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水曜は-21℃。僕が生きる極寒と僕が感じるあたたかな幸福

話を始める前に、僕の性別について。
僕は「女性」だ。
一人称が「僕」と「私」の時があるので
混乱させて申し訳ない。

エントランスの扉を開く。
今日の気温は-11℃。
風もなく、太陽も出ている。
いい天気だ。

僕の足のあいだから出てきた
小さな人と歩く

保育園までは1.3㎞だ。

この街には雪のベールがかかっている。
汚いごみも、車道の穴ポッドホールも、
薬物中毒者も隠してしまう。

保育園に着いた。
小さな人にさよならを言って、
僕は家まで走る。

風が出てきた。頭が痛い。
かき氷を食べた時の痛みブレインフリーズ
同じ種類の痛みだ。

僕はこの街に来て
「極寒は痛い」と
からだで学んだ。

エントランスの扉を開け、
家の中に入る。
はあはあと、呼吸が乱れている。
雪用の重いブーツを乱暴に脱ぐ。

僕のからだが緩む。
頬が唇が、指先が
じわーとあたたまって、緩む。

(さあ、今日も寒さで死なずにすんだ)
湯船にお湯をためて本を読もう。

僕はもうすぐこの街を離れる。

気まぐれなバスタイム
ブルジョワな無職生活
団らんのアイスフィッシング
不埒なカフェじかん

僕がこの街で見つけた
あたたかな幸福とは
しばしお別れ。


水曜日は最低気温が-21℃…
お風呂に入って本でも読もうか
僕がスケートを練習したあと
誰かのバラクラバ
夕暮れ時の屋外スケート場
ホッケーのゴールネットの氷
僕のスケートシューズ
アイスフィッシングの小屋
僕が釣ったさかな
家の前
僕がいま読んでいる本
ね、どこまで読んだ?
僕はもう真ん中までいったよ


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