「医道の日本」プレイバック! 第11回【最終回】 赤羽幸兵衛「皮内針法こぼれ話」(1976年)
創刊より80年以上、通巻922号を数える中から、特に読者の議論を呼び起こした企画、時代を映し出した企画を振り返ります。
赤羽幸兵衛「皮内針法こぼれ話」(1976年)
皮内鍼の考案者として知られる赤羽幸兵衛(1895-1983)。
弊社からは2013年に、DVD「よくわかる!赤羽式皮内鍼法」を発行しているが、赤羽はその皮内鍼法を始め、「知熱感度測定法」や「シーソー現象」など、鍼灸史上に残る多くの研究・開発を行い、昭和鍼灸の歴史に巨大な足跡を残した、名鍼灸師である。
1931年、36歳のときに鍼灸師免許を取得した赤羽は、群馬県伊勢崎市にて開業する。
以降、長きにわたって臨床に励むが、1954年、読売新聞に「ハリ術にルネッサンス」という記事が掲載され、その名が一躍知られるようになった。
記事では、赤羽が臨床と研究の中で発見・考案した「皮内鍼法」や“経絡のバランス変化”を捉える「知熱感度測定法」を画期的なものとして紹介。大きな反響を呼ぶこととなった。
その後、赤羽は、講演活動や原稿執筆を精力的にこなしていく。
1966年には、NHKのテレビ番組「不思議な世界」に出演。
漫画家の手塚治虫氏を相手に赤羽氏法による治療を実演したところ、放映後から患者が殺到した。
ところが、その約1カ月後に、疲労の蓄積で倒れてしまう。それが10年以上に及ぶ闘病生活の始まりとなった。
闘病の中でも赤羽は、小誌に何度も原稿を寄せている。そして最後の寄稿となったのが、今回の「皮内針法こぼれ話」(1976年)である。
冒頭の、「病床にはあるが、心は今も日本中かけめぐっている様な気持ちで居る。想うは針灸の将来であり、待たれるは我が身の再起である」という文に、病床に伏してなおも鍼灸への情熱を燃やしている様子がうかがえる。
「こぼれ話」と銘打たれてはいるが、赤羽が皮内鍼法を考案したきっかけや、いくつかの症例についても述べている。
下に紹介する皮内鍼で治療した患者と赤羽とのやりとりのエピソードからは、皮内鍼を広め、多くの患者に役立てたいという治療家としての気概が伝わってくる。
「この方法を患者に応用してみた所これ又、驚くべき効果を見た。
多くの患者は『こんなに効く方法は珍しい。先生はこれを他の鍼灸師には教えず、御自分一人の"専売特許" にすべきです』と云った。
『これで蔵が建ちますね』とも云われたが私にはそれが出来ず広く公開したことは天下周知の話である」
今日では多くの治療家が活用している「皮内鍼」の祖・赤羽幸兵衛。
※本記事は、医道の日本社のWebサイトで2013年7月1日に公開されたものを元に作成しております。
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