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【夏休みの自由研究 2】何故貝殻を耳に当てると波の音がするの?| 元祖発車音 開発秘話 新宿駅の音

今日は夏休みの自由研究企画回です。
発車メロディ開発秘話にご興味のある皆様へ、電車で家族や仲間と海にお出かけする際に自慢できるプチ知識をすそわけします!


以前、朝の生放送番組で音の質問に答えるコーナーがあり、
私が解説者として出ていたことがありました。

その時に出てきたとある質問が、
「何故貝殻を耳に当てると波の音がするの?」
というものでした。
今日はこの種明かしをしたいと思います。


実はどこにでもあるノイズにヒントが。

「部屋の中の外でも中でも、私たちの周りには”ザー”というノイズが世の中どこに行ってもあります。
無音のように思えても、あります。

例で言うと、海を遠くで聴いているような音。
風の音とか、森の葉っぱが風になびいている音。
ピンクノイズ風といています。

その音が本当になくなってしまうと、
頭がおかしくなるような、気持ちの悪い状態になります。

無音に近い空間があるとすると、無響室という、音が全く響かない部屋がそうです。
外の音も完璧に遮断することになっていて、
自分の身体の中の音しか聞こえてこない場所です。
あえてこのような部屋を創らない限り、ノイズはどこに行ってもあるということなんですね。

このノイズに、貝殻の音のヒントがあります。」

貝殻を当てると生まれるわずかな空間

「貝殻を耳に当てると、耳との間にわずかな隙間ができます。
この隙間にノイズが入って来て起こる様々な現象が、あの波の音です。

隙間から音が入って来ると、音は貝の渦巻きの中で色々な干渉を起こします。
大きくなったり、小さくなったり、
高い音が強調されたり、低い音が強調されたりと、
音の状態が複雑になります

また、中で共鳴もします。
音が少し大きくなり、渦巻きが引き起こす干渉を合わさって
ゆらぎのように聴こえてきます。
きっと、これが、波のような音に聴こえるのですね。」

音とイメージは強く結びついている

「これまでの説明でお分かりの通り、貝殻のあの音は、
貝殻が出している音ではありません。(このほうが、夢がありますが)
世の中どこにでもあるノイズが貝殻と耳との隙間から入ってくることで、
貝独特の空間の中で干渉や共鳴、ゆらぎを起こして波のように聴こえるということです。

ただ、波の音じゃないと種明かしをしたところで、
『波の音だなぁ』と私も思います。

というのも、音というものは、実際の音が何なのか?ということがさほど重要ではありません。
一回『波みたいだなぁ』と思うと、波に聴こえますし、それでいいのです。

音は、人間のイメージや直感と強く繋がっています。
イメージにより、認識が増幅されて、波の音に聴こえる。
こういう、種明かしよりももっと面白いことが起きているのだと
そう思って頂けるといいのではないかと思います。」

WEBマガジン「井出 祐昭のいたずら」より転載>


TOKYO MORNING 1989 (井出 研究所)


井出 祐昭 HIROAKI IDE
サウンド・スペース・コンポーザーSound Space Composer

ヤマハ株式会社チーフプロデューサーを経て、2001年有限会社エル・プロデュースを設立。最先端技術を駆使し、音楽制作、音響デザイン、音場創成を総合的にプロデュースすることにより様々なエネルギー空間を創り出す「サウンド・スペース・コンポーズ」の新分野を確立。
主な作品として、30周年を迎えるJR新宿・渋谷駅発車ベル、愛知万博、上海万博、浜名湖花博、表参道ヒルズ、グランフロント大阪、東京銀座資生堂ビル、TOYOTA i-REALコンテンツ、TOYOTA Concept-愛i、SHARP AQUOS、立川シネマシティ、世界デザイン博など。
またアメリカ最大のがんセンターMD Anderson Cancer Centerで音楽療法の臨床研究を行う他、科学と音楽の融合に取り組んでいる。最近では、日本ロレアルと共同で髪や肌の健康状態を音で伝える技術を開発。米フロリダ州にて行われた化粧品業界のオリンピックである第29回IFSCC世界大会、PR分野の世界大会であるESOMAR 2017にてグランプリを受賞。メディア出演・講演多数。

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