熱量DJ -熱量はON/OFFじゃなくフェーダーで調整する-
熱量・パッション・情熱。
これらの言葉を聞いて、
暑苦しいと思う人もいれば、一方、
最終的にはこの熱量が何より大事だと言う人もいます。
この熱量、「ある」か「ない」かの単純な話じゃないんじゃないかということを今回考えてみたいと思います。
コンサマトリーとインストルメンタル
最近知ったこの言葉。
「コンサマトリー (Consummatory)」はアメリカの社会学者タルコットパーソンズさんによる造語で、「自己充足的」とか「それ自体が目的化した」という意味。
大学に進学したいから、テストでいい点数を取りたいから勉強するは「インストルメンタル(Instrumental)」。「道具的」という意味で「目的」があっての行動を指します。
一方、コンサマトリー は、学びたいから学ぶ。本を読みたいから読む。それ自体が目的というもの。
職場に引き寄せて例えてみますと、
上司に言われたから。
これをやると評価があがるから。
は、インストルメンタル。
弊社で見れば、かなりの数の職員がインストルメンタルですが、弊社に限らず、世の中の多くはインストルメンタルなんだと思います。
「夢中」と「がんばる」がたかかうと、「夢中」が必ず勝つ
ここで事例を2つほど。
ライト兄弟と陸軍
1903年12月に、かの有名なライト兄弟が世界で初の有人動力飛行に成功しました。当時、世界初飛行をめぐって、アメリカ陸軍が全面的にバックアップしていたサミュエル・ラングレーという人がいました。
ラングレー陣営は、
陸軍省から大きな資金のバックアップがあり、
ハーバード大に在籍し、
スミソニアン博物館で働き、最高の頭脳を持つ人たちとの人脈があった。
かたやライト兄弟は、
資金は、自分たちが経営する自転車屋からの持ちだし、
学歴なし
人脈なし
ですが、結果はご存知のとおり、ライト兄弟に軍配があがります。
IBMとジェスベゾス
e-コマースのプラットフォームをつくる競争においても、圧倒的なブランド、資金、人材、技術を持つIBMが、当時はまだ今ほどのリソースを持っていないジェフベゾス率いるAmazonに負けるわけです。
この2つのエピソードは、ヒト・モノ・カネというリソースが全然劣る側がジャイキリを起こした例ですが、これに限らず世の中のイノベーションの多くは、リソースに恵まれていない人たちが起こしています。
現代のビックテックであるGAFAM(Google・Apple・Facebook・Amazon・Microsoft)も、当時はリソースが乏しかった若者たちが起こしているわけで。
これらはみな、「夢中」がリソースのハンディキャップを超えて、「がんばる」に勝ってしまう事例とも言えます。
「コンサマトリー 」が「インストルメンタル」に勝つ。
全局面でコンサマトリーに夢中になればいいわけではない役所
なので、”上司に認められるから””出世につながるから”「頑張る」ではなく、”この仕事が単純に面白いから”の「夢中」になれ。
組織も人事セクションも上司も、もっと「夢中」になれる職員を育て、評価せよ。
というのが、一般的な話の流れかと思いますが、こと役所は単純にそうではないかもしれません。
まず、役所はその仕事の範囲がめちゃくちゃ多岐にわたります。
税金のセクション、道路などのハードのセクション、福祉もあれば、教育・産業・コミュニティ………などなどです。
さらに、毎年きっちり同じようにやらなければならないルーティン系の業務もあれば、いままでやったことのない新たなチャレンジ系もあります。
あらゆる分野のあらゆる業務、あらゆるタスクで、全職員がコンサマトリー に時間が経つのも忘れ、夢中になり、アクセルを目一杯踏みっぱなしで邁進するというのも、役所的には問題が出てきてしまうかもしれません。
「分野によって」は、解像度が粗すぎる
では、しっかりと間違いのないように業務を遂行する、いわば「守り」の部署/分野と、がんがんトライアルエラーを繰り返し、熱量を持って突進せよという「攻め」の部署/分野に分けてはどうでしょう?
それはそれで全然、解像度が粗すぎる話だと思います。
それぞれの分野といっても、その中にもいろいろあるわけです。
例えば、福祉を例にあげてみましょう。
生活保護、
障がい福祉、
高齢者福祉、
出産・子育て、
健康づくり、
孤独孤立対策
と、めちゃくちゃ多岐にわたります。
こんなに多岐に及ぶ「福祉」をひとくくりにして、「攻め」の部署/分野として位置づけ、「福祉に関する職員はコンサマトリー に夢中になれ!」と号令をかけるのも、ちょっと乱暴じゃないですか。
じゃあ、生活保護は「守り」で、障がい福祉は「攻め」でといったように、分野の中をさらに細分化して、攻めと守りに分けていく。
これでもまだ乱暴な一括りだなと感じます。
分野、部署、業務をどんどん細分化していって、こっちは「しっかり守り」、こっちは「がんがん攻める」とどこかで線を引くということではないんじゃないかなと思うんです。
「コンサマトリー 」と「インストルメンタル」は二項対立なものではない。コンサマトリーな部署や人と、インストルメンタルな部署や人がいるのではなく、どの部署にいようとも、職員一人ひとりが、局面や場面に応じて、コンサマトリーになる時と、そうじゃない時を使い分けていくことが大事なんじゃないないでしょうか。
どんな分野においても、プロジェクトによったり、なんならプロジェクトなんてなくても、その場面や瞬間において、熱量を上げ下げする感覚を持つことができたら、、、
窓口対応業務にしても、冷静に淡々と説明する場合もあれば、少し熱量をあげて説明し理解してもらう場合もあるかもしれません。
通常ルーティン業務は、間違いのないように集中し気をつけながら取り組みますが、熱量をそれほど上げる必要はないかもしれません。
新しいプロジェクトや新たな取り組みの立ち上げなどは、それこそ熱量レベルをがんがんにあげていく。
この文書を書く前は、コンサマトリースイッチ≒熱量スイッチのON /OFFを何回も高速で切り替えることが大事なのかなと思って、書き始めました。
ですが、書いている途中から、スイッチのON/OFFを入れたり切ったりするのではなく、DJがつかうミキサーについているフェーダーでボリュームを調整するように、熱量を調整するイメージの方がしっくりくるのかなと思うようになりました。
熱量が0か100か。
コンサマトリー かインストルメンタルか。
ではなく、場面局面において、熱量のレベルを調整して取り組む。
部署でも、分野でも、プロジェクト単位でもない。
一人ひとりの職員が、自分の中で熱量を調整していく。
インストルメンタルで、再現性に大きく傾いている行政の仕事のあり方。振り子がふれるように、たまに現れるコンサマトリー一辺倒の職員(自戒を超込めまくってます)
そのどちらかではなく、インストルメンタルとコンサマトリーを、案件や局面において、瞬時に切り替えたり、熱量を調整して取り組む力がこれからの公務員にとって、大きなバリューを生むじゃないかなと思います。
9:1でコンサマトリーすぎるワタクシは、少しはインストルメンタルな業務や仕事の仕方にも、フェーダーを調整して向き合っていこうと思います。
お読みいただきありがとうございました。
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