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人口減少化での「第三の道」 -それでもよりよい暮らしを模索して (後編)
これから急激に人口が減少するこの国で、それぞれの地域はどうなっていくのだろうか。座して(地域としての)死を待つしかないのか。それとも日本全体としては縮小するパイの中でのゼロサムな奪い合いかもしれないけれど、減りゆく税収財源を投じながらも地方創生的な取り組みを進めていくのか。はたまた、第三の道があるのかどうか。
福島県いわき市川前町の事例から、この問題について考えていこうという今回の前・中・後編。まだの方は、前編、中編も合わせてお読みください。
人口1,000人ほどで、高齢化率も高く、社会資源にも乏しく、いわき市では珍しく冬の間、雪に閉ざされてしまう川前地区。特に一人暮らし高齢者が冬の間、”フレイルの悪循環”と呼ばれる心身の虚弱化や雪によって隣近所の交流や見守り機能の低下もあいまってしまう「川前-冬の間問題」。
この”冬の間問題"を解決すべく、「冬の間だけ集まって暮らそう」プロジェクトが企画としては立ち上がるも、新型コロナ襲来で、世界も日本も川前も「集まるなんてとんでもない」ということになり頓挫してしまったというのが前回の話。
川前で新たなプロジェクトが爆誕!
2022年10月。前回の中編にも登場された「小川・川前地域包括支援センター」の管理者(※当時)のフジタテさんから連絡があって、コロナ禍以来、久しぶりに話をしました。
私は異動で、川前や川前の冬問題から離れてしまいましたが、フジタテさんは包括支援センターの管理者として、コロナ禍にあっても川前と向き合い続けていました。そんな彼女から、新たなプロジェクトが生まれつつあることを知らされました。
それは、川前に暮らす方々と川前に関わりがある有志が力を合わせて、古民家をリノベーションして、「小さな拠点」をつくり、運営していこうというものでした。
小さな拠点とは?
小さな拠点とは、地域住民の取組や生活サービスを歩いて回れる範囲に集約・確保し、交通ネットワークで繋いでいくことにより、このままではなくなってしまう生活サービスを確保し、住民が引き続き住み続けられる環境を整えていくことが、小さな拠点の目的です。
2015年に、いわき市の総合計画の策定を担当したことがありました。市の総合計画は、その文字どおり、市役所の”総合”計画ですので、それこそ、福祉から教育から、産業から農林水産から環境にまちづくりと、市の取り組みのあらゆる分野/領域についての計画です。
当時は、東日本大震災の対応が超超超メインでした。「復旧」から「復興」へフェーズが切り替わるタイミングだっと記憶しています。
新型コロナなんて、まだ全く存在も、関係もなかったときでしたし、日本全体もいわきも、少子化や人口減少が今よりは切羽詰まっていなかったときでもあったと思います。
その時のいわき市の総合計画にも「小さな拠点」の文言と、なんならイメージ図まで掲載していますので、まだまだなじみのない言葉かもしれませんが、概念やイメージとしては、2015年にはすでにあったことになりますね。
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ヒト・モノ・カネのリソースが乏しくなりがちな中山間地域に、これまでの右肩上がりの時代のように、学校、支所、公民館、図書館、集会所、商業施設、福祉施設とそれぞれに用意するのは、イニシャルコストもその後のランニングコストも全然、費用対効果をとるのが難しい。
だから、バラバラにそれぞれ設けるのではなく、地域の中核となりうる拠点をつくり、そこに、様々な機能を持たせる、入れていく。いわば、中山間地域における、官民を越えたシェアオフィスのようなものですかね?
その器となるベースが小さな拠点というわけです。
古民家をリノベーション!
そんな小さな拠点を、官の役所ではなく、川前の地元の有志のみなさんでNPOを立ち上げ、つくっていこうというプロジェクト。この話を聞いたときには、驚きと、役所にいる者としてちょっと(自分たちが)情けない気持ちと、そして何より大きな大きな尊敬の念が湧きました。
少し話はそれますが、私たちいわき市は今から57年前の1966(昭和41)年に、13の市町村が合併して誕生しました。
たまに想像するんです。もしこの合併がなく、「いわき市川前」ではなく、合併前の「福島県石城郡川前村」だったら。村長がいて、主体性を持つ、一つの独立した地方自治体のままだったら、今の川前村はどんな村で、人々はどんな暮らしをしていたんだろうかと。
一人のいわき市職員として、私たち市の職員はこの60年近く、合併によるスケールメリットを活かしてきたのだろうか?人口減少の見通しがある中、何を残し、何をカットし、それでもいわき市の各地域の暮らしをイメージしながら、覚悟と見通しと戦略を持って適切な税の再配分を展開してきたのだろうか。これまでと今とこれからの職員がどう認識し、どう思っているかはわかりかねますが、少なくとも私は自問自答します、たまに。
話を戻しましょう。
役所はさておき、川前に暮らす人たちが中心となって、NPOを立ち上げ、自分たちで「小さな拠点」をつくり、これからの川前での暮らしを少しでもよりよいものにしていこうとするチャレンジ。
その核となる小さな拠点は、新たに建て、つくるのではなく、ほとんど使われていない「古民家」に手を加える、今風に言えばリノベーションして拠点とするということです。
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今は県外で暮らす方が、年に数回戻ってくる程度ということで、家の一部のスペースを除いて、こころよく貸してくださるそうです。
年明け2月頃からリノベ は始まり、4月現在、基礎的なリノベ は完了しているとのことです。
名前は『おおか』
川前は、大きく3つの地区で構成されています。
①川前
②桶売(おけうり)
③小白井(おじろい)
その3地区の頭文字を並べ替えて『おおか』。
さらには、人口減少化にある川前地域であっても、この小さな拠点を核としながらも、川前での暮らしを少しでも『謳歌』しようという想いも込めたネーミングとなっています。
ふと思いついたので、フジタテさんに軽く伝えてみたところ、いきなり採用されました(笑)。
挑戦とその想い
世代も、職業も違う、みんながみんな川前に住んでいるわけでもない。だけど、これからの川前をなんとかしたい、少しでもよりよい暮らしが送れる川前になることを目指して、思いは一つの”ごちゃまぜ”チームが立ち上がりました。
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すごいし、素敵だなぁと率直に思いました。
役所が主導したわけでもない。
インターンや外部の人が言い出したわけでもない。
若者や地域の長老といった、一部の属性に偏ってるわけでもない。
純粋に川前を愛し、川前の暮らしが少しでもよくなればという想いだけで集まり、結成されたチームです。
応援せずにはいれません。
『おおか』のこれまでの活動を見てみましょう。
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2月下旬には立ち上げたNPOも認証され、登記も完了しました。
5月には早速、キックオフのイベントも行うようです。
あくまで自然体。
あくまで手弁当。
一人の強力なリーダーシップではなく、老若男女の想いと力を合わせながら進んでいく。『おおか』のSNSを見ていると、そんな姿が日々伝わってきます。
【おおかのSNS】
Facebook https://www.facebook.com/kawamae.ooca
Instagram https://www.instagram.com/iwaki_iryo/?hl=ja
人口減少化でも「よりよく暮らす」を諦めないために
私は今、地域医療課という部署にいます。医師不足ないわきで、医療の提供体制をこれからも維持できるように、医師をはじめ、多くの関係機関と力を合わせつつ、取り組みを展開していくところです。
医療機関も薬局もない川前地域ですが、医師の皆さんに、小さな拠点『おおか』に一緒に行きませんかと声をかけてみようと思います。
「おおか」の近くには、川前の地ビールの醸造所もできるそうです。
まずは手始めに、行きやすい夏から秋にかけて、かつて古民家であった「おおか」でゆっくりのんびり地ビールでも飲みながら、川前で採れる旬の食材に舌鼓を打てたら最高です。
夜は地域の皆さんと交流し、川前にある鬼ヶ城などで泊まって、翌日、医師の先生に、川前の人向けに健康講話や皆さんが健康で気になることに答えてもらう時間を持てたらと、今から妄想しています。
それもこれも、「おおか」という小さいながらも拠点ができたから生まれる発想ですし、具体に医師の先生方に働きかけることができるのです。
医療、介護だけでなく、いろいろな分野/領域や世代の皆さんが、この拠点をきっかけに集まったり、出会ったり、交流したり、企画したりすることが、人口減少化においても、よりよい暮らしを謳歌することにつながると思うのです。
そして、川前の、『おおか』の皆さんの気持ちやアクションが折れてしまうことは、川前地域の挫折やつまづきだけでなく、いつかは、私や皆さんのお住まいの地域の将来にもつながっていると思うんです。
遠い地域、遠い未来のことではなないんだと思うんです。
体は一つしかありませんが、お互いに交流し、お互いに応援しあっていく。
川前の素敵な想いとチャレンジを応援しながら、皆さんもご自分の地域のこと、遠くない将来のことに少し思いを馳せてみませんか。(終わり)
こんな素敵な川前の小さな拠点『おおか』が現在クラウドファンディングに挑戦中です。しかも、なんとなんと残りあと4日!!!!
一度、プロジェクトページだけでもご覧ください。お願いしまーす。
お読みいただきありがとうございました。
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