【連載小説】『独り日和 ―春夏秋冬―』その25
「三人でイベント」
それから三人は、
時間が合えばイベントに出るようになり、
花華はパートをしながら、
椿は縫製の内職とオーダーを受けながら、
ネットショップと合わせて、
少しずつ売り上げを出していった。
この日は花華のパートが午後はお休みなので、
冬のお家で夕飯を一緒に食べることにした。
「せっかくだから、椿さん、陽斗くんも呼んで、
焼き肉パーティーでもしましょうか」
「そうですね」
冬は椿に連絡し、
そのあとスーパーに買い物に出かけた。
「春も小春も今日はお肉だよ~」
そういいながら、皆で楽しい夕食を過ごした。
「そういえばシュートくんは、
霊能者認定試験取ったって本当? 」
花華が焼き肉を食べながら冬を見た。
「そうそう、なんかね。
お掃除屋さんしてるでしょう。
訳あり物件などもあって、
霊感のあるシュートくんはよく呼ばれるらしいの。
でね、資格取って、
給料が上がったんですって」
「へえ~」
冬の話に椿たちはびっくりした顔を見せた。
「今までも幽霊退治を無料でしてたから、
技術料って言うの?
それがちょっぴり上乗せされて喜んでるわよ。
耕太がいっそのこと占い師の資格も取って、
喫茶店に占いコーナーを作ろうって言ってる」
「あら、それいいじゃない。
私も占ってもらいたい」
花華はウーロン茶を飲みながら笑った。
数ヶ月前までは名前も知らなかったなんて、
こうやって見ていると信じられない。
楽しそうに話す彼女たちを、
冬は嬉しそうに食事をしながら聞いていた。
冬の残りの人生は長くはないが、
彼らの為にもこの家を、
気軽に集まれるそんな場所にしたい。
そんな思いでいた。
春夏秋冬。
この家の景色はどんな歴史を刻むのだろう。
冬は窓から見える月を見て微笑んだ。
十年後――――――――
「のぞきに来てやったぞ」
耕太がシュートと一緒にやってきた。
耕太は喫茶店のマスターになり、
結婚したもののうまくいかずにバツイチ。
シュートは占い霊媒師として、
下町のあんちゃんと呼ばれ、
フリーで霊媒師の仕事を受けていた。
普段は喫茶店の奥で占いをしていて、
かなり繁盛しているようだ。
「お互い年取ったよな」
耕太が笑う。
「あんたたちはまだ三十代でしょ。
私達なんか五十代よ」
花華が言うと、
「俺はぎりぎり二十代。
シュートは三十代だけどな」
耕太が言う横で陽斗が意味ありげに言った。
「じゃあ、僕が一番若いね」
「お前は若いんじゃなくて、まだガキなの」
十四歳の陽斗の頭を小突いて耕太が笑った。
「へえ~ちゃんとお店になってるね」
家の半分を店舗にし、
スキップフロアとキッチンのあった場所には、
壁を入れてプライベート空間に作り替えた。