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養生訓 巻第五 二便
一
飢えては、坐して小便し、飽きては、立ちて小便すべし。
二
二便は早く通じて去るべし。
こらえるは、害あり。
もしも、不意に、いそがしき事出来ては、二便を去るべきいとまなし。
小便を久しく忍べば、たちまち小便ふさがりて、通ぜざる病となる事あり。
是れを轉脬と云う。
又、痳となる。
大便をしばしば忍べば、氣痔となる。
又、大便をつとめて努力すべからず。
氣上り、目あしく、心さわぐ。
害多し。
自然に任すべし。
只、津液を生じ、身體をうるおし、腸胃の氣をめぐらす薬をのむべし。
麻仁、胡麻、杏仁、桃仁など食うべし。
秘結する食物、糕、柿、芥子など禁じてくらうべからず。
大便、秘するは、大なる害なし。
小便久しく秘するは、危うし。
三
常に大便秘結する人は、毎日厠にのぼり、努力せずして、成るべきほどは、少しづつ通利すべし。
此の如くすれば、久しく秘結せず。
四
日月星辰北極神廟に向いて、大小便すべからず。
又、日月のてらす地に小便すべからず。
凡そ、天神、地祇、人鬼おそるべし。
あなどるべからず。