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テクノロジーを俯瞰するエクスポネンシャル(指数関数的)思考のススメ

人々は、往々にして、未来に起こるテクノロジーの変化を低く見積もる傾向があります。一番上の画像にあるように、人はこれから起こる進化を線形的で直線的な進化を想像しがちです。ところが実際にテクノロジーで起こる変化は指数関数的に起こります。

テクノロジーは指数関数的(エクスポネンシャル)に成長する

古くは、ムーアの法則(Moore's law)とは、インテル創業者の一人であるゴードン・ムーアが、1965年に自らの論文上で唱えた「半導体の集積率は18か月で2倍になる」という半導体業界の経験則などがあります。簡単に言えば、半導体の同じ機能・性能が18ヶ月で半分のコストで手に入るようになる、ということです。18ヶ月で半分のコストというだけではピンと来ないかもしれませんが、これが10年間というスパンで継続されると、半導体の価格はおよそ100分の1まで低減します。ということは、半導体にかかるコストというのは、10年間でほとんど無視できるほどまで小さくなる、ということを意味しています。

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これが線形的な変化と指数関数的な変化の違いです。私たちが手にするテクノロジー、とくに情報テクノロジーは今この瞬間も大きな進化を続けています。スマートフォン、GoogleやAmazonが提供するスマートスピーカー、音声認識によるバーチャルアシスタントなど、10年前に今のようなことが現実的に訪れると予想できた人はどれくらいいたでしょうか?

*参考:破壊的進化が起こるプロセスはこちらを参照してください。

このようなテクノロジーの変化を専門的に研究しているのが、2008年に米シリコンバーで創設された研究教育機関のシンギュラリティ・ユニバーシティです。そこでは、指数関数的(エクスポネンシャル)に加速するテクノロジーにいかに向き合うか、先回りして取り組むかということを昼夜を問わず議論されています。

テクノロジーを俯瞰するエクスポネンシャル思考とは

そのシンギュラリティ・ユニバーシティで中心的に提唱しているのが「エクスポネンシャル思考」です。これは、GoogleやFacebookといった世界を席巻するジャイアント企業、ゲームチェンジを促すイーロン・マスクやソフトバンクの孫正義など、世界のトップリーダーが見据える考え方の根底です。

しかしこの思考や、一部の大企業の経営者だけが理解しておくべきものではありません。未来を創造していく私たちすべてが、さらに変化の加速する時代で大きな価値を発揮していくために、「エクスポネンシャル思考」を身につけておく必要があります。

テクノロジーが指数関数的に変化をしていくという基本的な考え方を理解したあとは、具体的にはどのようなテクノロジーが重要なのかを理解しておく必要があります。様々なテクノロジーの中でも、とくに社会基盤や産業基盤に大きな変化をもたらすテクノロジーをエクスポネンシャル・テクノロジーと呼び、それらの集合はメガトレンドと呼ばれたりします。

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これらのテクノロジーがこれから10年、30年というスパンでどのように変化をしていくのかを万遍なく俯瞰できていることが重要です。実は、3年後にどうなるかをピタリと予想するのは難しいのですが、「30年後にはきっとこうなっているだろう」というような大きな予想は、かえって見通しがしやすいものなのです。

28のエクスポネンシャル・テクノロジー

いくつかのエクスポネンシャル・テクノロジーを紹介していきたいと思います。

自動運転は、みなさんも日常的にニュースを目にすることが多くなっていると思います。既に高速道路の運転で実用化が始まっていたり、運転支援という形では多くの自動車に取り入れられています。機械によるフル自動運転もレーシングサーキットなどを走行する分には、全く問題の無いレベルまで進化が進んでいます。実用化に向けての最後の課題は、街なかなどの細かな情報や、予想のしにくい状況下における安全の保証ですが、これもエクスポネンシャル思考で考えていけば、解決まで時間の問題だと言えるでしょう。

AR(拡張現実)/VR(バーチャルリアリティ)という分野も急速に進化がするんでいます。先日、マイクロソフトが、Microsoft Meshという新しい複合現実(Mixed Reality)プラットフォームを発表しました。Microsoft Mesh のコンセプト動画の中では、物理的に離れたチームがより良いコラボレーションを実現できるようなバーチャルミーティング空間や、参加者が自分のアバター(自分の分身)を通してミーティング参加者とコミュニケーションができたり、ホロポーテーション(立体的なホログラム)によってより身近に参加者を感じられるようになります。映画「マイノリティ・レポート」の世界が実現されるのも、そう遠くはないでしょう。

人工知能(AI)は、エクスポネンシャル・テクノロジーの中でも中心的、基礎的な要素と考えられます。日本ではAIブームのように取り上げられていますが、AIによる進化はまだまだ入り口です。AIという言葉そのものは既にブームを過ぎていますが、AIという大きな括りの中には広範な専門分野が存在していますが、いまはそれらの各専門分野における具体的な進化が注目をされています。世界的なリサーチ会社ガートナーが、テクノロジー・ハイプ・サイクルというテクノロジーのトレンドレポートを毎年発表していますが、そのAI版というも存在しています。その中では、AIという広い言葉ではなく、「Knowledge Graphs」「Augmented Intelligence」「Generative AI」というように、AIにおける個別具体的な分野がどのように進化していくか、とうことが語られているのです。

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脳とコンピューターの結合という刺激的な分野のお話も紹介させてください。英語では、Brain-computer interfaceと呼ばれていますが、簡単に言うと、脳とコンピューターをつなげ、脳の機能を拡張させようという取り組みです。SFの世界のような夢物語を想像する方もいるかもしれませんが、実際に、起業家のイーロン・マスクが、Neuralinkという会社を設立し、実証実験を開始しています。また、最先端のアカデミック分野の研究では、脳に電気信号を送ることで痴呆症を改善する可能性について研究成果が出始めたりしています。全ての人がインターネットと脳をつなげて、何ヶ国語でも勉強せずに話せるようになる、というのはちょっと先かもしれませんが、脳への電気的な刺激をコントロールすることで脳の機能障害が回復したり、集中力やリラックス効果を高めるようなことは、近いうちに現実的になると考えられるでしょう。

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10%ではなく10倍の成長を考えるムーンショット

「ムーンショット」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?ムーンショット(moonshot)とは、非常に困難で独創的だが、実現すれば大きなインパクトをもたらしイノベーションを生む、壮大な計画や挑戦、目標のことです。アメリカの第35代大統領ジョン・F・ケネディによる、アポロ計画を開始するきっかけとなった1961年5月25日のスピーチの「月に向けたロケットの打ち上げ(ムーンショット)」が、その由来です。

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日本でも、内閣府がムーンショット型研究開発制度と呼ばれる、我が国発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来技術の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発(ムーンショット)を推進する新たな制度を推進しています。

ムーンショット目標
1.2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現
2.2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現
3.2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現
4.2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現
5.2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出
6.2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現
7.2040年までに、主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現

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ムーンショット的な発想で大切なのは、「10%の成長」ではなく、「10倍の成長」を考えるということです。「10%の成長」を考える場合、身近な改善などに目が行きがちですが、「10倍の成長」を実現しようとすると「根本的なやり方や考え方を変える」必要があります。これがムーンショットの威力です。

私の会社の社外取締役で、ソニーAI、ソニーコンピュータサイエンス研究所の社長・所長である北野宏明氏は、「2050年までに、サッカー・ワールドカップ優勝チームに完全自律型のヒューマノイドロボットのチームで勝利する」という野心的なゴールを設定しており、ムーンショット型アプローチの別のメリットについて、以下のようにコメントをしています。

「(ムーンショット型アプローチの)本当の目標は、定めた目標に行きつく過程で、様々な技術が生まれ、その技術が世の中に還元され、そして世の中が変わることなのです。これがMoonshot型のアプローチにある、もう1つの大きな効果です」
* 出典:北野宏明「Moonshot型の研究アプローチの本質とは」SONYウェブページ [https://www.sony.co.jp/SonyInfo/Jobs/singularityu/interview03/

「野心的な変革目標(MTP)」を掲げる

このムーンショットのような挑戦的な目標を掲げていくために、シンギュラリティ・ユニバーシティが提唱しているのが「MTP(Massive Transformative Purpose)」と名付けた野心的な変革目標です。MTPは組織の核となるもので、組織の目標を示しています。

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例えば、TEDは「価値あるアイデアを広める」グーグルは「世界中の情報を整理する」、Xプライズ財団は「人類にとって有益な飛躍的技術革新を実現する」を掲げています。既存の大企業の中でも、コカ・コーラは「世界中をリフレッシュさせる」という、非常に野心的で変革を求める具体的な目標を掲げ、飛躍型企業に生まれ変わっています。

MTPは「今やっていること」ではなく、「これから達成しようと志していること」です。そして、組織の中の人々だけでなく、外部の人々の心や想像力、野心を掻き立てるものでもあるのです。

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MTPを創っていくうえで、ガイドとなるのが上のフレームワークです。1つ目に、解決したい大きな問題を考えます。2つ目に、どのようなエクスポネンシャル・テクノロジーを活用してその問題を解くのかを考えます。3つ目に、その結果として、今日では不可能と思われるような大胆なアイディアや解決策を考えます。このようにして、世界に途方もない変化をもたらす目標を掲げていきます。

あなたの「野心的な変革目標(MTP)」を設定する!

社会課題の解決といった自社の利益を超える壮大なMTPを設定することで、より大きな課題に向き合い、その魅力的な目標に向かって多くの社内外の人が集まってきます。また、その野心的な変革目標によって、組織や個人が大きな成長を遂げることができます。

言い換えれば、組織でも個人でも、このような野心的な変革目標(MTP)を掲げることによって、大きな成長の源泉を創っていくことができるわけです。コーチングで「現状の外側のゴールを設定する」とは、まさにこのMTPを掲げていくような感覚に近いと考えています。

私自身も、経営者として、コーチングの自己適用や社内外のパートナーへこのような考え方を広めていくことで、イノベーションと自己革新を自ら体現し、また同じ志を持つ企業や人を支援しています。ご興味ある方はぜひご連絡ください。

参考書籍:



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