【研究ノート3】リーダーシップ理論(その3)「シェアード・リーダーシップ」
「ティール組織」という分厚い本を買った。が、なかなか全部を読めていない。従来のヒエラルキー(ピラミッド型)組織に対してホラクラシー(フラットな)組織が前提の話で、従来の「上司」ー「部下」という関係を変えていく話。今までなんだかもやしていたものを払拭するような組織形態であり、今後の組織はこうなっていくのかなあと思っている。
学術的にリーダーシップについては、研究ノート1で述べたように「資質理論」「行動理論」「コンティンジェンシー理論」「LMX理論」「TSL/TFL理論」と進んできているのだけれど、対して2000年代から「シェアード・リーダーシップ」というものが提唱されている。この考え方は「ティール組織」にもつながるので、今日はその話をしてみます。
従来のリーダーシップ理論というのは上司(リーダー)がいて、部下(フォロワー)がいて、その関係性を見ていた。つまり「グループにおける特定の一人がリーダーシップを執る」という前提だったのだけど、このシェアード・リーダーシップは従来の考え方と全く異なり、「グループの複数の人間、時には全員がリーダーシップを執る」と考える理論である。従来の垂直的な関係(タテ社会)ではなく、水平関係(ヨコ社会)に変えてしまうというリーダーシップである。
私個人の話になるけれど、社外の勉強会ということで、ソフトウェア販売を行っている株式会社アシストの「アシストソリューション研究会」に2000年頃から参加しているのだが、この分科会活動が、まさにこのシェアード・リーダーシップを発揮していると思っている。この分科会活動はいろいろな会社のメンバー10人程度で構成されており、特定のテーマについて1年かけて議論し、論文執筆と研究発表を行うものだが、このメンバー間の関係が、社内のしがらみもなく、非常にフラットな関係で、しかしながら論文内容はものすごく高度な成果を出している。参加した人に聞くと、口々に会社以上にパフォーマンスが高く勉強になったと答えている。(参照:2014年のインタビュー記事)
この分科会活動が非常にフラットな関係で、リーダーが誰ということもないのに成果が出るのは、「そのチームに帰属して研究をしようという意識が高い(全員がリーダーとしての役割・帰属意識がある)」「他社の聞いたことのない事例と自社の事例を比較検討できる(知の交換ができる)」「期限が決まっており成果を出す必要がある(他チームとの競争意識の誘発)」というようなことがあるからなのかなと考えている。また、毎月それぞれの会社を訪問して「場」を変えることで刺激を受けたり、毎月の議論のあとにメンバー同士で飲み会をすることで、メンバー間の心理的交流がはかれているというのも大きいのではないかと思う。
学術的にもクレアモント大学のクレイグ・ピアースらが2002年にある自動車メーカーの変革チームを調査し、垂直型よりもシェアード・リーダーシップ型の方がパフォーマンスが高いという論文を発表している。
であれば、社内の組織を「アシストソリューション研究会」のようにすればよいのではないかと思う。つまり非常にフラットなチームをいくつも作り、上下関係をなくしてしまうということである。
あるのかないのかわからないような「部長」とか「課長」とかの肩書にしがみついているオヤジたちが多い企業ではなかなか取り入れにくい話ではあるが、そういう人たちが組織の進化にストップをかけているという事実は明白だと思う。
しかしながらルーティーンな仕事の場では、働きアリの法則のように、ほっておくと2割は一生懸命働くけれど、6割は適当に仕事をし、2割は何もしない状態になってしまう。ソリューション研究会のようにみんなが一生懸命になるには、そもそも仕事の内容が全員がワクワクできる仕事でなければならないだろう。
そのためにはどうすべきかということを明日また考えてみたい。(➾明日はティール組織について)
【今日の研究】
「断続的均衡モデル」について研究。
組織はインクリメンタル(漸進的)な変革を常に行っているが、ある時不連続な急進的な変革を行うとするモデル。今回のコロナ禍のような環境変化、CEO交代、業績の悪化などのターニングポイントで急速な変化が起きるとするもの。
上記の急進的変革に対して、リーダー不在状況の漸進的変革であっても、急進的な組織変革もできるとするプロウマンらの研究もあり、今回のシェアード・リーダーシップにもつながる話になっている。