【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~第三部 第四十六話「アイドルのシアン」
第四十六話「アイドルのシアン」
子犬が来てからフォス達は名前を決めることで、
一生懸命考えていた。
フォスが青がいいと言ったこともあり、
彼らは蒼川瑠璃の名前は青を現してるから、
シアンに決めたと言った。
「私の名前から決めてもいいの? 」
「いいに決まってるだろ。
蒼川はエリス様の名前でもあるんだぞ。
瑠璃の名前もラピスと同じで青だ。
だからシアンはピッタリなんだ」
リチアが自慢げに言い、
瑠璃はそんな彼らを見ながら笑った。
春木は、
「シアンの動きって突然変化するでしょ。
一人で何の遊びをしてるのか、
視聴者にも楽しいって評判だよ。
だからさ、色んな姿を撮影して送ってよ。
子犬の時間なんてあっという間だからさ。
うちのネコちゃん達も、
沢山撮影しておけばよかったよ」
と言った。
春木家のネコちゃん達も保護猫だが、
半年すぎにやってきて、
馴らすのに少し時間もかかったので、
動画が少ないと残念がっていた。
今は毎日撮影しては編集し、
会社の動画にアップしていた。
「分かった」
瑠璃は笑うと通信を切った後、
フォスと遊ぶシアンを見た。
人にはこの状況が見えてないからね。
シアンはフォスや妖精と遊んでいるんだが、
はたから見ると一匹で飛んで跳ねて尻尾を振って、
楽しそうに見えるのだろう。
シアンの成長にもフォスの環境にも、
これが今はベストかもしれない。
「さてお昼にしますか」
瑠璃はデスクから離れると、キッチンに歩いて行った。
シアンは頭のいい子で、
トイレもすぐに覚えた。
まだ距離を歩けないので、
朝に近所をシアンを連れて散歩に出ていた。
それを見てフォスが散歩に行きたがるので、
シアンをコピー空間に入れても大丈夫か妖精に聞いてみた。
「人間じゃなきゃ問題ないだろ?
気になるなら瑠璃が空間に入れる時に、
魔法でくるんでやれば? 」
ネルに言われ、
魔法で体を包み、皆で裏の竹林に入った。
普通に空間を抜けられた。
ここならフォスにリードを持たせても問題ない。
瑠璃は楽しそうに散歩する姿を見て、
今度はドッグランやドッグカフェに連れて行くかと思った。
万が一知り合いに会ってしまっても、
魔法で誤魔化せば大丈夫だろう。
そういえばフォスは、
この所体調がいいようだ。
ここに来た時は咳が出たり、
熱が出たりして、
瑠璃もあたふたしていた。
病気にならないはずの王子が何故? と、
あの時は魔法が使えなかったこともあり、
妖精に治療してもらっていた。
原因は地球環境が悪すぎて、
フォスの小さな体に負担がかかっていたようだ。
宝石料理を食べるようになり、
それもなくなり、
瑠璃も魔法を習得したおかげで
問題もクリアできている。
日々レベルアップしているのだ。
しかもあの鏡の中から力を取り込んだフォスは、
自然と危険を回避していた。
体を薄いバリアが纏っているのが見られた。
きっとあれは、
フォスがここで暮らすために必要なものだったのだろう。
瑠璃は鏡を魔法で取り出すと、
再び開いてのぞいてみた。
だが何の反応もない。
手紙も読めないし、
あの時お祖母さんは何を伝えたかったんだろう。
瑠璃はじっと鏡を見つめた。
鏡を手に入れた後、
エリスの言葉をもう一度確認したくて、
妖精に聞いた。