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出社できないAさん

私は会社でマネージャーとして働いている。
大事な仕事の一つとして人材管理があるのだが、ここ数ヶ月出社できていないスタッフがおり、ずっと気にかかっている。

20代後半のAさん。色白で少しふっくらしているおっとりさん。
前職は管理栄養士として学校で働いていたのだが、そこで上司のパワハラにあったという。元々おっとりしている彼女は、その日に終わらせなければいけない仕事が、なかなか時間内に終わらなかったようだ。
ほぼ毎日仕事を家に持ち帰り、寝るのは午前1時を回っていたらしい。
そのうち体調を崩して休職、1年後に退社となった。

次の職場は病院だった。
そこでもパワハラにあった。毎日遅くまで上司に叱責され、体調を崩し、1年足らずで休職、退職へ。

その次にうちの会社に来た。
元々うちの会員だったAさん。お客様としては3年も利用してくれていたのでスタッフとも仲が良い。辛い休業中に頑張って通ってくれて成果も出ていた。そんな彼女が「ここで働きたいんです」と求人に応募してくれた時には大変嬉しかったが、背景を知っていた事もあり、採用を迷った。

しかし2度も挫折した仕事の経験をここで乗り越えて、自信に変えることができたら、彼女にとっては今後の人生が大きく変わるだろうという思いがあり採用に至った。

本来とても社交的なAさんは、生き生きと仕事に取り組んだ。だいぶのんびりペースな彼女だったが、持ち前の雰囲気の良さでカバーし、スキルも上がっていった。
そして、前からお付き合いをしていた彼と結婚することになり、忙しそうに準備を始め、私たちも祝福していた。

昼休み、私たちスタッフはみんなでご飯を食べる。その時に色々な話をするのだがAさんは、少し気になる話をしてきた。
「この前、母の日のこと忘れてしまって、母に何もしなかったんですよね。そしたら母はすごく怒って、もう何日も口を聞いてくれないんですよ。だから母の好きなアーティストの展覧会のチケットを取ったので一緒に行ってきます。」

その話にびっくりした私たち。
さらにその時知ったのだが、結婚相手もお母さんの紹介だったこと。
休みの日は、彼とお母さんと3人で出かけることが多いこと。
節目の日にはお母さんと2人で出かけること。
お母さんは、昔から怒ると10日くらい口をきいてくれないこと。

ここまで聞いて、今まで彼女に降りかかってきた出来事の原因がここにあるのではないかと誰もが思ったが、一番気づいていないのはAさん本人だった。
「でも、母は変わらないですから」
とあっけらかんと言って笑っていた。

Aさんはいよいよ数ヶ月先に向けての結婚式、新居の準備も始めることになった。
その頃からAさんに異変が出てきた。
明日また続きを記そうと思う。





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