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【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~第五部  第六十七話「フォスの事」


第六十七話「フォスの事」

太一が首を傾げて考えていると、

それから少しして瑠璃が小さな子供を連れて入ってきた。

えっ?

太一が驚いて瑠璃を見た。

「社長に少し話が合って」

瑠璃はフォスを抱きあげて言った。

二階で春木と翠がフォスの相手をして、

遊んでくれていたので、

瑠璃は太一と美津子に伍代に言ったのと同じ説明をした。

「はぁ、そういうことか。さっきね、

ドッグランで瑠璃ちゃんに紹介してもらったって女性が来て、

ペンダントトップとピアスを購入していったんだけど」

「彼女来てくれたんですね。

向こうもお子さん連れてドッグランに来てたので、

少しお話したんですよ。

品質のいいアメジストを付けてて、

それでお話が天然石になって」

「そうなんだね。

お客さんがフォス君て言ってたから、

もう一匹犬を飼ったのかなと思ったんだよ」

太一が笑った。

「犬はシアンだけで十分ですよ」

「そうよね。

今度はあんな小さな子のママにもなるんだものね」

美津子もキャッキャと笑うフォスに笑顔になった。

「でも瑠璃ちゃんは家を相続して、

次から次へと大変だよね」

「まぁ、物は考えようで、

老後の面倒は見てもらおうかと思って」

と瑠璃は冗談交じりに笑った。

「お客さんがフォスフォシデライトって言ったんで、

珍しいなと思ったんだよね。

フォスつながりだったんだ」

「フォスの名前がそこから来ているらしいので、

その説明をしたんです」

本当のところは不明だが、

光る竹から出てきたことを考えても、

あながちでたらめという事もない。

「そういえば瑠璃ちゃんも日本人離れしてるし、

フォス君を見ても、

遠い祖先に外人の血が入っているのかもしれないね」

太一が言った。

それからのフォスは人の子としての市民権を(魔法でだが)得たので、

出掛けるのも楽になった。

少しずつ人間の子としての生活にも慣れ始めた。

このまま魔法を使う年になった時、

この子が戸惑わないよう、

見守っていこう。

その間に宝石王国から何かが来るかもしれないし、

来なければそれに越したことはない。

フォスが大人になれば、

自分の出自に戸惑ったとしても、

祖母の血も瑠璃の血も引いているわけだから、

振り回されることはないだろう。

瑠璃ですらフォスをシアンを妖精を育てている。

大丈夫。

瑠璃は楽しそうにアニメを見ているフォスに笑顔になった。

アニメのお陰か、

フォスは自然とこの国の言葉を話せている。

妖精とは母国のリソス語を使い分けて、

それが普通になっていた。

居間のテーブルでは妖精たちが、

真剣にアクセサリー作りをしている。

王国ではデザインという概念がなかったようで、

昔からの形に石を変えて、

ポンポン作っていたらしい。

この世界に来て、

石に合わせたデザインを考えるのが楽しいと、

思いつくと石を並べていた。

なので瑠璃のイベントブースは、

デザイン違いで幾つか数を揃えることにした。

会社の動画にも瑠璃のブースの紹介が入り、

販売する作品の一部も紹介された。

その事でも問い合わせがあったようで、

妖精たちにその話をしたら、

夢中になってデザインを考えていた。

もう少ししたら、

今度はシアンのトリミングデビューもしないとな。

瑠璃が自分で爪切りからカット迄しているが、

プロじゃないので長毛犬の扱いは難しい。

太一たちが通っているトリミングサロンを紹介してもらったので、

瑠璃もそこにお願いするつもりだ。

「イベントで少しでも売り上げが出ないと、

君のご飯は量が多いから大変」

瑠璃はシアンにご飯を用意すると、

食べてる姿に笑った。



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八雲翔
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