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5.結論 共同育児、育児への父親の関与と家族のウェルビーイング
本書はイギリス政府平等局Government Equalities Officeの冊子「Shared care, father's involvement in care and family well-being outcomes」(2021.1)
文献レビュー
調査報告書作成者:社会政策学部、チョン・ヒジュン、
ケント大学社会政策・社会学・社会調査学部
の翻訳です。60ページほどの冊子なので、章ごとに記事にして公開していきます。この記事は、「結論」です。
この文献レビューが示唆するように、父親の育児への関与は、育児の公平な分担に加えて、子どもや保護者の様々なアウトカムに大きな影響を与えることが分かっている。要するに、父親が育児に関わることが、プラスの効果をもたらし、行動的な問題や感情的な問題などのマイナスのアウトカムが減少し、認知発達や学業達成などのプラスのアウトカムが増加することを示す証拠が見つかっている。しかし、分析した研究の大部分は、父親が子どもと過ごした絶対的な時間ではなく、時間の質、即ち、子どもを教育する活動や子どもの情操を育む活動に父親が関与することがより重要であると指摘している。加えて、父親の心理的な認識や感情的な認識は大切であり、例えば、どれほど子育ての役割に自信を持っているかなど、子どもと過ごす絶対的な時間よりも重要である可能性がある。
更に、父親が母親の就労と並行して育児に関わることで、成人期後半の子どもにより男女平等な労働の分担が生まれ、より進歩的な性役割になることを示す証拠があることもわかった。やがて、育児や家事の分担をより平等にすることで、ストレス軽減、特に母親のストレス軽減につながり、同時に親同士の関係の満足度を高め、婚姻やカップル関係の解消の可能性を減少させることを示唆する研究が豊富に存在する。また、分担そのものが問題なのではなく、女性が行う追加的な仕事をパートナーが適切に評価していない場合は勿論のこと、状況の公平性の認識、労働分配の理想型と現実のギャップが問題であることもわかっている。
最後に、家事と育児の平等な分担は、子どものアウトカムだけでなく、親のウェルビーイングにとっても重要であると結論づけることができる。検討した幾つかの研究や、より最近のイギリスベースの意見調査(Working Families, 2017; Chung et al., 2020)では、男女ともに多くの夫婦が、より平等な育児分担を望みながらも実現できていないことが示されている。COVID-19のパンデミックに照らすと、育児の不平等な分担は、特に育児の需要が高い時期に、女性の労働市場への参加能力に大きな悪影響を与えることにもつながることがわかる(Collins et al, 2020; Petts et al, 2020)。この結果、男女の平等に深刻な影響を及ぼし、パンデミック以前になされた数十年の進歩を元に戻すことになりかねない。
この文献レビューが示すように、父親が家庭でより大きな役割を果たすことができれば、家族と社会の両方に全体として利益をもたらすのである。
(了)