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雪の街の、読書会

最近の天気予報は雪マークばかりで、本格的な冬の訪れを実感せざるを得ない。
4年ほど青森を離れた時期を除いて、ずっと青森で暮らしているから、ちょっとやそっとの雪では驚かない。
けれど、この時期にしては降る量が多い気がする。
今年のクリスマスや年末年始は、仕事だ。
それでも良い気分で迎えたいことに変わりはないので、うっかり風邪などひかないように気をつけたい。
とはいえ日に日に忙しくなる仕事に追われて、心は不安定に揺れ動いている。
身体と心のバランスを崩さないように、ひとつひとつ出来ることをやっていこう。


先日、よく行くカフェで2回目となる読書会が開催された。
私は前回同様この日をとても楽しみにしていて、仕事中もそわそわ、わくわくしていた。
繁忙期でありながらも残業は無いので、いつも通り定時で退勤できた。
バスに乗って話すことを考えているうちに、あっという間にカフェまでたどり着いた。

今回も一緒に参加する母はすでに着いていて、周りの参加者たちと楽しそうに話していた。
私もいそいそと席について、本を取り出し、飲み物を注文し、心の準備を整えていく。
同じテーブルを囲む本好きの人たちと、始まるまでしばし談笑した。
気兼ねなく本の話ができて、仕事で疲れていた心がじわじわと元気を取り戻していくのが分かった。
ふと周りを見渡すと、前回よりも明らかに人数が多いことに気がつく。
緊張しいの私は、「うまく話せるだろうか」という不安を感じていた。
しかし、皆本が好きという共通点のある人たちなわけで、隣には母もいるし、見知った顔も多くあったことから、「自分の言葉で話せればそれでいいや」と気持ちを切り替えられた。

時間になり、主催者である市内の教会の牧師さんの合図とともに、ゆるゆると読書会がスタートした。
2回目となる今回のテーマは、「今年出会って良かった本」である。
私は比較的早めに順番が回ってきたので、前回よりも他の方の話をしっかり聞くことができた。
自分の番が終わるまでは、気が気でないというか、落ち着かないのである。

まずは私が読書会で紹介した3冊を、ここでも紹介したいと思う。
1冊目は、瀬尾まいこさんの「君が夏を走らせる」だ。

金髪ピアスでろくに高校も行かずふらふらしている俺が、先輩の小さな子どもの面倒をみる羽目になった。泣きわめかれたり、ご飯を食べなかったり、最初は振り回されっぱなしだったけど、いつしか今まで知らなかった感覚が俺の心を揺り動かしていた――。16歳の思いがけない奮闘を描いた、感涙必至の新しい青春小説。

新潮社HPより

読んでいて心がとても癒され、同時に強く背中を押されるような、そんな感覚になった1冊だ。
瀬尾まいこさんの書く柔らかな文章が、私はとても好きだと思った。
続いて2冊目は、原田マハさんの「生きるぼくら」。

いじめから、ひきこもりとなった二十四歳の麻生人生。頼りだった母が突然いなくなった。残されていたのは、年賀状の束。その中に一枚だけ記憶にある名前があった。「もう一度会えますように。私の命が、あるうちに」マーサばあちゃんから? 人生は四年ぶりに外へ! 祖母のいる蓼科へ向かうと、予想を覆す状況が待っていたーー。人の温もりにふれ、米づくりから、大きく人生が変わっていく。

文庫本背表紙より

この小説を読んだ後、猛烈に米が食べたくなった。
米ができるまでにはこんなにもたくさんの手間や苦労があったのかと、しみじみ考えさせられた。
そして私と同い年である主人公が、祖母をはじめとする周りの人との繋がりや、稲作を通して変わっていく様子が素晴らしかった。
読み終わったこの日は、白米を3回おかわりした。
3冊目は、辻村深月さんの「青空と逃げる」だ。

深夜、夫が交通事故に遭った。病院に駆けつけた早苗と息子の力は、そこで彼が誰の運転する車に乗っていたかを知らされる……。夫は何も語らぬまま、知らぬ間に退院し失踪。残された早苗と力に悪意と追及が押し寄せ、追い詰められた二人は東京を飛び出した。高知、兵庫、大分、仙台――。壊れてしまった家族がたどりつく場所は。

文庫本背表紙より

この本は、私がこの夏から秋にかけて北海道の利尻島へ働きに行った時に、自宅から持って行った本だ。
母から借りて1度読み、大変面白かったのと、物語の中に「旅」「島」「仕事」というその時の自分に近しい要素を感じたので、持っていくことにしたのである。
島で働いていた時、寝る前にちびちびと読み進めて、心励まされていた。
母と息子それぞれの視点で描かれているので、それぞれの心境がよく分かり、物語にのめり込んでしまう。
見知らぬ土地でも、なんとか必死に生き抜こうとする2人を、応援せずにはいられなかった。
というわけですっかり島生活の相棒となったこの本を、「今年1番出会った良かった本」とした。

今回は20名以上の方の参加があって、前回同様自分が普段触れてこなかったジャンルの本のお話をたくさん聞くことができた。
これも読書会の魅力のひとつだと思う。
小説だけでなく、レシピ本、写真集、雑誌、自主出版本、エッセイ、漫画、絵本、詩集などなど様々な本たちが、本好きたちの言葉で語られていく。
和やかに進む会の中で、ひどく共感した発言があった。
それは、紹介したい本を上手く紹介できるか、自分の言葉でちゃんと本の良さを伝えられるかが不安で、紹介するのが少し怖い…みたいなニュアンスの発言をしていた方がいらっしゃった。
「わ〜〜!!分かる!!」と思った。
私もそうで、だからこそ今回はちゃんと簡単なメモに話したいことをまとめるべきだったけれど、仕事の忙しさにかまけてぶっつけ本番で挑んでしまった。
だから、あれもこれも伝えたくて、とっ散らかった話し方になってしまったと思う。
次こそは落ち着いて、自分が選んだ本たちの魅力を簡潔に、自分の言葉で伝えられたら良いなと思う。

私は時間の関係で途中退席となってしまったので、話したい方がたくさんたくさんいたけれど、ほとんど話せなかったのが心残りだった。
前回の読書会で買った「はなかり本」「牧師と詩人」が、本の装丁や内容の濃さ含め凄く良かったことを直接伝えたかった。
しかしながら、こうして本好きの仲間たちと語り合える場所があることに改めて幸せを感じずにはいられない。
来年もたくさんの本を読み、みんなでそれを共有できたなら、それはそれは嬉しいことだと思う。

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