新しい組織発展モデルの探究『俺たちのグレイナーモデル』を構想してみよう
このnoteは、2023年MIMIGURIアドベントカレンダー14日目の発信です。
12月頭から25日まで、毎日MIMIGURIメンバーが6つの中からテーマを選んでnoteを書きます。他のメンバーの記事はここから読むことができます。
偉大な経営学者と急成長メガベンチャー経営者と「勝手にコラボ」しちゃおう
先日私の先輩であるマネフォワード社COOの竹田さんに「組織づくりに関するnoteを書いたからそれに寄せてアンサーnoteを書いてよ」とお話をいただきました。
「えなに?アンサーnote?」と聞き慣れない言葉に戸惑いと何となくの恥ずかしさを感じながらも、まずは竹田さんのnoteを読んでみました。
内容を一言で表すと竹田さんによる『俺のグレイナーモデル』でした。
グレイナーモデルとは、アメリカの経営学者であるラリー・E・グレイナーが提唱した、企業の発展を5段階で定義し、各段階で発生しがちな課題とそれを乗り越える為の適切なマネジメント行動についてヒントを与えてくれるモデルです。1979年に提唱されたものでやや古く感じられますが、今なお経営・マネジメント層の間では度々参照されているシーンを見かけます。
竹田さんのnoteがグレイナーモデルを下敷きにして書かれたものかどうかは不明なのですが、これまでのご経験に基づいた素晴らしい実践知だったので、そこに研究知(HBRのこちらの記事)と、竹田さんと同様に様々な組織のフェーズを経験してきた私のこれまでの経験知も重ねることで、グレイナーと竹田さんと私による『俺たちのグレイナーモデル』を勝手に構想してみたら、少しは参考になるヒトもいるかもと思うに至り、このアンサーnote(?)を書いてみることにしました。
これを書いた上で、竹田さんと対談などを通じて更に深められたら面白いだろうと、次のステップも(未だ許可を取っておらず)勝手に妄想しています。
私個人のMIMIGURIでの探究テーマである「多角化経営モデル開発」にも含まれる内容であり、アドベントカレンダー的には「探究」・「理論と実践」の2つに跨るテーマと言えるかと思います。
グレイナーモデルの概略を書いてみる
まずは話の土台となる、グレイナーモデルの概略について。様々な場所で解説されているので、できる限りポイントを絞って記載してみます。
Point①
組織の発展段階を5つのPhase(図1 Phase1-5)に定義
Point②
各Phaseには 進化している段階(○○による成長)と 革命が必要になる段階(〇〇の危機)が存在し、1つのPhaseの革命段階(〇〇の危機)を乗り越える為に必要なマネジメントの処方箋を、次Phaseの進化段階が示唆してくれる構造になっています。 例えば、Phase3の進化段階のマネジメントスタイルは「移譲」ですがそれはその前のPhase2における「自主性の危機」に対する処方箋にあたります。
Point③
線の傾き(成長スピード)は産業成長率の影響を受ける(図2)
例えばマネ―フォワードさんの場合、Fintech SaaSという成長著しい産業をドメインとしているので、急な傾き(=短期間で大きく成長する組織)であり、進化段階と革命段階を猛スピードで乗り越えられてきたのではないかと推察します。
グレイナーモデルの効用を言語化してみる
Q. どう活用できるのか?
このモデルは各段階で発生しがちな課題とそれを乗り越える為に適切なマネジメント行動のヒントを与えてくれるものです。将来の問題をある程度予測し、革命(危機)が手に負えなくなる前に首尾よく対応できたり、次の進化段階に適した計画を前もって準備することが可能になります。
Q.活用範囲は?
創業からの拡大の変遷を辿る見方をすることが多いので、スタートアップやベンチャー企業の組織成長文脈で語られるケースが多いかと思います。
但し、大企業も事業部やグループなど、数名から千名単位くらいの小・中・大規模組織(チーム)の集合体です。大企業の中で成長していく事業部や機能組織などにおいてもグレイナーモデルを組織課題対応に活用可能です。
『俺たちのグレイナーモデル』を考えてみよう
ここからが本題です。グレイナーモデルの記事・竹田さんのnote・私の経験知の3つを往復し、グレイナーにも竹田さんにも許可を取らない状態で笑、勝手気ままに『俺たちのグレイナーモデル』を構想してみたいと思います。
Phase1のテーマ|創造性による成長 → リーダーシップの危機
まずはPhase1に関するグレイナーの記事を整理・意訳してみます。
改めて記事内容に立脚して整理をしてみると色々と納得させられる内容ですね。さすが偉大な経営学者であるグレイナー先生です。
ここに竹田さんのnoteと私の経験知を基に加筆したいポイントを書いていきます。
Phase1で加筆したいポイント①|ルールデザインで学習を促進し業務効果を高める
0から1を立ち上げるPhase1では「製品と市場の創造」に全てが注がれる=裏を返せばマネジメントを軽視している状態であるのは、私のこれまでの経験上も、むしろそれが正しい感覚があります。
価値を提供し対価をいただく、という商売の基本の『キ』をどうにか成立させようと必死な段階でマネジメントの話をするのは時期早尚と感じるのが当然のように思えます。
但し、マネジメントという概念をもう少し子細に見つめてみると、例えばひとつの切り口として、業務を効果的に進めるための業務マネジメントと、一緒に働くメンバーに関する万事(よろずごと)を管理・促進するピープルマネジメントと大きく2つに分けて定義することもできます。
その中で特に業務マネジメントは、マネジメントを軽視しがちなPhase1でも不可欠なものだと言えます。
例えば、まだプロダクトのプロトタイプを提供し顧客のフィードバックをもらいながら改善していく段階において、フィードバックのもらい方・その情報の蓄積方法・蓄積した情報からどんなサイクルでインサイトを抽出し・プロダクトに反映していくのか?などの業務効果を高める(最低限且つ柔軟な)ルールをデザインし、「製品と市場の創造」実現に向けての学習を素早く・大量に・効果的に回していくことが非常に重要です。
至極当たり前の話に聞こえますが、とにかく目の前の顧客への必死な価値提供とそれに関連する種々の対応に追われることで、この辺りまで気が回らない組織は実は多いのが実態ではないでしょうか。
Phase1で加筆したいポイント②|大胆な目標設定で個とチームの創造性を最大限に引き出す
事業ドメインにも依りますが、大抵の場合、製品と市場の創造を実現する為にはなるべくスピーディ且つ大きくシェアを獲得することが肝要です。
その為には、Phase1においても上手な目標設定で組織を方向付ける必要があります。
更に、私が以前書いた下記のnoteと、竹田さんのnoteの中で、このPhase1において共通して主張していたのが、大胆な目標設定の重要性です。
多くの人が論理的に考えてリーズナブルと感じる収束された目標より、狂気じみているとすら表現できる桁違いに大胆な(ムーンショットどころかマーズショット!な)目標を掲げることで、強制的に思考の制約を外し「個と組織の創造性を最大限に引き出すことができる場合があることを私も、(きっと)竹田さんも身を以て経験してきました。
※但しこれには発動条件(高いスキルレベル基盤)があると私は考えおり留意が必要です。
また、企業が目指す成長度合いは様々です。
竹田さんや私がいる(いた)環境は、ある程度同質性が高めなメンバーが短期間で爆発的な成長を目指すスタートアップ/ベンチャー企業でしたが、多様なメンバーと一定の成長スピードを志向している企業の方が実態としては大多数です。
そういう企業における目標設定は大胆さで創造性を引き出すことが適切ではない場合もあると思います。
このように、意義や意味付け、長期的な問いを込めることに重きを置く方が有効な場合もあるので参考までに。
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Phase1で加筆したいポイント③|創業者と幹部の相性問題をチームで乗り越える
もうひとつ、Phase1で加筆したいポイントは、リーダーシップの危機を解決する鍵である、創業者から強力なビジネス・マネージャー(現場推進に責任を持つことになるCxOなどの幹部)へのDelegation時の難題である創業者と幹部の相性に関する話です。
これまで私は数名の尊敬する創業者と働かせてもらう機会に恵まれていますが、必ずと言っていいほどここが大きな難関になります。
創業者が幹部に求めるのは「ここから先の現場を牽引するリーダーシップ」と表立っては表明されます。一方で、実際に現場で着実にリーダーシップを発揮し、設定した目標は確実に達成するしメンバーからの信頼も厚いという文字通り理想と言える状態を実現していても、創業者はすぐに物足りなさを感じるようになります。
物足りない何かとはズバリ、アントレプレナーシップ(リスクを恐れず、常に新しい何かを打ち出し、世の中の課題を解決していこうとする精神や姿勢)です。
創業者がこの「アントレプレナーシップ」を求める理由は、3つほどあるように私には見えています。
一つめは、自社の器の拡大期待です。Phase1の進化段階においては主に創業者が自社を牽引します。しかし、Phase1後期に差し掛かり、組織が数十人規模になってくるとそのスタイルの限界が見えてきます。所謂、トップの器以上に会社は大きくならないと言われる話です。当然創業者は並々ならぬ努力で自身の器を拡大させていきますが、自分と同じように、もしくはそれ以上に器を拡大させることができる幹部がいればもっと早く・より大きくすることができます。それを期待するのは自然な話です。ただ、これまでの成長の軌跡やそこで培われた強みなどがわかりやすく整然と開かれている状態であることは殆どなく、幹部は非常にハイコンテクストな環境のキャッチアップに精一杯で、いきなり強いアントレプレナーシップを発揮することは中々難しいのが実態です。
二つめは、サクセッションの期待からくる不安です。現場でリーダーシップを発揮し持続的な成果を上げる手腕が確認できたら当然その先(創業者自身の更なるサクセッション)を期待することになります。例えば自身が新規事業にフォーカスし、既存領域を後を丸々任せるとすると・・・といった具合に、シミュレーションが具体的になってくることで、ある程度形ある事業運営はできるけど、これから先もっと激しくなっていくであろう環境変化にも大胆な発想と姿勢で次々と新機軸を打ち出して適応していける力はあるのか??と疑問や不安を感じるようになるのではないでしょうか。
三つめは、刺激的で面白い人と仕事をしたいという人一倍強い欲求ではないかと感じています。誰しも一定はあるこの欲求ですが、冒険心が強い創業者のような人には特に強い欲求である気がします。「あの人(幹部の〇〇さん)と話していても面白くないんだよね / あの人ってすぐ置きにいくんだよね」はこれまで一緒に働いてきた創業者からよく聞く言葉の一つです。
しかし、上述のハイコンテクストな環境の難しさや、現場を高度なマネジメント知識や技術で牽引する堅実なタイプが、大胆なアントレプレナーシップも持ち合わせているケースは稀であり、それらがこの問題を難しくするポイントです。そして、これを更に難しくするのが、幹部にアントレプレナーシップがあり過ぎても究極的にはうまくいかない点です(どないやねんっ!!)
自分がやりたいと思っていることや正しいと思っていることを突き進めたいという根源的な欲求は誰にでもあるものですが、創業者のそれは人一倍強いと言えるでしょう。だからこそ独立・起業をしているわけでもあり(厳密には独立・起業をしてもステークホルダーの調整事は多くなる場合すらあるのですが)、幹部が違う方向性のアントレプレナーシップを発揮し、そこにこだわり続ける人であれば「だったら違う場所で自分のやりたいようにやりなよ」となるのは納得する話でもあります。よって、究極的には自身と同じようなアントレプレナーシップが強過ぎる人とは相性が良くないことが多いのです。双方が強い世界観を持っているお笑いコンビやバンドが解散してしまうのと似た話だと思います。
つまり、創業者と相性ピッタリの理想の幹部とは、『現場でリーダーシップを発揮し目標達成を実現し続け、大胆なアントレプレナーシップも持ち合わせた面白味に溢れた人間であるけど、創業者がやりたいことを・一定のやりたい方向性で実現するビジョン共感や適度なフォロワーシップを兼ね備えた人』ということになります。
当然これを全て実現できる人は相当に稀有であり、採用も難しい。
奇跡的にそのポテンシャルを秘めた人が採用できたとしても、創業者との相性問題で辞めてしまうケースをしばしば見ます。
その為、大事なことはこれが相当な難度である事実を客観的に受け止め、冷静に必要な機能を定義・整理し、(創業者も含めた)数名で分担したりすることで「チームで」リーダーシップの危機を乗り越えることだと私は考えています。
※よくあるケースはアントレプレナーシップの発揮は創業者が引き受けて新規事業に専念することで棲み分けを行ったりしますが、創業者のタイプなどいくつかの変数が存在し一筋縄ではいかないケースが多いです。
第1回目の探究の終わりに
書きたいことが多くてPhase1までで8,000文字近くになってしまったので、ここまで(導入とPhase1まで)を第1回として一度締めたいと思います。
最後に『俺たちのグレイナーモデル』としてPhase1に加筆したい「2つの前提と3つのポイント」を改めてまとめます。
ここまでお読みいただきありがとうございました!!
こちらのテーマは探究を続けていくので深めたら適宜更新していきます。
次回(Phase2以降)も近日中に公開しようと思っています。
明日以降も引き続きMIMIGURIアドベントカレンダーをお楽しみください♪
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