「失敗しない移住」には、何が必要なのか?
田舎暮らしを希望する人が多くなっていますが、
移住したものの挫折して都会に戻る人も多いのです。
「仕事がない」「土地になじめない」などの理由で、
すぐに戻ってしまうケースが目立ちます。
そうならないための対策を
各自治体が取り始めています。
起業講座を首都圏で開催している鳥取県。
子育て中のシングルマザーを対象に、
介護施設で働くことを条件として、
家賃補助や養育支援を始めた島根県。
移住促進のための取り組みとしては、
良いアイデアだと思いますし、
効果も期待できるでしょう。
しかし、地方の自治体は、
田舎暮らしにおける最大の問題を理解していません。
私は、大阪から和歌山の山奥に移住した
実践者として言います。
仕事を紹介してくれたり、
生活を支援してくれることは有り難いのですが、
田舎で生きていく上でもっとも悩み、
イライラを募らせるのは、
地域との関わり、人間関係です。
田舎の集落には、都会育ちの人間には理解しがたい
風習・慣習があります。
神社があれば、
氏子になることを強要されることもあります。
神社や寺が老朽化すると、
修理や立て替え費用を負担させられる場合も。
祭りを手伝わされるだけならまだしも、
祭りの準備や後の宴会の会場として、
自宅を解放しなければならなかったり、
酒代・食事代まで負担しなければならない
集落もあります。
地元の学校がスポーツで全国大会に行くとなれば、
後援会費を集めに来ます。
町内会に入るのは絶対で、
結構高額な会費を取られます。
これらを断ると、
まわりの人の態度が変わり始めるのです。
あることないこと噂が広まり、
いわゆる“村八分”となります。
そこで勇気を振り絞り、
町内会から脱退する人もいます。
すると、とんでもないトラブルが起こり始めるのです。
「会費を払っていないから、ゴミ集積所は使うな」
「行政からの配布物は配らない」
元都会人には、
なぜそんなことを言われるのかが理解できません。
すべての住民は、ゴミを出す権利がありますし、
配布物を受け取ることもできるはず。
しかし、田舎でそんな常識は通用しません。
田舎独特のルールが存在するのです。
それをわかった上で移住しなければ、
快適に暮らしていくことはできないのです。
幸い私の住む集落は、現代的な考えの人ばかりで、
つかず離れずで快適に暮らしていますが。
しかし、そんな集落は珍しく、すぐ近くの別の集落では、
挫折して都会に戻った人もいます。
現代社会において、こんな現実があろうことなど、
都会人は知る由もありません。
集落の人たちも気づいてはいないのです。
役場の人も基本的には地元出身者が多いので、
わかっていません。
マスコミが、
「田舎暮らしの素晴らしさ」ばかりを流すので、
夢・憧れが大きくなり過ぎているのです。
もっと現実を教えてあげるべきです。
その上で、苦労以上の喜びがあることを
知ってもらえば良いのです。
自治体は、過疎化を解消するために、
一所懸命移住推進に取り組んではいますが、
根本的な問題を把握していなければ、
終の住処としての移住者は増えないのです。
「失敗しない移住」を実現させたいのなら、
地方の人たちの意識を変えなければならないのです。
変える必要はないと考えるなら、
集落の消滅を受け入れるしかありません。
移住を希望する人も、甘い言葉に惑わされることなく、
冷静に考え抜いて、実行に移すべきです。
そして、田舎暮らしには多少の我慢も
必要だということを肝に銘じなければなりません。
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