治療家のための“伝わる”英語勉強法【2】第8回 トレーナー・治療家専門英語トレーニングの内容 その1
文:斎藤大介
前回は日本で一人でできる勉強について紹介しました。そのなかでも少し触れたフィリピン留学について、私が企画し、現地の3D ACADEMYで行っている治療家専用のプログラムで実際にどんなことをするのか、トレーニング内容を4回にわたってご紹介します。
① 専用のボキャブラリー
専門的な英語力を高めるうえで一番重要なのは語彙(ボキャブラリー)です。これがないとコミュニケーションがスムーズにいきません。例えば「肝臓」と言いたい場合に「Liver」という単語が出てこないと、「内臓の一つで、このあたりにあって……」などと説明しなければならず、患者さんは肝臓の形や位置、機能などが分からないためとても大変です。その場でネット検索することもできますが、コミュニケーションの流れが非常に悪くなります。
ただ、患者さんと1対1で施術するような場合、筋肉名などを細かく覚える必要はありません。なぜなら患者さんも筋肉の名前などは知らないからです。上腕二頭筋(Biceps)などは誰でも知っているので覚えておくべき単語ですが、例えば大臀筋(Gluteus maximus)はButt(お尻。少し砕けた表現ですが、多くの人が使用します)、下腿後面はCuff(ふくらはぎ)、下腿前面はShin(すね)などのように、部位の一般的な名称を覚えておくことのほうが重要です。理由は、日本人と同じで一般の人は細かい筋肉名を知らないからです。
そのほかに必要なのは、例えば靭帯(Ligament)、腱(Tendon)、主要な内臓の名前、関節名、病名などです。
大事なのは、学校でしか使わないような難しく実用性のない言葉を除外し、上記のように目指すレベルに合わせて優先して覚えるべき言葉に絞って勉強することです。
私が企画したプログラムでは、3D ACADEMY に在籍している元看護師の英語講師の協力を得て、いろいろな書籍やインターネットを参考に私がリストアップした語彙リストのなかから、目標レベルに合わせて選んだ言葉を集中的に勉強していきます。
語彙を覚える以外に、以下のようなトレーニングも可能です。
・音読することで単語の発音を学ぶ。
→特別な単語は発音も難しいものが多く、「伝える」ためには、発音も重要。
・単語を覚えたら、その言葉を使って文を作成する。
→その単語に必要な動詞や関連語も覚えることができ、より実践的な勉強になる。
②日記
実践的な「話す」勉強はとても大事ですが、英文で書けないことは話すこともできません。また、文法や単語のスペルを身につけないとメールが打てませんし、LINEなどの素早いやりとりでとても不便します。
日記を書いて添削してもらうという勉強は、文法、ボキャブラリー、表現方法が身につくとてもよいトレーニング方法です。日記の添削は一人ではできない勉強で、業者に依頼するのもそれなりの料金がかかります。毎日のマンツーマンレッスンの最初の10分程度を使って行うことで、効率よく勉強ができます。
勉強方法をひと工夫して、毎日テーマを決めて文章を書くことも非常に有効なトレーニングになります。例えば、毎日の日記に加えて週に1回、「将来の夢」「趣味」「行ってみたい国」などのシンプルなものから、「鍼がなぜ身体にとって有効なのか?」「白血球の働き」「ベンチプレスの際の身体の使い方」など、少し難しめのお題まで、テーマを決めて文章を書いてみるのもよいと思います。継続して繰り返していくと非常に効果を実感できる有効なトレーニングです。
③ 参考書籍
英語学習者におすすめの本をご紹介します。英語に関連する本を読むことはモチベーションを保つためや、勉強の合間の息抜きとして非常に有効です。また、人それぞれいろいろな勉強法があるので、とても参考になるでしょう。
・堀江貴文『英語の多動力』(DHC)
英語を勉強する必要性、英語の学習方法、グローバルな考え方について書かれています。ほかにも、著者以外の数人の英語関係者による英語の学習の経験談や勉強法などを掲載していて、英語を勉強するうえでモチベーションを上げることのできるオススメの本です。
・蒼木啓『37歳 半年でIELTS 6.5 42歳 英国MBA留学を実現した英語勉強法』
タイトルの通り歳という年齢で留学を果たした著者が、フィリピン留学を活用した英語勉強の方法が書かれています。高校以来英語から長く離れ、仕事も多忙を極め、勉強する時間も体力も限られている、著者と同世代の方に非常に参考になる本です。
・高城剛『21世紀の英会話』(マガジンハウス)
世界中を仕事場にする著者が、日本人の英会話力が低い原因を探っていくなかで気づいた最も効率的でコストのかからない学習法について書かれています。私が個人的に大好きな著者で、英会話のみならず「ノマド」的な生き方についても他の多くの著書で述べられています。
(つづく)
※本記事は医道の日本社Webサイト「シアナ」で2019年4月9日に掲載されたものです。
▶治療家のための“伝わる”英語勉強法【2】
第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回
▶治療家のための”伝わる”英語勉強法【フィリピン英語留学編】
第1回 第2回 第3回
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斎藤大介(さいとう・だいすけ)
1985年、群馬県生まれ。高校卒業後、柔道整復師、鍼灸師、あん摩指圧マッサージ師の資格を取得。2010年、ファイテン株式会社に入社し、企業のトレーナーとしてプロ野球選手、プロゴルファー、ビーチバレー、大学駅伝などの選手を担当。2014年に独立し渡豪。ゴルフの名門AnKゴルフアカデミーの専属トレーナーとして活動しながら、2015年8月にJAPANESE SPORTS MASSAGEをオーストラリア・ゴールドコーストに開業。2016年9月よりアメリカ女子プロゴルフツアーにて、メジャーチャンピオン2名を含む4名の外国人選手と契約。
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