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【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~第六部  第八十一話「フォス大興奮」

第八十一話「フォス大興奮」

そして誕生日会前日、

「誕生日会の準備はしないでって言われたから、

何も用意していないんですけど、

うちでやるんですよね」

瑠璃が不安げに聞いた。

「それは大丈夫。お店借りたから」

「お店? 」

瑠璃が驚きの悲鳴を上げた。

「お店なんてとんでもない。

ただの子供のお誕生日ですよ」

「ただのじゃないよ。

フォス君にとって初めてのお誕生日会だよ。

ドッグカフェ借りたんだよ。

これは俺からのお祝い。

あとは持ち寄りでご馳走を持ってくるから、

料金はかからないし、

ドッグカフェだからシアンも参加できる。

うちのローズと真珠、美津子さんのケープも来るよ」

「そんな大掛かりな、

皆さんに申し訳ないです」

「うちの美優もフォス君に会うの楽しみにしてるし、

奥さんも料理作るって張りきってるんだから、

気にしないでよ」

「そうですよ~みんな飲んで騒ぎたいのに、

それを止めたら恨まれちゃいますよ」

翠も笑うと言った。

翌日、

フォスがお気に入りのウェアを着て、

出掛ける準備をしていると、

伍代がやってきた。

「今日は私も一緒」

そういって笑うと、

フォスとシアンと一緒に車に乗り込んだ。

太一社長はみんなに声をかけたのか? 

瑠璃は驚くと苦笑いをし車を発進させた。

瑠璃が借りている駐車場からすぐの場所だと言われ、

裏通りに行くとそのカフェがあった。

本日貸し切りという看板がかかり、

瑠璃がドアを開けると、

クラッカーが鳴り響き、

紙吹雪が舞った。

驚くフォスに、

「お誕生日おめでとう~」

皆からお祝いを言われ、

戸惑う顔を見て、

「今日はフォスのお誕生日だから、

皆がお祝いしてくれたのよ」

瑠璃が言った。

「お誕生日? 」

フォスが瑠璃を見上げた。

「そう。フォスが生まれたフォスの日」

「僕の日? 」

「そう。皆に有難うってお礼を言わなきゃね」

瑠璃がそういってフォスをお店に入れると、

バルーンも飛んで、翠が帽子をかぶせた。

「お誕生日おめでとう」

「フォス~こっちだよ」

幸人の呼ぶ声に、

「幸人君だ」

フォスは嬉しそうに走って行った。

シアンも最初は驚いていたものの、

真珠の姿に嬉しそうに近づいて行った。

「こんな立派なお誕生日会。

有難うございます」

瑠璃がフォスの為に飾られた店内を見て驚いた。

「友一のお誕生日会を思い出しながら、

こっちも楽しかったわ」

優子もやってくると笑顔で話し、

「百合子ちゃんと美咲ちゃんは現役だから、

お誕生日会になれてるしね」

隣に立つ百合子と幸人の母美咲を見た。

「フォスは幸せですね。

皆さんにこうやって祝ってもらって、

本当にありがとうございます」

瑠璃はフォスのはしゃぐ姿を見て嬉しかった。

遠くで美優が、

「フォス君は可愛いから私のお婿さんにしてあげる」

「お婿さん? 」

「そうよ」

フォスとのそんな会話に大人達が笑った。


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八雲翔
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