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運動施設での緊急搬送

「バタン!」と大きな音がした。
運動中だったお客様が倒れていた。周りに他のお客様が集まってきた。
慌てて近寄ると、その方は全身痙攣が始まっていた。
てんかんか?既往歴には書いていなかったはず、、、。と咄嗟に思った。

すぐに119番し、状況を説明した。
場に戻ると「仰向けにしよう」「足をさすったほうがいいかも」など年配のお客様が周りに指示を出していた。
救急隊の方に指示を仰ぐと「横向きにして顎を上げてください」とのこと。吐いたものが喉に詰まらないようにする基本の姿勢だ。
その間も、お客様は全身の痙攣が止まらない。
そのうち、大きないびきをかきはじめた。
つけていたApple Watchから警告音が鳴り響く。

AEDを用意し、呼吸停止に備える。中に入っているパッドの把手を引くと、すぐに大きな音で「パッドを装着してください」とアナウンスが鳴りはじめた。

その間、救急隊の方は電話で指示を出し続けてくださっている。
胸が上下に動いていたら呼吸していると判断する、その間はAEDは使わなくて良いこと。胸の動きが止まったら心臓マッサージをするので指示を出しますから大丈夫ですよ、と。

ほどなく救急車が来て、救急隊の方に引き渡せた。

そこにいた十数人は全員放心状態。
ハッと気づくと、AEDがずっと「パッドを装着してください」と言い続けている。どうにか電源を切って、静かにさせることができた。

時間を見ると閉店15分前だった。
皆さん運動の途中ではあったが、今日は帰りましょうということになった。

店を閉めた後、居合わせていたお客様に電話をした。特に入会間もない方から順番にかけた。電話口では皆さん大丈夫そうではあったが、このようなシーンを間近で見ると、後からフラッシュバックすることもあるので注意が必要だ。ずっと対応してくれていたスタッフも。
私自身も、寝る時が心配だったのでドラッグストアに寄り、気持ちを安定させるような漢方を買って帰った。


翌日、お客様のご主人に電話した。くも膜下出血ということだった。2週間が山だと。しかし倒れたのがそちらで良かったですとおっしゃっていた。
確かに対応は早かった。
お客様が入店されて13分後に倒れた。そして救急搬送されるまで12分間。全部で25分間の出来事だった。

そして夕方、今度は娘さんから連絡があり、意識が戻って会話ができるようになったということだった。
前日居合わせたお客様に連絡をとり、会話ができた旨を報告した。
本当に良かった。

この出来事から得たこと。
・現場にいる、声の大きな人の意見に流されないようにすること。仰向けにしろとか足をさすれとか、医療従事者でないのに感覚で言う人もいる。
・最新式のAEDは、社員全員で使い方を確認すること。毎回消防署で訓練を受けているが、消防署のAEDはめちゃくちゃ古い。ちょっと違っただけで本番では動揺する。
・事故現場に居合わせた方へのアフターフォローを準備しておくこと。今回は良い結果になったので良かったが、そうではない場合に備えておく必要あり。
・そして何より、その場にいた人たち全員で協力して行動できたことが良かった。それぞれできることをやって、単なる野次馬にならなかったのはさすがうちのお客様!

ちなみにAEDはどんな役目の器具なのか、ご存じだろうか。
一言で言えば「心臓の動きを止めるもの」だ。
勘違いされるのは「電気ショックを与えて心臓を動かすもの」と思われていることが多いのではないだろうか。

それは逆で、バグって異常な動きをしている心臓を電気ショックで一旦止めるのがAEDの役目だ。その後心臓マッサージを行うことで心臓が正常に動き始めるようにするという一連の流れになる。だからAEDの後は、必ず心臓マッサージが必要だ。
なんなら心臓マッサージが一番大事だ。
皆さん練習しましょう。

あとはご本人の復活を願って、コンタクトを取り続けていこうと思う。
昨日はよく眠れてよかった。





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