スーダン水公社職員と将来像を描く(2019年2月号)
※本記事はIDCJ SDGs室がこれまでのメールマガジンで取り上げた特集です。掲載内容はメールマガジン発行当時の状況に基づきます。
筆者は最近8年間、アフリカのスーダンでJICA専門家として技術協力プロジェクトに参加しました。このプロジェクトは「州水公社の技術・経営の能力向上」が目的です。スーダンは18州各州に州水公社があり、飲料水の供給を行っています。本プロジェクトはこれら全部の州水公社の能力向上をいっきに図ることは難しいので、パイロット州水公社として3つを選びました。カッサラ州、白ナイル州、リバーナイル州の三つです。そこで
1)これら三州水公社が抱える技術・経営の課題は何か
2)この課題にどう対応して、技術・経営の能力向上を図ったか
3)この能力向上で苦労したことは何か
を述べます。海外の経済協力に関心のある若い人にコンサルタントの仕事を知っていただければ幸甚です。
1)州水公社が抱える技術・経営の課題は何か
この8年間のJICA技術協力プロジェクトの活動により、スーダンの多くの州水公社は次の課題を共通に抱えていることが明らかになりました。
・データが不足
多くの州水公社は水取水量、水圧、顧客への配水量、薬品投入量など基本的なデータの多くを実測していません。
・業務目標が不明確
前述のデータの不足により、水生産量、水圧、凝集剤、塩素投入量などの現状の値、および短期・長期にどこまで改善するか、業務目標が不明確です。
さらに「予算と計画の不整合」「顧客との対話の不足」という課題を抱えていました。
2)この課題にどう対応して、技術・経営の能力向上を図ったか
そこで3つのパイロット州水公社に「経営委員会」を立上げてもらいました。この委員がデータを収集、経営目標を定め、業務指標を設定し、それを総合して、事業計画を作成しました。州水公社の職員と関わることで、これらの職員が経営・技術の向上に向けて努力するように促すのがJICA専門家の役割です。
州水公社の「経営委員会」は筆者と話合い、経営目標を「質量ともに持続的な給水」「経営の改善」「顧客サービスの向上」「職場環境の改善と人材育成」の四つとしました。この経営目標を「事業計画2017-2020年」に組み込み、各々の経営目標に業務指標を設定しました。例えば「質量ともに持続的な給水」の業務指標は生産量、顧客数、残留塩素濃度、水圧等とし、実測して現在の値を確認しました。さらに2020年までにこの値をどこまで向上させるかを「事業計画2017-2020年」に記載しました。その後、「経営委員会」はその目標達成の度合いをモニタリングしています。
3)この能力向上で苦労したことは何か
事業計画をつくることは、職員が水公社の将来像を描くことです。定例業務しか行わない職員にとって、以下の業務が難しいことでした。
・「経営目標」をつくり、職員が共有する
・この目標をどこまで向上させるかについて業務指標を設定する
・これらの指標の向上度合いをモニタリングする
上記の作業は水公社の技術・経営の向上にとって大事なことです。本JICAプロジェクトによって、職員が初めて「水公社の将来像を描く」作業を行いました。これがJICAプロジェクトの意義です。
当初は職員からの提案が少ない状況でしたが、その後、州水公社の「経営委員会」が主体となり、モニタリングするようになってきました。「州水公社の経営・技術の能力向上」のためには職員が主体的に動くことが大事です。それまで「待つ」「諦めない」を実践するように心がけましたが、まだまだ道半ばです。
->SDGsゴール6「安全な水とトイレを世界中に」
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