ボケてしまった祖父にエンジニアにとって一番重要なものを教えてもらった話
亡くなった祖父は、東京帝国大学の工学部出身で京都大学の工学博士号を取った元技術者という世間一般で言う「エリート」だった。
ただ、そのことを自慢したり知識をひけらかすということを一切しなかった。優しいおじいちゃんというだけでなく、誰に対しても別け隔てなく温和に接する人だったと感じる。
「ノーベル賞は運だよ。自分は運が悪くて取りそこねちゃったけどね」という冗談をよく言ってたのを覚えている。
印象的なエピソードがある。
祖父の認知症が進行し、何度も同じ話をするようになってしまってからの話だ。
それでも自分は祖父のことが好きだったので、自身の就職報告のために夕食を一緒にしたのだ。
自分が新卒でIT企業に入社したことを伝えたら「自分はITのことがまったくわからないから教えてほしい。純粋に興味があるんだ」と言っていた。
「ボケた状態なのに分かってくれるかな」と内心不安だったが、最近のIT業界の動向を話すと熱心に話を聞いてくれて、次から次へと質問をしてくれた。その目は輝いていた。
その時、自分はようやく気付いた。
「賢かった祖父は今はいない。ただ好奇心はボケても残る。これがエンジニアにとって一生物の財産なんだ」
だから「エンジニアとして好奇心は財産だ」ということは大事にしている。
新しい技術があったらまず試してみる
分からないことがあったら謙虚になって人に聞く
当たり前のことかもしれないが、当たり前のことを突き通すのが人生で一番難しいのだ。
祖父は老衰で亡くなってしまったが、あの時の祖父の輝いていた眼は一生忘れることがないだろう。