「地域のために……」を実践する、24時間食堂。
「地域密着型マーケティング」という言葉がありますが、
個人商店や中小企業にとっては、
非常に重要なテーマとなります。
ネットビジネスへの転換の流れがあるとは言え、
まだまだ対面販売が消え去ることはありません。
モノが売れにくくなったいま、
なおさら人と人の繋がりが求められ、
お客さまとの密な関係づくりが、
商売には欠かせなくなっています。
どうすれば、お客さまとの繋がりを
持ち続けることができるのでしょうか。
大阪のとある街に、
年中無休・24時間営業の食堂があります。
チェーン店ではなく、まったくの個人商店です。
ご主人と奥さん、娘さんの3人でローテーションを組み、
休むことなく営業を続けています。
なぜ、そこまでするのでしょうか。
決して金儲けのためではありません。
労働時間を考えると、金儲けにはなっていません。
この地域に住む人たちのために、
「いつ行っても営業しているお店」
を作りたかったのです。
この地域には、普通のサラリーマンもいれば、
日雇い労働者もいます。
夜勤の作業員や警備員、水商売のおねえさんも。
その人たちが、いつでも食べられるようにするためには、
24時間お店を開けておく必要があったのです。
いろんな人に喜んでもらうためなのです。
来てくれたお客さまとは、他愛もない会話をしたり、
悩みを聞いてあげたり。
いつしか、みんなの癒しの場となり、
多くの常連さんが集まるようになりました。
中には、福祉作業所で働く身体障害者や
生活保護受給者の常連さんもいます。
こうした人たちには、
栄養面を考えた料理を出すようにしたり、
食後の薬を預かり、飲み忘れのないように
気配りしたりしています。
ある時には、
高齢の生活保護受給者が行方不明になったので、
ご主人が身元引き受け人となり、
警察に捜索願を出したこともあります。
お客さまを大切に思うが故に、
ここまでしてしまうのです。
商売人とお客さまの関係ではなく、人と人との繋がり。
商売の枠を超えています。
誰もができることではありませんが、
ここまでやるご主人やご家族だからこそ、
長年商売を続けることができたのです。
単なる商売ではなく、生きがいとなっています。
これぞ、本物の商売人の姿なのだと思います。