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くり返しの中のらせん

「あ〜、もうそれ知ってる。」って思うこと、「たったそれだけ?」なこと、当たり前にそばにあるもの。そんなこんなとわざわざ向き合って、その裏側や奥行き、背景を子どもたちと共に味わうことを仕事としています。

こうして語るのはとても簡単なのですが、実際に授業をしていると、空振りすることも、準備不足を反省することも多いです。そこを目指すのが仕事と言ったほうが、現実に促しているのかもしれません。

でも、ことば通りのことが身を貫いて再現できたときには、震えるほど感動します。

それは、自分よくやった〜という感動ではなくて、この世の美しさや完全さに対する感動です。ものすごい秘密を打ち明けてもらってありがたいなぁ・・・というような、そんな感動です。

小さい子たちに授業をする機会もなかったら、きっと素通りしていたことも多いでしょう。今日はその一例を紹介してみます。

3〜4週間かけて味わう

一学期の間、一年生に「数」の授業をしました。1〜12までの数を、3〜4週間くらいかけてみていきます。

え、たったそれだけ!?な内容ですよね。わたしも、最初は自分で心配になるくらいでした。

たとえば、

 1 ●
 2 ●●
 3 ●●●
 4 ●●●●
 5 ●●●●●
 6 ●●●●●●
 7 ●●●●●●●
 8 ●●●●●●●●
 9 ●●●●●●●●●
10●●●●●●●●●●

こんなごくごく普通の表にも、何日かかけて、いろんな角度から取り組みました。たったこれっぽちの表でも、育むものはたくさんあるんです。

ノートにこれを描いてもらうときには、いろいろな意図を込めました。

1〜5

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まずは「1」から順番に。と見せかけて、数字を割り振ったあとは、「5」の●から描いてもらいました。

5ってどんな数? → 片手の指の数。10の半分。

というわけで、「半分はこのあたり」と目星をつけて●を描きはじめます。

子どもにとっては「1」からはじめてどんどん増えていくのが楽しいと思いますが、ここではあえて「与えられているものをうまく使う」ひいては「限りある資源をきれいに分配する」みたいな感覚の種まきとして。

10の半分である「5」を描き終わったら、あとは階段を降りるように、列をそろえながら描いてもらいます。

仕組みとしては「見ればわかるよ」って言いたくなるような簡単さですね。

でも、いざ描く段になると、きれいに描くためには、それなりの意識が必要なことがわかってきます。特に小さい子にとっては、導かれないと意識するのが難しい部分です。

美しい仕事は、高い意識や労力に支えられている

そんなことを、ことばで教えるまでもなく、身をもって感じてもらえたらと思います。

6〜10

後半戦は、5より大きい数!

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ということで、まずは5個ずつ描いてもらいます。

 6 ●●●●●
 7 ●●●●●
 8 ●●●●●
 9 ●●●●●
10●●●●●

「数える」の原点である指(手)に寄り添って、5より大きい=「片手がいっぱいになる」という感覚になってもらうためです。

ここまで準備ができたら、

 6 ●●●●● ●
 7 ●●●●● ●●
 8 ●●●●● ●●●
 9 ●●●●● ●●●●
10●●●●● ●●●●●

1,2,3,4,5!勢いよく?足してもらって完成。

1〜5の中でしたことが、発展した形で繰り返されています。そんなことにうっすら気がついてもらえたら、もうけものです◎

与えすぎないことで生まれるもの

これまで、1〜100の中に「らせん」があるとは感じていましたが、1〜10の中にもそれがあるなんて、今回の授業がなければほとんど素通りしてしまっていた事実です。

発展した形で繰り返されている

これって、数も、人の一生も、植物の成長も、人類の進化も、暦も、星の運行も、一緒だと思いませんか?

やっぱり、低学年のうちは与えすぎなくて(ゆっくりで)いいんだな。いやむしろ、与えすぎないほうがいい!と思いました。その分、やってみること(アウトプット)に時間を割いて、その子自身で身体知を稼いでもらいたいです。

わたしも「くり返しの中にあるらせん」を探す目で、毎日を送り迎えたいと思います。

サポートしていただけたら、毛糸を買って何か編みます☆彡