【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~第四部 第六十四話「フォスの名前」
第六十四話「フォスの名前」
「この子の名前も皆で一生懸命考えたの。
フォスフォシデライトって石の名前なのよ。
これは光を運ぶ石で、
フォスには沢山の幸せを運んでくれる、
そんな願いが込められてるの。
だから光のお名前なの」
「石なのに名前があるの? 光? 」
幸人が不思議そうに言った。
「そう。どんなものにもお名前はあるのよ」
「幸人だって人間で男の子だけど、名前は幸人でしょ」
母親の言葉に驚く顔をした。
瑠璃はそんな姿に、
「光は色んなものを包んで運んでくれるの。
今日もこうやって幸人君とお友達になれたでしょ」
そういうと今度はフォスを見た。
「お友達と仲直りできる? 」
「うん」
「僕もごめんなさい」
二人は笑顔になると、
手を繋いで駆けだして行った。
そんな二人をホッとした様子で見ていた母親が、
「フォスフォシデライトって石があるんですね。
初めて知りました」
と瑠璃に言った。
「一般的な天然石じゃないですからね。
見てみます? 」
そういってスマホの画面を見せた。
「紫色なんですね。紫って言ったら、
アメジストしか知らないわ」
笑う母親のその胸元で、
ペアシェイプの大ぶりのアメジストが揺れた。
「品質のいいアメジストですね。綺麗です」
瑠璃が言うと彼女は嬉しそうに話した。
「最近、ちょこっと宝石に興味が出て、
これ通販で購入したんです」
「今は専門の番組もありますものね」
「高いから、
ちょっと頑張った時だけ時々買っちゃうんです」
「いいですね」
瑠璃も笑顔でフォスとシアンを見ながら話した。
「うちは一人っ子だからか少しわがままで、
それで主人が犬を飼おうと言って、
今日は初めてのドッグランなんですよ」
女性はそういうと、
ラブラドールの子犬と幸人を見ながら話した。
「私達も初めてのドッグランなんですよ。
うちは片親なんで、
里親のお話を頂いて子犬を迎えたんです」
瑠璃は笑顔で話した。
フォスと幸人が楽しそうに子犬たちと走る姿に、
親達は微笑んで見ていた。
「あの、そのフォスフォシデライト? って、
どこで買えますか?
派手過ぎずに落ち着いていて綺麗ですよね。
ペンダントトップとかあるのかしら」
「ありますよ。
お値段もリーズナブルですから。
もしよかったらこのお店のHPをのぞいてみてください。
なんだか営業みたいですけど、
私ここで働いてるんです」
瑠璃は笑うとQRコードを見せた。
「あら? 」
女性は笑うと自分のスマホに取り込んだ。
そのあと暫くしてから、
幸人たち親子と別れ、
瑠璃たちも家に帰ることにした。
シアンも疲れたのか眠っている。
汚れた体を拭くと、ドッグスリングに入れて抱き上げた。
フォスもあくびをしていたので、
ゆっくり歩きながら駐車場に向かった。