わたしのすきなひと 4(ゆんぎ編)
28歳の君へ
君が読んだという本に登場した“カルピス”の味を、君は知っているのだろうか?
君の住む国のコンビニでも買えるそれではなくて、氷を入れたグラスに原液を注いで、濃かったり、時にはあやまって薄くなりすぎてしまったり定まらない味の、甘ったるく喉元に残るあの感触と、蒸し暑い夏の日に溶けていく氷と分離していくあの半透明な液体が匂わせる、当たり前のように満ち足りた幼い頃の幸福感を、君はその文字の中から感じ取ることはできただろうか?
私たちはお互いの知っているその味を確かめるこ