【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~第六部 第七十七話「初めてのサロン」
第七十七話「初めてのサロン」
この日シアンは初めてトリミングデビューした。
子犬と言えど体も大きくなり、
家でお風呂に入れているものの、
一度プロに綺麗にしてもらおうと思った。
朝、一緒に出勤し、
予約したサロンに連れて行った。
商店街の近くにあり、
午前中は真珠が予約でカットされている姿を、
道行く人がのぞいて見ていた。
トリミングの様子が分かるのは、
飼い主としては安心できる。
真珠も大人しく言う事を聞き、
時折トリマーさんと楽しそうにしている姿に、
瑠璃も安心していた。
シアンを連れて店に入ると、
「蒼川様ですね。この子が真珠ちゃんと姉妹のシアンちゃん? 」
トリマーがやってきてシアンの前に座り込んだ。
話しかけながらシアンの毛のチェックなどをし、
少し緊張していたシアンも尻尾を振って嬉しそうだ。
その間にワクチン証明証など提示し、
チェックシートに記入していった。
トリミング室に行くシアンに、
「綺麗になっておいで」
と瑠璃が声をかけた。
その様子を見て、
「大型犬は子犬でも落ち着いた子が多いかもしれませんね。
シアンちゃんも初めてのサロンなのに、
堂々とし待てますよ」
受付のスタッフが笑いながら話した。
「私の方がドキドキしちゃって」
瑠璃が笑っていると、
「そうだ。太一社長に真珠ちゃん終わりましたって、
言っておいてもらえますか?
一応スマホに連絡いってるはずなんですけど」
トリマーの女性が話した。
「分かりました」
瑠璃の返事に、
「きっとシアンちゃんが終わった時に、
一緒に来るつもりだと思いますよ。
太一社長はいつもそんな感じだからね」
スタッフの女性の言葉に、
その場にいた従業員、お客までもが声をたてて笑った。
「社長はどうしようもないですね」
瑠璃も笑うと、
「連絡いただけたら迎えに来ますね。
宜しくお願いします」
「はい」
スタッフの声に店を出た。
商店街を歩いていると、
お店に貼られたポスターに目が止まった。
【あ、そうだ。そろそろ注文しないとな】
瑠璃は笑顔になると会社に戻った。
「瑠璃ちゃん。真珠どうだった? 」
太一が受付から声をかけた。
「もう終わったそうですよ」
「そうなんだ。まぁいいや。シアンちゃんのお迎えの時に、
俺も一緒に行くから」
太一の行動はみんなに読まれているようだ。
瑠璃が笑っていると、
「今日はフォス君一緒じゃないの? 」
美津子が二階から降りてきた。
「伍代さんがお休みなんで、
フォス連れて米倉さんの御宅にお邪魔してるんです」
「米倉さん? 」
「祖母のお知り合いの方で、
そこのお家にもフォスと同じ年の子がいるそうで、
それで」
「よかったじゃない」
太一と美津子が笑顔で話した。
「そうなんですけど、
初めての御宅なんで、
なんか粗相をしてないといいと思って」
瑠璃が心配そうに笑った。
一応妖精もついて行ったが、
それはそれで心配なのだ。
米倉の両親がフォスを気にかけていてくれ、
一度会いたいと言われたこともあり、
伍代が連れて行くことになった。
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