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【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~第三部  第四十九話「焦る者達」


第四十九話「焦る者達」

「知りませんよ。

ただ、私の家が家捜しされても警察が動かないくらい、

やばい人間が祖母の何かを探っている、

ということくらいは馬鹿な私でも分かるだけです」

瑠璃が両横の男の顔を交互に見た。

その美しい顔に一瞬怯んだのを見ると、

瞬間移動し、背後に回って気絶させた。

全て魔法で指一本で出来る。

瑠璃の近くで男二人が倒れるのを見た店員と客が、

驚いたように近づいてきた。

瑠璃は関係ない風を装い、

「盗撮犯」

とぼそっと呟き店を出て行った。

その言葉に店内では客と店員が大騒ぎしていた。

「盗撮? うちの子どこ? 狙われたかも」

「警察呼んで! 警察! 」

「なんで気絶してんの? 」

「知らないわよ。痴漢よ。痴漢~」

「盗撮魔ですって! 」

そんな客が騒ぐ声を聞きながら、

瑠璃はふんと鼻で笑った。

――――――――

そんな出来事が高木たちの耳に入ったのは、

事件が起こってすぐの事だった。

「今回失態を犯したのは内調の職員だったそうですよ」

石橋が驚いた様子で言った。

「あの女どんな手を使ったんですかね」

「さぁな。ここまで来ると何としてでも、

その三種の神器を手に入れたいってことが分かったな」

高木は部屋に入ってきて椅子に座った。

「班長からの呼び出しでしょう? 

やっぱりあの女の事ですか? 」

石橋は高木が買ってきたバーガーショップの袋を受け取ると、

中身を取り出した。

「こっちも同じだよ。

三種の神器を手に入れろってさ。

内調さんも上からの圧力に限界だったんだろう。

毎日毎日怒鳴られ、機嫌の悪いボスに頭を下げ、

俺だって疲れる。

上は文句だけ言って命令するだけだからな」

「じゃあ、うちも女を拉致するんですか? 」

「しないよ。観察するだけ。ここはそういう部署だから。

第一彼女の生活をこれだけ見てるのに何もないだろう。

本当に何も知らないんだと思うよ。

個人情報だって趣味から貯金から、

全てチェックしてるんだから、

これ以上何もできない」

「そうですよね。

最近は俺も政府推奨のアプリは全部やめました。

だって指一本で大臣も職員も、

国民を調べ放題じゃないですか。

俺、彼女が今日どこで何買って、

何食べたか、全部わかってます。

自分の彼女の事より詳しいです」

石橋がバーガーにかぶりついた。

怖いって今更………

案外、

石橋みたいなやつが多いのかもな。

高木はそんな相棒を呆れた顔で見ていた。

―――――――――

瑠璃が家に帰るとすぐに伍代が家にやってきた。

「瑠璃さん、今日何かあった? 」

伍代が風呂敷包みを持ってきて言った。

瑠璃は伍代を部屋に入れると、

「今、お茶淹れますね」

とキッチンに行った。

伍代がサークルに近づくと、

「シアンちゃん~

ちょっと見ないうちにまた大きくなった? 」

と頭を撫でた。



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八雲翔
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