【連載小説】『独り日和 ―春夏秋冬―』その24
「クラフトマルシェ」
それは一ヶ月前――――――――
「花華さん~
彼女と喧嘩した。
どうしたら機嫌直すと思う? 」
「なんで私に聞くの?
同級生に聞きなさいよ。
若い子の気持ちなんて分からないわよ」
花華と椿、陽斗が冬の家に来ることが増え、
自然と耕太とも親しくなり、
よく皆でお茶をしていた。
この日は花華が冬に小物作りを教わりに来ていた。
「花華さんはプロデューサー業してたんでしょ。
流行りとか詳しいでしょう」
「耕太君が言うのはジュエリーでしょう。
私そういうのはやったことないから分かんない」
「ええ~」
「その子の趣味にもよるけど、
今若い子で人気のブランドって言ったら、
やっぱこれじゃない? 」
花華が見せるスマホ画面に、
「ん~」
「何? 」
「佳苗の趣味が分かんねえ」
「彼女でしょ」
「ん~」
「だったら生成AIに聞いたら?
私の前いた会社の子は、
それでプレゼント相談して、
彼女とも上手くやってたわよ」
「ん………」
「何? 今はAIに相談するの? 」
冬が聞いた。
「私はしませんけど、若い子は何でも話してますよ」
「あら。耕太もそうなの? 」
「俺は人間がいいの」
そんな事があったので、
花華も驚いたのだろう。
「あの後すぐに振られたのよ」
冬が助手席から後ろを向いて笑った。
「あら。やっぱりAIにお願いすればよかったわね」
花華は何といっていいか分からずに、
小さく笑った。
「出会いなんて無限にあるんだよ。
今日だってドッグランに行って、
女の子と知り合えるかもしれないだろ」
運転しながら言う耕太に女性たちは笑った。
冬の実家に着くとシュートが待っていた。
「陽斗、お兄ちゃんたちの言う事、
ちゃんと聞いてね」
「うん」
そういうと手を振ってシュートと一緒に、
部屋に入って行った。
春と小春もお出掛けなのが分かって楽しいのだろう。
さっさと部屋に入って行く姿に、
「薄情者ね」
冬が言い、皆が笑った。
クラフトマルシェの会場に着くと、
地下駐車場に止め、
耕太が荷物を下ろした。
「じゃあ、終了時間に迎えに来るから」
「悪いわね。耕太も運転気を付けてね」
冬たちは手を振ると会場に入った。
参加者カードを受け取り、
ブースに向かう。
隣の作家さん達に挨拶し、
作品を並べていった。
「目標は赤字にならないこと。
参加費とガソリン代の交通費は最低限稼ぎたいわね」
三人は笑うと、
「始まる前に少し他のブース覗こうか」
と歩き出した。
夕方に迎えに来た耕太が、
「どうだった? 」
荷物を積みながら聞いてきた。
「赤字にはならなかったから、
初参加にしてはいい方じゃない?
常連のお客さんにも告知をしたから、
見に来てくれたし」
冬が笑顔で言った。
「そうか。荷物少ないもんね。
それだけ売れたってことか」
「陽斗はいい子でいましたか」
椿が車に乗り込み聞くと、
「いい子だったよ。
先に冬さんのお家に連れてっちゃったから、
シュートと向こうのお家で、
春と小春と一緒にお昼寝してる」
と笑った。
「夕飯はまだでしょ?
帰りにどこかドライブスルーで夕食買って帰ろうよ」
「それ、いいわね」
耕太の提案で牛丼屋に寄って帰った。
「そういえば彼女は見つかったの? 」
「休日のドッグランは、
家族連れとカップルしか来ないという現実を知った」
冬の言葉にがっかりする耕太を見て皆で笑った。