信じ込んでいたこと

          私が信じ込んでいた「ありふれた家庭に育った」という生育歴は、どこかから取ってきたような不自然に薄いものでした。 何不自由ない家庭で育った。 仕事ができる父親を尊敬している。 母親はごくありふれた専業主婦。 姉がいる。 私は高2で起き上がれなくなり、少しの間不登校になったけれど、立ち直  って大学を卒業して就職した。 現在は体調を壊して退職して体を休めている。 姉にはよく、真面目過ぎる、考えすぎる、気にしすぎる、神経質、自意識過剰と言われる。   FAP療法の初回面接で答えら

          私が信じ込んでいたこと

          レビューの後日談と統合の体験後の選択

          2020年にFAP療法の本が出版されたときに、私が初めて統合を体験したときのことをamazonのレビューで書きました。 私がレビューで自分の体験を書こうと思ったのは、FAP療法を受けて変化した体験が誰かの参考になるかもしれないと思ったからでした。 それと、体感をともなう形で浮かんできた映像は、当時の身体反応が再現されているように感じられたこと、それが自分の体験だという実感が湧いてくる感覚が伝わればいいなと思ったからでした。 フォルスメモリー(過誤記憶)の可能性について説明

          レビューの後日談と統合の体験後の選択