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体力をつけて夢を叶える:Kちゃんの決断


私は、街の運動施設に勤めている。
昨日、ある女の子が入会した。
名前はKちゃん、中学3年生だ。Kちゃんは小学生の時から不登校で、特に学校外の活動も行っていないため、いつも家にいる生活だ。

Kちゃんのお母さんは、前から運動を勧めていたようだが、ずっと拒否されてきた。それが急に、Kちゃん本人が「運動する」と言い始めたようだ。
理由は「体力をつけるため」だった。

今までも、何人もの不登校の子どもたちが運動施設に通ってくれた経緯がある。ご家族と通う場合もあれば、ひとりで通うパターンもある。いずれにしても、本人が自ら行動して運動施設に来るわけだから、これはすごいことだ。

今回、Kちゃんに、どうして行こうと思ってくれたのか話を聞いてみた。
Kちゃんは「行きたい高校があって、そこに通うには電車に乗って1時間通わないといけない。今の自分は、1日出掛けただけで疲れ切ってしまう。これでは高校には通えないと思った。だから体力をつけたい。」
という話を聞かせてくれた。

素晴らしいではないですか。
Kちゃんに、もう少し深掘りしてみた。「その高校に行って、何かやりたいことがあるの?」
するとそこに至るまでの話を聞かせてくれた。

「小学生の頃は、テレビドラマが大好きでよく見ていた。ある時、大好きだったドラマが舞台化されることがわかり、舞台を見てみたいと思った。お母さんと一緒にその舞台を見に行って感動し、もっと舞台を見たいと思うようになった。」

「ある時、地域の中高生のイベントで、舞台俳優さんが教えに来てくれるワークショップがあり、そこに参加した。とても面白くて、ますます舞台に興味が湧き、自分も演じてみたいと思った。」

「ワークショップでは自分の苦手なことをたくさんやった。動きながら自分の思いを口に出す、とか、周りの声に合わせながらみんなで一緒に小さな声から大きな声まで出してみる、とか。そして一番面白かったのは舞台の上で演じることだったから、そのためにもっと勉強したい。」

「行きたい高校は、演劇部がないのだが自由な校風なので、自分が頑張れば演劇部も作ってもらえるかもしれない。」


Kちゃんの中で、自分の未来に向けてのストーリーがちゃんと作られていた。ストーリーが描けた時に、モチベーションが湧き、一歩踏み出せる。その一歩が一番大変なのだから、Kちゃんの決断は素晴らしい。

もちろん、親御さんはそれまでにたくさんのきっかけを与え続けたことだろう。押してみたり、引いてみたり、きっとあらゆる手を尽くしたと思うし、この先もそうするに違いない。

私も親なので、Kちゃんのお母さんの気持ちはとてもよくわかる。子供がやる気になると、ついつい嬉しくて期待してしまうのだが、そこは期待しすぎず、どんと構えて見守ることが大事。私はお母さんのことも見守っていこうと思う。

Kちゃんの決断が、これから待っている楽しい未来への一歩となるように、スタッフ皆でサポートしていきたい。

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