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【連載小説】『独り日和 ―春夏秋冬―』その17

「三人揃って」

その日から三人で冬の家に集まって、
マルシェに向けて話し合うことが多くなり、
花華と椿も自然と仲良くなった。

陽斗も春と小春と遊んでいて疲れたのか、
一緒に寝ている。

冬は毛布を掛けると、
珈琲を淹れてテーブルに運んだ。

「珈琲どうぞ」

「すいません」

二人はお礼を言いながら、
カップを手に話しを続けた。

「私は小物だから家庭用ミシンで十分なんだけど、
椿さんは業務用でしょう」

「ええ。あまりうるさくないように、
昼間に奥の部屋で作ってるんですけど、
冬さんみたいにもう少しお金が稼げるようになったら、
ちゃんと工房にしたいです」

「私も小さくてもいいから、
雑貨屋さんを開きたいんですよ。
でね、冬さんがネットショップ持ってるのを知って、
私も自分のお店作ってみました。
以前の仕事ではお客さんのお店を作って、
色々考えてたのにね」

そういってスマホを見せた。

「あら、素敵」

椿と冬が画面を見た。

「冬さんみたいになるにはまだまだだけど、
一応十点売れたんですよ。
もぅ嬉しくて。冬さんに弟子入りしてよかった~」

「私もショップ開店してみようかな」

「椿さんはプロじゃないですか」

冬は自分の娘のような二人の楽しそうな姿に、
珈琲を飲みながら微笑んでいた。

その時庭を周って、
玄関横の出窓から声をかける人の姿に、
冬が玄関を開けた。

「仕事中かなと思ったんだけど、今大丈夫? 」

六十歳前後と思われる女性が入ってくると話した。

「あ、お客さん? だったらあとでもいいけど」

女性は奥のリビングを見て、椿たちに頭を下げた。

椿たちも小さくお辞儀を返す。

「大丈夫よ。お友達なんだけど、
娘みたいなものだから」

冬がにっこり笑って話すと、

「だったら少しだけ」

と女性は上がり框の玄関ホールに腰を下ろした。

「実はね。この前冬さんに、
お習い事の美術鞄作ってもらったでしょう。
あれを使ってたらお友達に欲しいって言われて、
作ってもらえるかしら」

「いいわよ」

「よかった~でね、
お値段を私が作ってもらった金額言っちゃったのよ。
だから同じお値段でお願いできるかしら」

「分かった。ただ、選べる生地が決まっちゃうけどいいかしら。
由香里さんに作った布は、
余りとはいえちょっと特別な廃番布だから」

「えっ、そんな特別な生地だったの? 
悪かったわね」

「ううん、中途半端なメーターだったから、
喜んでもらえてよかったの。
ちょっと待ってね。今生地見本を持ってくるから」

冬はそういうと奥の部屋から生地見本を持ってきた。

「えっとね。あの値段だと………選べるのはこれになっちゃうけど、
いいかしら」

生地が貼られた紙を見せながら、冬が説明する。

「こんなにあるの? 十分よ。
この見本借りられる? 明日教室だから持っていきたいんだけど」

「いいわよ。ただ、返してね。見本がなくなっちゃうと困るから」

「わかった。有難う」

由香里は立ち上がると、

「あっ、そうそう。肝心な事忘れてた。
これ。孫娘が週末にまた韓国に行ってきたのよ。
で、お土産」

といって小さなコスメの箱を手渡した。


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