“安心”は、いくらで買えば良いのか?
雑誌に一般家庭の家計簿が載っていたりする。ファイナンシャルプランナーによる、家計簿診断である。非常に興味深く見ているのだが、いつも驚きの数字を眼にする。「保険料4万円」。病気に備えるための医療保険料が、この金額。貯蓄型や保障内容にもよるが、家計を圧迫するほどの金額をよく払っているなぁ、と感心する。
「もしもの時」に備えたい気持ちはわかるが、こんな金額を毎月払っている方が、心臓に悪いような気がする。病気になれば、お金は掛かる。だが、そんなに大きな保障が本当に必要なのか。
たとえば、一般的な病気で入院したとしても、現在は一定以上高額な医療費は、免除される制度がある。「高額療養費制度」と言って、収入によって支払額の上限が設定されている。当然、低所得者は安くなっている。
この制度を利用すれば、病気治療のために借金する必要もない。1ヵ月数万円が支払い限度となっているので、民間の保険に入っていなくても、なんとかなる程度のものである。そう考えると、安易に保険に加入するのはやめた方がよいと思う。
だが人は、「もしもの時には……」と常に考えてしまう。不安を抱え込む生き物である。“なんとかなる”と言われても、安心はできない。ならば、保険に入るしかない。入ることで安心できるのなら、多少の出費も苦にならないだろう。その場合には最低限の保障で良い。2万円、3万円もの保険には、余分なものが多く含まれているので、数千円〜1万円程度のもので充分。「もしも」に備えることはできる。
たとえば「こくみん共済」「農協共済」「都道府県民共済」という、協同組合が運営するものもある。これなら、民間保険会社で数千円〜1万円の保険と同じ程度の保障がついて、千円〜三千円ほどで済んでしまう。これで充分ではないか。
ただし、ガンや難病など、健康保険のきかない治療をする場合には、高額療養費制度は適用されないし、共済では間に合わないことがある。その備えとしては、ガン保険や先進医療特約に入っている方が良いかもしれない。
普通の病気には共済で。ガンや難病にはガン保険・先進医療特約で。この2つを組み合わせれば、ひとまず“安心”を手に入れることができるのではないか。別に私は「共済」のまわし者というわけではない。ただ、いままでの経験から出た結論を参考までに提案してみた。
保険会社のセールストークは、聞けば聞くほど納得してしまう。自分に必要な保険はどれなのかを冷静に考えることが大切である。決して、保険貧乏にならないように。保険に入らなくても、なんとかなる。だが、ビクビクして生きるのも疲れる。それが保険会社の存在意義であり、安心料だと思えば良い。だが、家計を圧迫するほどの金額を払う必要など、まったくない。それがストレスになってしまっては、本末転倒である。