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#8 発車メロディに隠された動物 | 元祖発車音 開発秘話 新宿駅の音

今でこそ多くの駅で聞かれる発車メロディや発車サウンド。
その元祖である、「JR新宿駅・渋谷駅の音(1989-)」について、当時の開発プロジェクトリーダーである「井出 研究所」所長・井出 祐昭が、開発秘話や制作エピソードを語ります。

TOKYO MORNING 1989 (井出 研究所)

印象に残っているエピソードはありますか?

前回の最後に、成田エクスプレスのクリスタルマリンバの裏でとある動物が鳴いていると明かしました。

さて、何の動物か皆様分かりましたか?印象に残っているエピソードと一緒にお話します。


千葉の方の森の音を取りまくる、という県の林業課のイベントがあり、 清澄寺の近くの東大の演習林に録りに行きました。

そこに待ち受けていたのは大量の「ヒル」。忘れもしません。「ヒル中地面だらけ」と言えば良いでしょうか。
東大の事務所で「ヒルガード」を付けた方がいいという話になる程、ヒルがジャンプする、一歩歩くと5匹入ってくる…そんな壮絶さでした。「お昼ご飯」が禁句になるくらい!(笑)
耐えきれず途中で帰ろうとした人も、首元にヒルがいて叫び声がしたり。ヒルがつらすぎて、焼き殺し始める人も。飛ぶだけじゃなくて、落ちてきます。

そんな中、「奏者と自然との関わり」という、ヒルとの闘いを思わせない爽やかなテーマで、夜中の音を録ることになりました。
アンクルンという民族楽器を鳴らしたりしたのですが、雀が鳴いたり、猿が集まってきたり、動物が沢山反応しとても面白かったです。

民音音楽博物館より引用

夜も深まり、真夜中になった頃。
パーカッションの人が風鈴のような楽器をチリンチリンと鳴らしたその時、遠くからシカの鳴き声が。
悲しそうな、ヒューンという声。響いてとても綺麗だったことをよく覚えています。
(もしかしたらヒルにやられていたのかもしれないですが)

その音がずっと記憶に残っていて、笛の様な綺麗な音だったので、千葉にいく成田エキスプレスの最後に入れました。

当時の譜面にも「鹿」がいます!笑 パート名は「森」です。

ちなみに、路線にちなんだ音を用いるという考え方は、当時よくしていました。

改めて、Tr.3とTr.4の成田エクスプレス、是非お聴きください。

https://music.apple.com/jp/album/3%E7%95%AA%E7%B7%9A-%E6%88%90%E7%94%B0%E3%82%A8%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9/457531708?i=457531737


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井出所長に聞いてみたいことがございましたら、note記事へのコメントまたは公式Xへのリプライでお寄せください。


次回のお話



井出 祐昭 HIROAKI IDE
サウンド・スペース・コンポーザーSound Space Composer

ヤマハ株式会社チーフプロデューサーを経て、2001年有限会社エル・プロデュースを設立。最先端技術を駆使し、音楽制作、音響デザイン、音場創成を総合的にプロデュースすることにより様々なエネルギー空間を創り出す「サウンド・スペース・コンポーズ」の新分野を確立。
主な作品として、30周年を迎えるJR新宿・渋谷駅発車ベル、愛知万博、上海万博、浜名湖花博、表参道ヒルズ、グランフロント大阪、東京銀座資生堂ビル、TOYOTA i-REALコンテンツ、TOYOTA Concept-愛i、SHARP AQUOS、立川シネマシティ、世界デザイン博など。
またアメリカ最大のがんセンターMD Anderson Cancer Centerで音楽療法の臨床研究を行う他、科学と音楽の融合に取り組んでいる。最近では、日本ロレアルと共同で髪や肌の健康状態を音で伝える技術を開発。米フロリダ州にて行われた化粧品業界のオリンピックである第29回IFSCC世界大会、PR分野の世界大会であるESOMAR 2017にてグランプリを受賞。メディア出演・講演多数。

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