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【JICA Volunteer’s Next Stage】異文化を超えて仲間をつくる
ガーナで磨いた誰とでも打ち解ける力
☆本コーナーでは日本で活躍するJICA海外協力隊経験者のその後の進路や現在の仕事について紹介します。
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杉原 俊宏さん
●出身地 : 岐阜県
●隊 次 : 2017年度4次隊
●任 国 : ガーナ・アシャンティ州
●職 種 : PCインストラクター
●現在の職業 : 戸田建設(株) 土木グローバルプロジェクト室
■戸田建設
「同じ釜の飯」で親睦深める
現在、杉原さんは土木グローバルプロジェクト室で政府開発援助(ODA)の建設工事の施工管理業務を担っている。施工管理の仕事は多岐にわたる。まずは、入札に必要なプロポーザルを作成して仕事を調達。そして、プロジェクト現場では工事計画を組み必要な資材や人員を手配、日々の進捗管理や臨機応変なスケジュール調整が求められる。その他、現場の安全対策指導、使用する材料や施工方法が基準を満たしているかの確認や、行政への申請書類の作成も行い、完工するまで現場を取りまとめる。
最近では、スリランカに10カ月以上の長期出張をし、橋梁建設プロジェクトを担当していた。杉原さんがスリランカに赴任した際は橋梁の瑕疵(かし)担保期間だったため、橋梁の安全性を確認し、欠陥や不具合を発見した場合に修補を行う作業にあたった。約60人の現地人を取りまとめるのは大変だったと言う。
「初めてスリランカに長期滞在し、現場のスタッフは全員が初めて会う人たち。人数も多かったので最初は戸惑いもあった。でも、スリランカでは1枚の皿にカレーを盛り、みんなで囲んで食べる文化があり、自分も一緒にご飯を食べて少しずつ打ち解けていった。基本的な会話は英語だが、現地のシンハラ語の挨拶を覚えたり、スリランカ人同士が笑っていたら、どんな話をしているのか聞いて面白いフレーズはメモして使ったり、コミュニケーションを大切にした」
もう一つ大変だった事は、政府側との対話だ。「施工や補修の方法、工程などが、日本のスタンダードと異なることが多く、政府側が納得を示してくれない場面も多かった。日本人とスリランカ人が一緒に知恵を振り絞り、両者が折り合いをつけられる打開策を試行錯誤した。この場面でも日頃から良い関係性を築いていたからこそ協力して案を出し合うことができたと思う」
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新規プロジェクト受注についてミーティングを行う
相手を知り、交流広げる
協力隊ではガーナの職業訓練校に所属してICTの授業を担当していた杉原さん。必須科目のICTを教えられる教員は一人しかおらず、教科書の内容を板書する授業が多かった。杉原さんは実用的なパソコンスキルを身に付けてもらおうと、実技を中心とした授業を目指した。赴任当初は学校に20台のパソコンがあったが使えるものは5台程しかなく、杉原さん自ら修理をほどこした。「授業は90分と長く、飽きさせない工夫として日本紹介を行い、折り紙や日本語を取り入れたアイスブレイクを行って楽しめる環境をつくった。また、カリキュラム通りのワードやエクセルといった授業だけでなく、絵画や写真編集のスキルなども教えてパソコンの面白さを感じられるように工夫した」と、生徒の立場で授業を考えていたことがうかがえる。
メインの活動の他には、隊員の自治会長として隊員総会を取りまとめる立場を経験。当初は隊員だけが集まるイベントだったが、ガーナに駐在する日本人も招き、互いに交流できる場へと変化させた。「日本ではすぐには面会できないような役職についている人とも、ガーナという異国の地にいる日本人という共通点で打ち解けられるし、隊員にも駐在員にも面白い経験をしてきた人が多く、皆が一堂に会して交流することができる場は絶好の機会だと感じた」と振り返る。
杉原さんは2年間のガーナ滞在の中で、ガーナ人も日本人もさまざまな人と関わりながら、コミュニケーションの取り方やコネクションの広げ方を吸収していった。この経験が外国人を含め多くの人と関わる現在の仕事にも大いに生かされている。例えば、現在日本で勤務している杉原さんは、外国人エンジニアの育成や研修も仕事の一つだ。少しでも日本のことを知ってもらえるように、日本の串焼きを味わってもらったり、休みの日に花火大会に行ったり、日本文化を楽しんでもらえるよう工夫している。
現在の仕事の魅力は、さまざまな国の人々と協力し合う機会があることと話す杉原さん。仕事を通じて多様な文化や価値観に触れることで、新たな発見と学びを得られ、視野が広がり、柔軟な思考が養われるそうだ。「これからも、さまざまな国の人々と共に、新しいプロジェクトに挑戦していきたい」とやる気に満ちている。
取材にも自然体で応じる杉原さんは、周囲に緊張感を与えないような心地よい空気を作り出していた。たくさんの人と関係性を深めるこの雰囲気は杉原さんの強みだと実感した。 (編集部・吉田 実祝)
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「ビジネスプランプレゼンコンペ」を行い、
プレゼンスキルを競った
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本記事は国際開発ジャーナル2024年11月号に掲載されています
(電子版はこちらから)
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