車座になって議論する。IDLユーザー会「Round」開始
IDLに新卒配属されました川原です。
2021年7月20日、IDLはユーザー会「Round」の第1回を開催しました。zoomで各地のクライアントの方々と東京・京都のIDLメンバーが集まり、IDLの取り組みを中心に議論する、和気藹々とした会となりました。本記事では、Round 第1回で行われたプレゼンテーションやディスカッションの内容をダイジェストでお届けします。
Round をRounders との共鳴の場に
まず、IDL デザインディレクターの辻村が開会の挨拶を行いました。
辻村は、会を「Round」参加者を「Rounders」とそれぞれ名付けた経緯を語りました。
Roundの命名の意図は、車座になって話すことができる共鳴の場として、この会を位置付けることです。
また、Roundersというのは、周りをうろうろしている人、あるいは梯子酒をしている人という意味です。好奇心の赴くまま何かに没頭できる人。IDLが掲げる『Troublemaker』という標語、つまり、物事を批判的にみていく営みに共鳴して、それに乗って来てくれる方々が増えたら嬉しい。そういう意図を込め、命名したと語りました。
「新たな意味」を問い直すDesign as R&D
次にデザイン・ストラテジストの井登より、意味のイノベーションとそれを実現するための戦略についてのkeynoteがありました。
著書『意味論的転回ーデザインの新しい基礎理論ー』で知られるデザイン研究者であるクラウス・クリッペンドルフ曰く、「デザインとは物の意味を与えること」です。つまり、新たな意味を見出し、形を与えること。これは未来の当たり前を作ることでもあります。
それでは、新たな意味を見出すためにはどうすれば良いのでしょうか? 井登は、まずは一般的な消費者に比べて、特定の関心事やテーマについて極端な行動や価値観の変化を実践しているエクストリームユーザーに着目すること、次に、企業全体の研究開発の一環として、中長期的に意味について研究することが必要だと主張します。
(新たな意味を見出すにあたり、社会全体に目を向けること、そして長期的な変遷を捉えることが大事です。)
IDLでは、この意味に関する中長期的な研究を「Design as R&D」と名付け、促進することを狙っています。
メディア運営を通じた新たな価値創出
続いて、IDL遠藤より、メディア運営を通じた新しい価値創出についてのプレゼンテーションがありました。
遠藤によると、メディア運営のプロセスは、一般的に5つの段階に分けることができます。探索、企画、取材を通した制作、出版/公開、コミュニケーションの発生です。
従来、企業がメディアをマーケティングのための道具として活用する際には、出版/公開と、その後に生じるコミュニケーションの段階が成果とされ、最初の3段階(探索、企画、取材を通した制作の段階)は、単なる過程と考えられてきました。
しかし、実際には最初の3段階にも価値があるのだと遠藤は言います。制作段階で得られる大量の情報や人間関係、それらを基に考え抜く過程は、新規プロジェクトの立案・コミュニティの形成に役立てることができるのです。
(メディア運営のプロセスで得られた価値にデザイン活動を組み込み、新たなプロジェクトを生み出します)
この考え方をもとに、IDLではメディア運用を通じてデザインする「Design through Media」に取り組んでいると締めました。
仕組みと制度で地域に新たな価値をもたらす
続いて、IDL木継より、Societal Lab.についてのプレゼンテーションがありました。
Societal Lab.では、社会課題への取り組みを通じて企業の成長と変革を支援する多くのプロジェクトを手掛けています。社会課題への取り組みにあたっては、ツールや仕組み、制度のデザインを通して、都市や地域を基盤に価値を循環させる仕組みづくりを実践しています。
木継によると、それらを持続的に行うには、協働ガバナンスが発揮されている状態を生むことが重要とのこと。それは、そこで生活する人々が、アウトプットとなるサービスやツールを通じた価値創造を持続させるために、相互の関わりあいやルールづくりが主体的に行われている状態です。
(アウトプットが地域に根付いていくには、利害や価値観の絡み合いに目を向けることも、とても重要な問題です。)
この状態を実現するために、デザインのアウトプットに加えて、中間組織を設置したり、定期的な会合の場をつくるなど、アウトプット周辺の仕組みもセットで設計することを木継は提案します。この仕組みが学習やコミュニケーションの機会を作り、協働ガバナンスの実現に繋がります。
「大事なのは継続性」と木継は言います。小規模な実装の繰り返しによって、仕組みを少しずつ拡張し、社会課題にアプローチできる地域を作り上げるのです。
ブレイクアウトルームでのディスカッション
その後、ブレイクアウトルームに分かれ、ルームごとに設定した議題でディスカッションを行いました。議題は「クリエイティブリーダーシップ」「デザインリサーチャーの活かし方」「ソシエタルとソーシャル」「Design through Mediaの続き」「メイキング&ミーニング」の5つでした。
これらの部屋うちの1つ、クリエイティブリーダーシップを議題としたルームでの、議論の内容をお届けします。
(和気藹々としたディスカッションが行われました。)
クリエイティブリーダーシップとは、組織の創造性を育むためのリーダーの在り方です。リーダーはどのように、組織の創造性に資することができるのでしょうか?
議論の中で、リーダーは人の態度を変えることで創造性を活性化させることができるのではないか、という意見が出ました。では、どうすれば人の態度を変えられるのでしょうか?参加者から、人の態度は、リーダーの態度が伝染することを通して変わるのだという考え方を提案しました。
そうだとすれば、どんな態度が伝染するのでしょうか? あるいは、どんな振る舞いができるリーダーが望ましいのでしょうか?
新たな問いの発生とともに、ディスカッションが終了しました。
トライブから見た「モードチェンジ」
最後に登壇したのは、IDLとパートナーシップを結ぶSDG株式会社佐々木さんより、「トライブ」についての話題提供がありました。
(佐々木さんにトライブについてお話しいただきました。)
トライブとは、世の中に出てきていない課題に対して、独自の哲学を持って、独自にアプローチしている生活者の集団のことです。SEEDATAでは、このトライブについてデプスインタビューを通じて、彼らのユニークな行動様式や価値観を明らかにすることで、3-5年後の生活者の課題を先取りし、新しい商品や事業開発に役立つヒントが得られると言います。
今回は具体的なトライブ分析のケースとして、ノンアルコール飲料をポジティブな目的で飲む「ノンアルエンターテイナー」の分析をご紹介いただきました。その目的とは、例えば気分の切り替え、モードチェンジです。「ノンアルを飲むときは、アルコールを飲みたいけど飲んではいけないから仕方なくそうしている」という従来のユーザーモデルは、今や必ずしも正しくないのだろう、と筆者は納得しました。
最後に、昨今のCOVID-19による社会変化について、佐々木さんはトライブ分析の視点から「マスがトライブ化している」という解釈を語りました。急激な変化を迫られた社会が変化した先は、まさに少し前からトライブが送っていた生活だったということです。
・・・
こうして会は終了しました。
最後に、Roundを企画したIDL野坂に今後の展望を聞きました。
「プロジェクトをご一緒したり、企画やご協力いただいた方々とアドホックに繋がる、いわゆる“ユーザー会”と呼ばれるコミュニティを立ち上げて、多分野コラボレーションや人材交流を主体的に仕掛けていきたいと考えています」ということでした。
Roundは、今後も改善しながら開催する予定です。お楽しみに!
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記:川原光生
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