【医療従事者向け】武漢最前線のドクター(7) 楊萌さん(後編):間近でじっくり観察することの大切さ
肺炎は長期化する傾向。摂食量が少ないと低カリウム、低タンパク血症が起こりやすく、栄養サポートが重要
ここ数日で仕事の効率が上がってきていて、病室に入ると絶え間なく働き、毎日大汗をかきます。冗談で「私はもう『おむつ』もしません。汗でぜんぶ出ちゃうから」と言うのですが、みんな同じです。みんなこのリズムに慣れましたし、日中は昼食は取らずに、午後3時まで働いたあとに夕食を食べています。
今回最も驚いたのは、私の想像をはるかに超えて患者が多いことでした。患者の肺炎の経過は比較的長く、または遷延性の変化があります。SARSの患者は急激に進展していましたが、今回の肺炎患者は症状が軽快する人、重症化する人の両方の可能性があります。
ある高齢女性では、入院時の血圧が低く、詳しく病歴を聞いたところ、一日に200mlのお粥しか食べられず、尿量は300〜400ml、血圧は80/50mmHgぐらいしかありませんでした。私たちは毎日2500mlの補液をしました。やがて血圧は140/90mmHgぐらいまで上昇し、精神状態も改善され、元気に良くなりました。実際、臨床ではこのような方がとても多く、患者の栄養状況に注目することで、多くの人が栄養療法により回復に向かいます。
また患者のカリウムにも注目する必要があります。例えば、ある重症患者は以前にステロイドを使用したことがあるか、または現在ステロイドを服用している場合は、低カリウム血症を伴うことがあります。またある重症患者には合併症があります。例えば糖尿病。糖尿病患者が新型コロナウイルスに感染すれば、インスリン抵抗性が現れ、血糖値が上がります。私たちはインスリンを使用しますが、インスリンを使用すれば、低カリウム血症を引き起こします。低カリウム血症は内環境の紊乱を引き起こすので、代謝性アルカローシスになることもあります。
これらの臨床で起こる現象に対して、私たちは観察を行った後、いくつかの結論を出しました。新型コロナウイルスによる肺炎は、消化管に対する影響が比較的深刻で、食欲がなく、摂食が少なくなって、下痢の症状が現れ、低カリウム血症や低タンパク血症のような症状を引き起こします。
腸内フローラの調整や、カリウム補充の治療が必要であり、重篤な下痢の場合には短期間の非経口的栄養が必要です。経腸栄養に耐えられるなら、経腸栄養にすることもあります。通常、病院の経腸栄養剤は食感があまりよくないので、条件の合う人には、市販されている腸内栄養剤を家族に買ってきてもらうこともあります。
医療チームがシームレスに繋がり、重要なポイントを共有
ここ最近、私たちは効率的に動くことができているのはチーム全体の協力がポイントだと思います。
私たちは通常病室に入る前にすべての患者の状況をもう一度「繰り返し」確認します。以前は基本的にカルテのデータに頼っていました。今はデータは基本的に頭の中にすべて入れています。チームワークでのいちばん大事なこと、それは交代制勤務による業務引き継ぎの記録です。これは非常に重要です。私たちはExcelでまとめ、毎回の引き継ぎではすべて重点を定め、重症患者と重篤患者を識別し、どのような患者の病状に変化があるか記します。なぜなら、今回の肺炎患者の特徴は、比較的に安定した状態から突然重症化、または重篤な状態に発展することがあり、サイトカインストームが多臓器損害を引き起こす以外にも、凝固・線溶系に影響を及ぼすことから、出血や肺塞栓症を引き起こす可能性があります。変化の発生時間は比較的速いため、引き継ぎ時に医師は次の担当医師と十分な意思疎通する必要があります。難しい問題は一緒に考え、分析・検討します。
現在、中日友好病院の医療チームは、呼吸器・ICU科以外に他科の医師も来ているので、私たちは患者の各種問題を充分に討論することができます。日々の多科カンファレンスがあります。
今日は「方舱医院」(いわゆる「コンテナ病院」、野戦病院、臨時病院とも訳されます)から循環器医の任景怡ドクターに来ていただき、ウイルス性心筋炎の可能性のある患者を診ていただきました。こうした交流は、いずれも学科間の交流を促進して、医師の素養を高め、修養を積むことができます。また院内ケータイ、通信設備を充分に利用し、隔離病棟内から各患者の情況をリアルタイムに送信し、外部の医師と共に最適な治療プランを協議しています。内応外合の共同作戦と言えますね。
現在のこの協力モデルも各大病院がみな採用しているもので、私たちは一刻も早く一分も無駄にせずに隔離エリア内の限られた時間を有効に使うことです。防護マスクの効果は4時間しかありません。「院内感染ゼロ」をするために必ず交換します。
現在、私たちは基本的に3時間に1回外に出ることができ、つまりこの3時間で患者をすべて観察し、整理してまとめ、そして隔離エリア内の看護師と十分にコミュニケーションをとって、業務引き継ぎをしなければなりません。
看護師たちも中日友好病院の看護チームです。中日病院の看護モデルがそのままここに来ているので、看護面でも非常に効率的な仕事ができています。
仕事がどれだけ大変かと聞かれると、自分が一番大変だとは決して思いません。ある日、同僚に何キロ痩せたの?と言われ、帰って自分で測ったら2キロ痩せていました。先日のカンファレンスでは、曹院長はこの1ヵ月間で5キロ以上痩せたと言っていました。他にも毎日第一線で忙しく動き、なかなか食事もできない人たちがいます。リーダーは皆先頭に立っています。この「持久戦」で、私たちみな意欲に満ちています。必ず最後まで堅持し、勝利を迎えます。
武漢のみなさん、全国のみなさんがマスクを外して、気持ちよく呼吸できる日は遠くありません。そのとき私たちは武漢大学の珞珈山桜の桜並木の下で、ふとお会いできるかもしれませんね。
【一般の方へ】
体調が悪いときは、外出を控え、学校や会社に連絡して(これほど日本で休みを取りやすいチャンスはありません)、自分でも医療が必要と考えられる場合、近くの医療機関の相談窓口に連絡をしてみてください。