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「ドキュメント72時間」の石川県立図書館
暮れに、NHKの「ドキュメント72時間」年末スペシャル、視聴者投票のベスト10の第6位に入った、「金沢 大きな図書館で」(8月30日放送)を観ました。
あのような番組の取材の仕方だと、当然、図書館側の許諾が要ることだと思いましたが、冒頭で「今回、声をかける取材に許可がおりた」というナレーションがありました。
以下、いくつか番組中、印象に残った来館者のインタビューから。
「せっかく長く(家に)いるので、自分の気に入った空間にできたらいいかなと思って」(インテリアの本を手に取りながら、妊娠九か月で産休に入られた公務員)
「梅雨に合う料理、何かないかなと」「割烹の勉強をしてそれをうまく応用してやるのがデイサービスの仕事だから」(割烹料理の本を虫眼鏡で見ながら。老人ホームに行ってデイサービスの料理の仕事をされている料理人)
「さっきイチジクを買ったので、何作ろうって」「ネットだったら特定のものしか調べてわからないけど、本のほうが自分の知らんことも書いてあるんで、あーこんなのあるんやってそのとき知ることができるんで」(お菓子のレシピを探しに来た、パティシエとして働き始めた娘と母親)
「亡くなられた方の遺産に不動産があってその所在場所を確認してました。見つけられなくて今困ってるんですよね、これよくわからない所」「あった、ありました。ここの一部だ。よかった」(遺産相続の手続きに地図が必要という税理士)
「地元の情報を。地元の新聞とってないもので」「要するにあんまり世間とね、離れたくないから、みんなそうじゃないですか、特にほら、定年になった人はそういうのあるんじゃないかな」(十数年前にメーカーを退職した元営業マン)
「絵本とかもいっぱいあるんですけど、子どもの専用スペースがあって」「子どもとちゃんと向き合うために来てる感じはあります。家にいると家事やらほかのことが気になってしまって、ここに来たら、本を読むぞとか、この人と関わるぞみたいな、覚悟を持って来るみたいなところはあって」(昼過ぎ頃に来館していた親子)
「「四季報」ですよ。株式投資やっているからです。自分が興味がある銘柄を書き写して自分内なりにデータベースとしてまとめているだけです」(3年前に投資家に転身した利用者)
「就活のための資料を探しに。企業のこととか全然わからないので、そういうことがわかれば」(職活動中の大学4年生)
「あしたからまた輪島のほうに、針を打ったりお灸をしたり、お話聞いたりとか、体と心のケアっていう言い方するんですけど、自分がやっていることが正しいとか間違いとかじゃないですけど、気持ちよくあしたからまたできるように、この活動は必要やから行くんだということを確認するために。自己満足になってるんじゃないかって。(被災地の)人たちが何を大事にされているのかな、こっちに逃げたほうがいいよっていうのは簡単だけど、なぜそれでも守りたいとか離れたくないっていうところがちょっとでもわかりたいなと思ってます、今は。」(医療ボランティアの本を手に取った三重県の鍼灸師)
VTR後、司会者の「図書館って本を借りたり勉強しにきたり、だけじゃないことがよくわかった」と発言されていました。
このような利用は、図書館では、端的に「調査研究」ということばでくくられたりもしますが、ひとそれぞれ、何らかの目的をもって図書館に来ている、という利用者の背景や内面が、よく描写されていたと思います。
図書館の立場からは、利用者側のこういった動機や背景にはあまり通常は立ち入らないので、おそらく利用者がこんな思いで図書館に来館している、ということは、おそらくこのような形でテレビ番組になるまで、職員のほうでもあまり認識していなかったのではないでしょうか。そういう意味では、単に視聴者にとってだけでなく、図書館にとっても有益な企画だったと思います。
(写真は、『近代建築』(近代建築社刊)2023年12月号の表紙から)