漆黒のヴィランズのシナリオ構造
最初に、これはネタバレ込みの感想であるため漆黒のヴィランズ本編(5,0)を終了している人向けの話です。
FF14漆黒のヴィランズはMMOのみならず国産RPGの中でも指折り物語だ。
なにせこの物語はオチが素晴らしいだけではなく導入の面白さから、そこに至るまでの過程、全てが素晴らしい。
最後まで読めば面白いというシナリオはいくつも存在している。それらからも傑作と呼ばれるシナリオは多い。
だが、この漆黒のヴィランズの恐ろしいところは最初から最後まで面白さを維持しつつ、最後の最後に尻切れトンボになることもなく最高潮を持ってこれることである。
これは類まれなるセンスと緻密な計算の上に成り立っている職人技のようなシナリオだ。
何故、このシナリオはここまで素晴らしいのか?
素人なりに考察してみた。
もし、この漆黒のヴィランズをプレイされておらず、ここを覗く奇特な方がおられるのならば、是非ともFF14本編をプレイして欲しい。
MMORPGへの先入観や月額課金に面食らう人もいるかもしれないが、そんな貴方に、『ファイナルファンタジーXIVフリートライアル』というものが存在する。
つまり無料である。
しかも名作と名高い『蒼天のイシュガルド』までプレイすることが出来る。
ここまでプレイするだけでもFF14のシナリオの質の高さを実感出来ると思うので是非プレイしてみて欲しい。
さて、本題のFF14漆黒のヴィランズのシナリオ構造の話をしよう。
まずこのシナリオを卓越している点としては情報の扱い方だろう。
第一世界という異世界が舞台は、これまで舞台の中心になってきたエオルゼアから離れた舞台だ。
そういった舞台で物語が展開されると本筋から離れた外伝的な印象をプレイヤーに与えやすい。
だが、この物語は素晴らしいストーリーラインにアシエンの真実といったこれまでの謎の革新を絡めることによって、脇道にそれていくではなくて、本筋に迫っているという印象を与えることに成功している。
例えば、基本的なストーリーラインとしては
1.エリア内にいる大罪喰いを探す
2.色々冒険をして、大罪喰いを倒す
3.そのエリアの夜を取り戻す
というのが漆黒の基本的な物語だ。
漆黒の物語は導入から衝撃的だ。闇がなくなった光に満たされた滅びゆく世界というシチュエーションが目新しく興味を引く。(FF3のファンならニヤリともするところだろう)
最初は、この光に満ちた世界に夜を取り戻すという展開でプレイヤーは達成感を得ることになる。最初は目新しく物語への興味を引く展開なのだが、通常、これを五度も繰り返すと「あと3つあるのね……」といった一種の作業感を感じるようになってしまう。
漆黒のヴィランズの巧みなところの1つはここで展開に慣れてきただろうラケティカ大森林編でヒカセンが罪喰い化してきているという爆弾を投入することだ。
同じ展開にダレる前に新しい爆弾を投入することで物語に新しい緊張感を付与することに成功している。
またここで目を引くのがそれまで敵だったアシエンであるエメトセルクと共に旅することになるという展開だろう。
その展開にプレイヤーは困惑するし、物語がどう進むのか予想がつかなくなる。
この2つの要素を追加することで物語への興味を大きくかきたたせ、物語へ没頭していくようになっている。
漆黒の物語を章分けするなら
第一世界突入
↓
ユールモアor旅立ちの宿(ここサーバーの負荷分担とかも考えられていて、職人技)
↓
レイクランド編
↓
イルメグ編
↓
ラケティカ大森林編
↓
アム・アレーン編
↓
ユールモア編
↓
テンペスト編
どの編でも印象に残る名シーンがあるのが素晴らしい。
例をあげるならば
・テスリーンの死と顛末
知ったキャラクターが罪喰い化するという展開で、罪喰いという驚異へのプレイヤーへの理解させると同時に、それがボス化することでダークファンタジー特有の悲壮感を感じさせ物語へと没入させるきっかけになる。
・新しい妖精王の誕生とユールモア軍への反撃
それまで漆黒のマスコットキャラクターに近い存在だったフェオ=ウルが新しい妖精王になり、痛快(狂気めいているのもハイファンタジーらしくてポイント高い)な反撃をする。
最後にエメトセルクが合流するというこれまでに無い展開で、プレイヤーを驚かせる。
・ヒカセンが罪喰い化しはじめているという伏線を張りながら、ハイデリンとゾディアークの真実が語られアシエンの目的が明確になる。
ヤ・シュトラが盲目になったのとか、そんな深謀遠慮な伏線だったの?という驚きもあるし、エメトセルクが協力的であることから単純な悪であるとプレイヤーと断定しづらくなる。
ハイデリンとゾディアークの関係など普通ならトリネタに使いそうな話を中盤に持ってくることで、物語への求心力を高め、外伝感が薄まる。
・サンクレッドとランジードの戦い、ミンフィリアとの別れとリーンの誕生
シンプルに熱いシーン。紅蓮のパッチで追加されたロールプレイというシステムを上手く落とし込んでいて、暁の仲間感を高めることにも成功している。
ここでヒカセンの限界が近づいてきていることも示唆して、次の展開への興味を引く。
・ユールモア決戦
それまで関わってきた全ての人が結集して巨大タロースを作るという展開。
うしおととらでいうところの『お前たちの旅は無駄ではなかった』を地でいく王道熱血展開で、巨悪(ヴァウスリー)へと立ち向かう。
ここまでならば王道展開だけれど、最後にヒカセンが限界を迎え、グラハの自己犠牲によって事なきを得る……かと思ったら、エメトセルクの妨害によって、それが失敗に終わり、夜がまたなくなってしまう。
それまで世界を救ってきた筈のヒカセンがほぼ罪喰いとなり、世界を脅かす者になる。この構図がとっても面白い。
『光をもたらす者』というクエスト名、天才か……。
・最終決戦
時限爆弾状態になったヒカセンがエメトセルクとの最後の邂逅、アシエン達の世界が再現された場所で、その核心へと迫る。
最高のラストバトル導入から素晴らしいEDまでもう語る必要もないだろう。
漆黒のヴィランズは緻密な計算と力強い腕力の両方によって構成されていて、筆者はプレイ当時2週間ほどしゅごい以外の言葉を失う状態だった。
2週間ぐらいまともな感想を書けなかったほどだ。
筆者は小学生の時にFF5から初めてFF4~10、12~15をプレイしているそれなりのFFファンだと思うが漆黒のヴィランズは幼年期にプレイし一種の神格化されていたFF4-6の領域に手を伸ばすほどの衝撃を受けた作品だ。
この素晴らしい体験をアラサーになって出来たことを嬉しく思う。
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