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Book Review 『優れたリーダーはみな小心者である』

荒川詔四 著  (2017) ダイヤモンド社


学んだこと

「リーダーシップとは、メンバーを無理矢理動かすことではない。あるべき姿を示して、メンバーの共感を勝ち取ること、一人一人のオーナーシップを尊重することで、チームが自発的に動き出す状況を作ること」。著者が、海外工場での現地社員との軋轢など数多くの大変な経験から学んだという、大変重い言葉である。
 そしてこれは、自己裁量権を与えるという点で、職務特性理論(Hackman and Oldham, 1976)自己決定理論(Ryan and Deci,2012)に通じる点や、Google社での心理的安全性の研究(心理的安全性と生産性の高さは相関があるという社内調査結果)と一致する指摘だと思った。その他にも、他責ではなく自責で行動する、他者から学び続けるなど、おごり高ぶらない著者の謙虚な姿勢が感じられた。

もっと知りたかったこと

一方で、やや抽象的な描写が気になった。「部下の自尊心を傷つけない」「世界を臆病な目で見つめる」など、そのための具体的な方法をぜひ知りたい。また、外部要因によっては実行が難しい(現実と乖離している)指摘も気になった。たとえば、
・自由闊達に物事を言える組織になるよう心がけること
・組織内の人間はGesellschaft(目的達成のために作為的に創り上げた集団)であり、Gemeinschaft(感情的な結束集団)ではないので、組織内で人間関係の好き嫌いをいちいち出すこと自体問題だ
・単にコストカットではなく、カットした分を投資に回すlean & strategicが必要
・組織がlame duckに陥らないよう常に変化を起こす組織になる必要
これらは、その通りだと思うものの、では180度違う組織に身を置いた際にどのようにそれらを実現するのか、ぜひお考えをお聞きしてみたい。

Reference

Deci, E. L., & Ryan, R. M. (2012). Self-determination theory. Handbook of theories of social psychology, 1(20), 416-436.

Oldham, G. R., Hackman, J. R., & Pearce, J. L. (1976). Conditions under which employees respond positively to enriched work. Journal of applied psychology, 61(4), 395.

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