戦国送球〜バトルボールズ外伝〜天上天下唯我独尊の感想
戦国送球〜バトルボールズ外伝〜天上天下唯我独尊の感想
おはようございます、こんにちは、こんばんは。
今日は6月22日〜26日の期間に全8公演上演され、戦国送球〜バトルボールズ外伝〜天上天下唯我独尊の感想を書きます。
【殿堂入り】
正直最初は不安でした。
直近で観劇したバトルガールズが「人生最高傑作」にランクインしたのと、バトルガールズの魅力の大きな部分を占めていたハンドボールの試合について、事前配信で脚本演出の加藤光大さんが「今回は試合は1回だけ」と言っていたので「大丈夫かな」となっていたからです。
ただその不安は杞憂でした。
今回の戦国送球外伝は自分の中で「殿堂入り」になりました。
【ステゴロ殺陣とハンドボール】
バトルガールズは演技×ハンドボール×ダンス×殺陣の4要素が高いレベルで絡み合っていたのが、今作はその中からダンスが抜けた代わりに殺陣がステゴロ殺陣と武器殺陣の2つになった演技×ハンドボール×ステゴロ殺陣×武器殺陣の4要素が高いレベルで絡み合っていました。
中でもヤンキースポ根ということでステゴロ殺陣と選手キャストが揃いも揃って身体能力が高いのでハンドボールの2つがとんでもなくレベルが高かった印象です。ステゴロ殺陣は全員パンチも蹴りも腰が入って全身で打ち込んでいて「喰らったら本当に痛そう」感があったし、劇場がスペースゼロより狭めのシアターサンモールだったのが乱戦感が増していて逆に迫力が増していたと感じました。
ハンドボールについては何よりリフトの迫力が凄まじかったです。
バトルガールズでは試合前半のクライマックスのとっておきでしたが、今回は男性陣のフィジカルに任せて要所要所でリフトによる打点の高いジャンプシュートを取り入れ更にそれをシアターサンモールの視点が低くかつ舞台との距離が近いS席から観ると迫力がとんでもなかったです。
真田勝利を演じる前田隆太朗さん、伊達真佐夢を演じる高田舟さん、古郡仁義を演じる湯本健一さん、鮫島海斗を演じる加藤光大さん等々、主役級のキャストさんが全員演技は勿論上述のステゴロ殺陣やハンドボールの実力も高く、そういった面でも説得力が高い作品でした。
【ヤンキースポ根】
前回のバトルガールズが部活スポ根なら今回の戦国送球外伝はヤンキースポ根。
似て非なるものにみえるけどバトルガールズのアフターイベントで光大さんが「女子同士だとストレートに褒め合えるけど、男はプライドが邪魔をするからお互いを褒め合えない」という話をされていたけど、ヤンキーにおいては基本縦社会かつお互いがお互いを認めていないと成立しない世界なのと「ヤンキーてそういうルールで生きているんでしょ」という一定以上の共通認識があるので「お前やるじゃねぇか」「へっ、お前もな」みたいな世界観が違和感なく入ってきて、スポ根と非常に噛み合わせが良かったです。
また劇中でいちかやさえりが話していた通り「ヤンキーなら一定以上の身体能力、スタミナはあるよね」というこれまた一定以上の共通認識があるので、部活をやっていなくてもそこそこ戦えそう、かつ試合後半はヤンキーモード(ヤンキーの喧嘩の型でハンドボールの試合をすること、考えるな!感じろ!!)なのと上述のキャスト陣の圧倒的な身体能力と迫力で「ヤンキーだってスポ根できるんだぞ、ゴラァ!」とぶん殴ってくる感じが最高でした。
あと今作のヤンキーはタバコを吸わないのでそういう意味でもスタミナがあるのは説得力があるな、とスラムダンクを愛読して三井寿のスリーポイントシュートに憧れた身をしては思う訳です。
【加藤光大節】
今作はヤンキースポ根ものを書きましたがクライマックスで、結構重めの展開が入ってきます。それまでに徐々に徐々に不穏な空気を漂わせているので、そこまで唐突感はないですがバトルガールズを観た時に「今回の光大さんは人死がない」と安心していたので「えぇ?!そういう展開するの?!」と正直面食らいました。
とはいえこれも事前配信で光大さん本人が「外伝ならではの展開を入れる」と話していた通り、単純にこれまでの作品のように試合を通して仲間との結束を強めるなら過去作と変わらないし、何より勝利は出羽高にずっといるわけではないのでそこで関ヶ原以上の関係を築いても、という話になります。
なので試合とは別の角度から仲間の大切さ、人との関わりを持つことの重要性を説くこのシーンはまさに「外伝ならでは」と感じたし、BMGも相まって「久々の『加藤雨光大節』だなぁ」と嬉しくなりました。
その一方で「ここからどうヤンキースポ根に戻すの?」と若干狼狽えましたが「うるせぇ!いいから私の歌を聴け!!」と言わんばかりに爆音で『赤燐』が流れて真田勝利の圧倒的主人公感と『赤燐』の歌の力で半ば強引にヤンキースポ根に戻す演出は最高でした。
【お芝居】
ここまで色々設定や演出の感想を書いてきましたが、とはいえ舞台なのでお芝居の話も書きたいと思います。
細かく書き出すとキリがないので好きなシーンをピックアップして感想を書きます。
1つ目はいちかがエキシビジョンマッチがご破産になってキレた勝利と真佐夢の一騎打ちを身を挺して止めるシーンです。
ここはいちかは客席ではなく勝利をはじめとしたヤンキーたちに向かって語りかける必要があるのと、大袈裟なリアクションを取れる場面ではないので『声』と必要最小限の動きで感情を客先に届ける必要がありましたが、いちかを演じた日永麗さん(れったん)は見事に特大の感情を届けていたと思います。
またこの場面はクライマックスの勝利が真佐夢と仁義を諭すシーンでも触れられる重要な場面なので、印象が弱いと作品の構成に支障が出る重要な場面なので、そういう意味でもれったんは見事に演じていたし、圧倒的にヒロインだと感じさせてくれました。
2つ目は苺子と勝利の邂逅です。
点と点が線で繋がるというか綺麗に風呂敷が畳まれるというか、そういう「気持ちが良い物語」にふれたときの幸福感と、明言こそされていないけどいちかの想いが観客に伝わっているからこそ勝利の「随分待たせてしまったな」に心を動かされるシーンです。
まず苺子を演じた樹くるみさんが「なるべくれったんの演技、表情を舞台袖で見るようにしていた」と話していましたが、まさに勝利に想いを伝えようと逡巡する際の表情の作り方や間の取り方が似ていて「勝利がいう通り、苺子はいちかのままなんだな」となって涙腺にきました。
また最速後夜祭で話題に上がったようにこの場面では勝利も苺子もお互いの名前を呼んだりしないのも「結末をハッキリさせたくない」「物語には余白を残しておきたい」とことあるごとに言っている光大さんのこだわりが詰まっていると感じました。
推しの話ばかりになってしまいましたが、真っ直ぐな目、圧倒的な声量、アクションで持って主人公としてのオーラを放ちまくっていた前田隆太朗さん、少し狂気を感じさせる敵役を演じさせるととんでもなく輝きを放つ高田舟さん、舞台上で常にオフ芝居を絶やさず狂気を発して物語に緊張感を持たせていた湯本健一さん、「緊張していた」というそぶりを全く見せず自由奔放ないちかやヤンキー達を常に暖かい目で見守っていた片瀬成美さん、いちかとは違うベクトルの自由奔放さで最後まで油断ならない雰囲気を魅せていた石原美咲さん等々、座組全員が確かな実力者で本当に見応えがあった。
【まとめ】
最初に書いた通り、観劇前の不安は完全に杞憂になり戦国送球外伝は僕の中で「殿堂入り」の作品になりました。
ここまで書いてきた通り演技×ハンドボール×ステゴロ殺陣×武器殺陣の4要素が高いレベルで融合し、それを特色ある脚本と演出が彩っていました。
更にそこに推しの作詞歌唱曲が加わったらもう殿堂入りするしかなかったです。
特に大千穐楽のダブルカーテンコールで『赤燐』が沢山の拍手に包まれ、そんな中でれったん本人や他のキャストさんが幸せそうにしていた様子を僕は一生忘れません。
「日永麗にとって間違いなく大事な作品になる」と思って全通して本当によかったです。