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サステナビリティ・レポートの構成要素(3)サステナビリティ課題との紐づけ

サステナビリティ・レポートには様々な視点から情報、分析、方針、戦略等が掲載されています。非財務情報開示にはGRIスタンダードをはじめ様々な枠組みがありますが、どれもサステナビリティ・レポートの構成や章立て等について特段の規定はありません。各企業が自社の判断でレポートを作成していると思われます。レポートの形態やページ数などは様々ですが、ある程度の傾向はあります。典型的なサステナビリティ・レポートの中に記載されている項目やテーマはいくつかあります。それらについて、数回に分けて内容を解説します。

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サステナビリティ課題との紐づけ

第一は、サステナビリティ課題と自社の事業活動との紐づけです。自社が事業活動を通じて、どのようにサステナビリティ課題と関わっているかを検討し、結びつきが強いものを取りまとめます。サステナビリティ課題としては、SDGs(持続可能な開発目標)のゴールを使うケースが目立ちます。AAA事業はSDGsゴール7(エネルギー)に貢献する、BBB事業はSDGsゴール13(気候変動)に繋がる、CCC活動はSDGsゴール5(ジェンダー)に資するといった紐づけです。比較的容易な作業なので、サステナビリティ・レポート作成の初期段階で行うケースが多いかと思われます。

こうした紐づけを通じて、自社が事業活動を通じてサステナビリティ課題に取り組んでいることがわかりやすく示されます。従業員にとっては日々の仕事を通じて、社会や環境面のサステナビリティに貢献していることを認識するのは、誇らしいことかもしれません。また、社外の顧客や取引先、投資家等に対しても、自社の事業活動がサステナビリティ課題に整合していることを明示できます。

前述のように、サステナビリティ課題としてSDGsを使う場合が多いです。日本でもSDGsは広く浸透しており17色のカラフルなアイコンで示される課題は、親しみのあるものになりつつあります。従業員の間で事業活動との紐づけを考える際にも、SDGsへの親しみやわかりやすさは好都合です。

国連グローバルコンパクト(UNGC)とGRIが作成した「SDGコンパス」などの手引書では、SDGsを事業活動と紐づけに使う際は、17個のゴールではなく、169個のターゲットレベルで行うことを推奨しています。その理由は、17個のゴールだとテーマが広すぎて、紐づけが曖昧で抽象的にならざるを得ないからです。例えば、ゴール12は「つくる責任、つかう責任」という表題が付いていますが、「リデュース・リユース・リサイクル(ターゲット12.5)」から、「食品ロス削減(同12.3)」、「廃棄物管理(同12.5)」など様々なテーマが含まれています。また、例えば運送業などの業種では、「交通事故の防止」は重要な活動ですが、17個のゴールを見ただけでは、これがSDGsのどれに紐づくのかわかりません。実はこれはSDGsでは、ゴール3「すべてのひとに健康と福祉を」のターゲット3.6「道路交通事故の死傷者を半減させる」に繋がります。ゴールレベルでなく、ターゲットレベルで事業活動との紐づけを行う方が、より焦点が絞られて明確な整理が可能となります。

しかしながら、169個のターゲットの中には、テーマがわかりにくいもの、民間ビジネスとは関係が薄いものも多く含まれています。民間ビジネスとSDGsターゲットとの関連性を説明するために、下記のような資料が作成されていますので、ご参照ください。
①    「SDGsゴールとターゲットの全解説」2022年、三井久明、東京図書出版
②    「SDGsに関するビジネス・レポーティング:ゴールとターゲットの分析」2018年(邦訳)、UNGC/GRI

また、ビジネス上のサステナビリティ課題が、すべてSDGsに取り込まれているわけでないので、見落としがあり得ます。GRIスタンダードには34冊の項目別スタンダードがあります。特にガバナンス関連の項目はSDGsターゲットとはつなげにくいものがありますので、SDGsを補完するためにもGRI項目別スタンダードも参照することをお勧めします。


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次回は「サステナビリティ・レポートの構成要素(4)価値創造プロセス」についてご説明します。 

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