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中津村開拓日誌・第2号(1997年8月発行)

夏です。

中津村には、静かだけれどジリジリと音をたてて
太陽の光が降り注いでいます。

川べりには、水遊びを楽しむ家族が
都会から大勢やって来るわけで……。

僕たちは、そんな風景を横目で見ながら、
壊れたクーラーをつけない軽四で街へと買い出しに行くのです。

暑いです。

♪あ~あ~あああああ~あ~♪
と「北の国から」で始まる開拓日誌第二号は……。

太陽がジリジリというのはほんの少しで、台風だらけです。

庭の木は折れるわ。草は昼寝するわ。
テレビは映らんようになるわ。

ちなみにうちは、パーフェクTV(CS衛星放送)を見ています。

うんわぁ~田舎でかっこいいじゃん!と思うのは素人です。
普通の民放が入らないのです。

近くの部落の共同アンテナから線を引いてくるのは、
数十万円かかるので、仕方なく衛星のみを見ているのです。

横道にそれましたが、衛星放送は台風に弱かったのです。
台風の情報が知りたいのに、テレビが映らないのは困ったものです。

閉ざされた世界です。まぁ、いいか。

■トピックス

田舎生活も2ヵ月が過ぎ、村の人との交流も広がり、
少し楽しくなってきたところです。

人びとは本当に親切で、ここに決めて良かったと思います。

何がいいかって、野菜をくれるところです。
モノをもらうと無条件降伏してしまう私たちです。(あさましいか)

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少し前に橋本市(和歌山県)に住むお友だちが遊びに来てくれた時、
たくさんの玉ねぎをいただきました。

これは助かるわい、と思っていたらその一週間後、
近くの人がじゃがいもと玉ねぎをどっさり持って来てくれ、
しばらく買わなくて済むなぁとまた考えていたら……。

その2日後、嫁はんと翔馬が行った
駄菓子屋兼日用雑貨店で店番をしていたおばちゃんが、
人参・キュウリ・トマト・じゃがいも・玉ねぎを
またまたどっさり持って来てくれました。

あちゃ~、野菜を買わなくていいや。

まだまだ続きます。

その4~5日後、散歩から帰って来た時、
バイクに乗った見知らぬおじちゃんに逢い、
“こんにちは”とごあいさつ。
田舎暮らしの基本です。

すると、「あんたら、この家の人?」。

「はい、そうです。引っ越して来ましたので、
よろしくお願いします」
と言うやいなや、「野菜いらんか?」とおじちゃん。

いきなりです。

戸惑いながらも「はぁ、いります」。

畑すぐそこやから、
♪取りに来るならあげましょう。行きましょう、行きましょう。♪
と、桃太郎の家来になってしまう私たち。

おじさんは畑に入り、キュウリだ、ナスだ、人参だ、
とうもろこしだと、次々に取ってくれ、
「また今度、かぼちゃ持っていってあげらぁ。向こうの畑にあるから」
と言ってくれました。

家に帰って、外の水道でいただいた野菜を洗っていると、
やって来ました、おじちゃんが。

さっそくかぼちゃを持って来てくれたのです。
それがまたでかいの。

いやぁ、本当にありがたいことです。

おばちゃんにトマトをいただいた時も、
おじちゃんのかぼちゃの時も、
その前に買ってしまっていたのが、とても悔しい。

ここで教訓。
『買い物前には、まず散歩』

それにしても、初めて逢った人にこれほど親切にされると、
“ドボじて、ドボじて”(いなかっぺ大将より)と涙してしまいます。

まだ少し続きがあります。

しばらくして、うちを建てていただいた不動産屋さんが、
「これ、もらいものやけど」と、
かぼちゃ・ナス・ピーマンを持って来てくれました。

こんなことってあるのです。

いまや我が家は野菜天国です(表現が古すぎる)。

そろそろ我が家も畑を作ろうかと思っているのですが、
この分だと作らない方がいいかなぁ、
と打算してしまう今日この頃です。

忘れていましたが、
木工をしている同士ということで親しくなった方からは、
いんげんやトマト・キュウリ・ナス。

近くのログハウスの方からは、
「きのこを栽培しているお宅からいただいた」という
しめじや手作りパンをいただいたことを
書かないわけにはいきません。

貧困家庭の食卓が、旬の新鮮野菜でとても豊かになりました。

ありがたや、ありがたや、なぁむぅ。

この野菜事件には、いろんなお話がかくされています。

まず、いただいた、もぎたてとうもろこしを
すぐに塩ゆでして食べた時のうまかったこと。
翔馬もキレイに食べてしまいました。
翔馬はとうもろこしが苦手だったのに。

また、もぎたていんげんをゆでて
塩だけで食べることの美味しさも知りました。
甘いのです。

ほんのちょっとの苦味がアクセントになり、
口のなかで広がる何とも形容しがたい豊かな香り。
う~む、美味しんぼ。

とうもろこしのおじちゃんに、
私がゲートボールに誘われたことも書かねば。

「みんな年を取って、ゲートボールをする人が少のうなった」
と私にお声がかかったのです。

このおじちゃんは80歳です。

じゃあ、他の人はいくつだ?

「やったことがないですからねぇ」と話をごまかしましたが、
この分ではいずれしなければならないかも。

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