【マーケ基礎】完璧な陳列では、人は買わない。
商品も豊富に揃っている。
すべて見やすい位置にある。
手に取りやすい。
商品のフェイス(顔)も正面を向いている。
キレイに並べられ、見ためは美しい。
ディスプレイコンテストなら、入賞間違いなし。
そんな売り場の陳列を想像してみてください。
もし、あなたのお店が、
こんな完璧な陳列をしていたなら、
売り上げは良くないはずです。
“どういうこと?”と思われるでしょうが、
それは「スキ」が無いからです。
見ているだけなら、それでも良いのですが、
実際に商品を手に取ろうとすると、
その完璧なバランスを壊してしまいそうで、
緊張するのです。
気後れしてしまいます。
そうなると、居心地も悪くなり、
お店を出たいと思うようになります。
これでは、売り上げには繋がりませんよね。
女性にたとえて書きます。
Aさんという女性とBさんという女性がいるとします。
Aさんは、容姿端麗、頭脳明晰。
いつもお洒落で、仕事もバリバリこなします。
Bさんは、美人とは言えないけれど、
いつも笑顔で明るい人。
時々ドジなこともしてしまいます。
あなたが男性なら、どちらの女性と結婚しますか?
女性なら、男性に置き換えて考えてください。
ほとんどの方が、Bさんを選ぶのではないでしょうか。
カクテルパーティに連れて行くなら、
Aさんかもしれませんが、
家でいつも一緒にいるなら、Bさんだと思います。
人間は、スキの無い完璧なものを見ると、
無意識に「近寄りがたい」というイメージを持ち、
避けてしまうのです。
Bさんのように、美人ではなく、ドジな人に対しては、
親近感を持ち、いとおしくなるものです。
完璧なものに囲まれてしまうと、疲れてくるのです。
適度にバランスが崩れている方が落ち着き、安心します。
私がスーパーに勤めていた時に、それは実感しました。
開店前に、商品の補充や陳列をして、
“これで良し”と自分では完璧なつもりで、
お客さまをお迎えしていました。
自慢ではありませんが、
私は陳列がウマいと言われていましたので、
見ためはキレイなんです。
特に、商品を積み上げて見せる「エンド」の陳列です。
「エンド」というのは、陳列棚の端の部分で、
売り出し商品などを並べるところです。
この部分で、階段状に商品を積んだり、
上から下まで、ビシッと線を揃えたりしていました。
ところが、売れないのです。
あまりに、キレイに積み過ぎていたのです。
特売品なら、
陳列の美しさはそれほど影響しないのですが、
1週間通しての売り出し程度の商品では、
売れませんでした。
ほんの少しでも売れ始めると、
完璧なバランスが崩れ、売れ始めるのですが。
私は、間違っていたのです。
自分のセンスの良さを見せびらかすために、
陳列していただけだったのです。
お客さまのことを考えていなかったのです。
お客さまが、
あまりにもキレイに並べられた商品を見ると、
「このお店、売れていないのかな」
と疑ったりしてしまうのです。
また、気の弱いお客さまなら、
キレイなものを壊すことに抵抗を感じる場合もあります。
そう思われないようにするには、
商品を積む山の高さを変えたり、
歯抜けの部分を作ったり、
バランスを適度に崩す必要があるのです。
すると、その部分を見たお客さまは、
「これは売れているのね。私も……」
という反応をするようになります。
また、よくやってしまう間違いですが、
キレイに陳列した商品が売れたからと、
すぐに補充してしまうことです。
その部分は、“売れています”ということの
証明になっていますので、
商品を整えるだけにして、
すぐには補充しない方が良い、ということになります。
難しいかもしれませんが、これが人間の心理なのです。
言葉は悪いのですが、
これを逆手に取った陳列法を考えながら、
あなたのお店を見直してみてください。